第9話 Aランクの超能

 ◇◇◇◇◇


 渋谷ダンジョンゲート入り口。


カレン:「天堂くん!いよいよ、私たちのクラン、ゴッドブレスユー!の活動開始だね!」


龍太郎:「ああ。パーティは久しぶりだな。

 もう、1年ぶりくらいかなあ。」


カレン:「あ!私もそれくらいだよ!

 お互い、ぼっち卒業だね。」


龍太郎:「それって悲しくなるから。

 ソロ卒業な。入るぞ。」


カレン:「うん。」


 2人は、見た目ブラックホールのようなゲートの入り口に入って行った。



 ◇◇◇◇◇



 ゲートの向こう側は異世界ダンジョン。


 ダンジョンと言っても、入ってすぐは地上型ダンジョンのため、地球の大地と同じような風景が広がっており、雨でも降っていない限り、非常に明るい世界である。


 ゲートの脇には、簡易的に造られた探検者協会の事務所と、その並びに販売ショップが建ち並んでいる。

 まあ、かなり、殺風景な風景である。



 ゲートを通過したエクスプローラは、前回の探検にて装着していた装備や持ち物がゲートを通過した際に記録されており、こちらの世界に入ると同時に、前の状態に自動装填される。

 相変わらず、摩訶不思議な仕組みだ。

 この仕組みについては、初めての時はものすごく驚いたのを覚えている。



 ゲートに入る前は軽装だったカレンは、すでに自動装填されていて、龍太郎が見たことのないような装備になっている。


龍太郎:「夢咲さん!それか!

 言ってたドロップアイテムの装備!」


カレン:「うん、そうだよ!

 結構イケてるでしょ?」


龍太郎:「すげー!めっちゃかっこいい!」


カレン:「でしょでしょ!なんか優越感。ふふふ。」


 カレンの装備は、全てがドロップアイテムであることが一目で分かる豪華な造り。

 ・メタル系のフルアーマー。

 ・メタル系の籠手。

 ・メタル系のブーツ。

 ・見るからに強そうな大剣。


 しかも、防具サイズがカレンの体型にピッタリジャストフィットしている。


龍太郎:「それって、マジックアイテムだよな?」


カレン:「そうだよ。装備すると自動で体型に合わせてくれるんだよ。

 しかもね。見た目と違って軽いんだよね。

 いいでしょ?」


龍太郎:「うん。すごくいい。

 うわー、マジックアイテムかー!」



 一方、騒いでる龍太郎の装備は武具のみが自動装填されたものだが、防具は入った時と全く同じ初期装備のまま。

 ・配布品の革の胸当て。

 ・配布品の革の籠手。

 ・配布品の革のブーツ。

 ・配布品のショートソード。

 

カレン:「そういう、天堂くんの装備って、本当に全部配布品なんだね。

 これで今まで頑張ってきたんだもんね。

 逆にすごいかも。」


龍太郎:「それは両親に感謝だな。

 夢咲さん。ちょっと、販売ショップに行ってきていいかな?」


カレン:「え?装備買っちゃう?」


龍太郎:「いやいや、見るだけだけど、ごめん。

 いきなりで悪いけどちょっと。」


カレン:「あ、全然いいよ。行こ。」



 ◇◇◇◇◇



 龍太郎はカレンを連れて、簡易事務所横の販売ショップに入った。


 実は龍太郎にはある考えが浮かんでいた。


 ここ、販売ショップもダンジョンゲートの内側に存在している。

 ということは、ショップの店員は当然、スキルホルダーなのだ。

 つまり、龍太郎のスキルを試すチャンス!


龍太郎:「こんにちは!」


源三:「おう、いらっしゃい。

 って、また小僧か?

 お前、買いもせんのによう来るのう。

 何しに来るんじゃ?」


龍太郎:「今日は源さんか。

 いいじゃんか。見るだけでも。

 どうせ、売れても売れなくても源さんの給料は変わらないだろ。」


源三:「そりゃそうじゃが、わしも暇じゃないからな。」


龍太郎:「嘘つけ!客誰もいないじゃん!

 座って、茶を飲んでるだけだろ。」


源三:「お前は老人に向かっていつも失礼じゃな。

 敬う心はないんか?

 わしじゃなかったら、殺されとるぞ。」


 この人は、源さん。ここのショップ店員だ。

 確か今年で70歳とか言ってたな。

 とても70歳には見えないくらい若い。

 元エクスプローラで、現役時代はAランクエクスプローラだったらしい。

 俺は知らないが、かなり有名人だったとか。

 現役を引退した理由は、もう稼ぐ必要がないくらい稼いだからだとか。羨ましい。


 実は、ここの店員は、エクスプローラを引退した人でローテーションをして店番をしていて、臨時の国家公務員という扱いらしい。

 しかも、犯罪防止のため、かなりの高レベルで、かつ健康でないと採用されないらしく、その分、結構な高給取りで人気の職業なのだ。


 さあ、本題に戻ろう。

 早速、元Aランクエクスプローラのスキルを拝見させていただこうか!


【固有超能】超会心


 へえ、なんかすごそうなスキルだな。

 効果もなんとなく分かりやすそう。

 源さんは、このスキルでAランクまで登り詰めたってことか。


龍太郎:「源さん!ちょっと、俺と握手してよ。」


源三:「なんじゃ、急に。気持ち悪い。」


龍太郎:「いいから、握手してよ。」


源三:「まあ、ええが。ほれ、手出せ。」


〈ピピプピプ……他者の超能を確認!〉

〈超能【超会心】を登録しますか?〉


 よし、来た!

 はい、登録します!


〈ピピプピプ……超能【超会心】を登録しました!〉


 おっしゃ!これで……ん?


〈ピピプピプ……超能【超会心】の解放に失敗しました。

 超能【超会心】の解放のために必要な固有強度レベルの条件を満たしていません。〉


 はひ?解放って何?

 ま、登録は出来たし、これはひとまず後回しだ。


龍太郎:「源さん!あんがと。

 体調悪くなってないか?」


源三:「なんじゃ。気持ち悪い。

 お前に心配されんでも元気じゃ。」


龍太郎:「スキルは大丈夫か?」


源三:「はあ?どういう意味じゃ?」


龍太郎:「いいから、スキルが変化してないか確認してよ!」


源三:「訳のわからんこと言うて。

 お前こそ、大丈夫か?」


龍太郎:「もう!いいから!早く確認!!」


源三:「わかった、わかった。

 確認じゃな。ん。別に何も変わってないぞ。

 お前は何がしたいんじゃ?」


龍太郎:「うん。ならいいや。」


 確かに、源さんのスキルは元のままで視えてるしな。大丈夫そうだ。


源三:「お前なあ……まあええか。

 お待たせしてすまんかったのう。

 小僧がいろいろとうるさくてのう。

 で、お嬢さんは、今日はなんじゃな?」


カレン:「あ、いえ。

 私は今日は天堂くんの付き添いで。」


源三:「ほう。小僧のか。

 ふーん。なるほどのう。」


龍太郎:「あ!源さん!

 なんか変なこと考えてない?

 そんなんじゃないからね。」


源三:「ふーん。春じゃのう。」


龍太郎:「源さん。ボケたのか?今は9月だぞ!」


源三:「お前。本当にわしじゃなかったら、殺されとるからな。」


龍太郎:「う!わかったよ。

 それじゃ、また来る。」


源三:「おう。早死にするなよ。

 お嬢さんも気ぃつけてな。」


カレン:「はい、ありがとうございます。」


 ◇◇◇◇◇

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