第5話 超能を登録しますか?

 ◇◇◇◇◇


カレン:「じゃあさ。連絡するのにLIME《ライム》の友達登録しようよ。」


龍太郎:「そうだな。ちょっと待って。」


 龍太郎はポケットからスマホを取り出して、LIMEアプリを立ち上げた。


龍太郎:「これでいいか?」


カレン:「うん、これで登録っと!

 スタンプ届いた?」


龍太郎:「うん。届いたな。」


カレン:「オーケー!これで完了だね。

 早速、明日から探検してみる?」


龍太郎:「明日か。ああ、いいよ。」


カレン:「オーケー!天堂くんは、いつもどうやって渋谷ゲートまで行ってるの?」


龍太郎:「俺はスクーターで。中古だけど。」


カレン:「へえ。いいね。

 おっきいやつ?後ろ乗れるやつ?」


龍太郎:「一応150だから乗れるかな。」


カレン:「あ、いいな!なら乗せてってよ!

 私、いつも電車なんだよね。」


龍太郎:「ああ、いいぞ。

 あ!でも、メットがないなぁ。」


カレン:「やった!私、ヘルメットは前に買ったのがあるから大丈夫だよ。」


龍太郎:「ん?バイクもないのにメットだけ持ってる奴って、さらに珍しいな。」


カレン:「そうだよねぇ……。

 なんか、可愛かったから衝動買い。

 部屋のオブジェとして活躍してる(笑)」


龍太郎:「なんとも言えん。」


カレン:「スクーターで行くなら、天堂くんは家から装備して行くよね?」


龍太郎:「もちろん。当然。めんどくさいじゃん。」


カレン:「だよねぇ。

 私は一応、協会のトイレで着替えてるんだよ。」


龍太郎:「確かに電車で行くのって珍しいよな。

 みんな、車かバイクだと思ってた。」


カレン:「まあ、我ながらかなりの少数派だと思うよ。」


龍太郎:「で、明日はどうするんだ?」


カレン:「もちろん。当然。めんどくさいじゃん(笑)」


龍太郎:「真似するな!」


カレン:「テヘペロ!

 じゃあ、明日は天堂くんの家に行けばいいかな?」


龍太郎:「いや、俺が迎えに行くよ。それの方が早い。

 家の場所どこ?」


カレン:「ありがと。LIMEで地図送っとくよ。

 TMマンション303ね。」


龍太郎:「おう、わかった。」


カレン:「じゃあ、私の家に朝8時くらいに来てね。

 それとクランはどうする?」


龍太郎:「クラン?そうだな。任せるよ。」


カレン:「じゃあ、明日は先に協会に寄ってクラン登録してから出発しよう!

 クラン名を考えないとね!

 代表は私でいい?」


龍太郎:「もちろん。ぜひ、よろしく!」


カレン:「うん。わかった。

 じゃあ、あとはクラン名だね。

 どんなのがいい?」


龍太郎:「もちろん、お任せで!」


カレン:「え?いいの?

 じゃあ、明日までに良いの考えとくね。」


龍太郎:「おう。これで話は終わった?」


カレン:「もう!どういうこと!?

 せっかく仲良くなったのに、それ?」


龍太郎:「いやー、これっていわゆるビジネス的にってやつでしょ?

 まだ、夢咲さんのこと、よく知らないし。」


カレン:「あっそう。言うわねぇ。

 いいわよ。まずはビジネスパートナーとしてお付き合いしましょ。

 本当にそんなんで、よく人付き合いが出来るわね!?」


龍太郎:「あ!気を悪くしたらごめん。

 あと、人付き合いは相変わらず苦手だよ。」


カレン:「え?あ、こっちこそ、ごめんなさい。

 そうね。そうだったわね。

 まあ、付き合いが長くなるか、短く終わるかはわからないけど、これからよろしくね。」


龍太郎:「ん?何?」


カレン:「もう!握手よ!

 ほら、手を出して!」


龍太郎:「ああ。」


 女性と握手って、もしかして家族以外で初めてなんじゃないかな?

 などと思いながら、龍太郎も手を差し出した。


〈ピピプピプ……他者の超能を確認!〉

〈超能【豪運】を登録しますか?〉


 龍太郎がカレンと握手した瞬間に、マリアさんともアイちゃんとも違う機械音の音声と共にメッセージボックスが頭の中に表示された。

 メッセージボックスの横には、時計の秒針が残り時間を刻んでいる。


 え?何これ?

 突然の機械音に龍太郎の思考が追いついていない。


カレン:「よし!それじゃあ、天堂くん!

 そろそろここを出ようか?」


 その間にも、時計の秒針はコツコツと進んでいる。


龍太郎:『ア、アイちゃん!なんか出た!』


AI:〈見えてるわよ。〉


龍太郎:『何これ?どうしよう?』


AI:〈僕にもわからないんだけど〜。

 超能を登録するか?って聞いてるよね?〉


龍太郎:『うん、聞いてる。どうしたらいい?』


AI:〈僕が知らないことは、誰にもわからないよ。

 マリアなら知ってると思うけど……。

 これって、マスターのスキルの効果だと思うの。どっちかマスターが選択してみて!〉



カレン:「ん?天堂くん?」


 カレンが龍太郎に声をかけるが、龍太郎には聞こえていない……。



龍太郎:『え?俺が決めるの?

 登録ってどういうやつ?』


AI:〈………。〉


龍太郎:『もう、わからん!登録しない!』


 龍太郎が選択すると、頭の中のメッセージボックスと時計は消えた。


龍太郎:「ふう。」


 龍太郎は緊張が解けて大きく息を吐いた。


カレン:「天堂くん?大丈夫?」


 カレンが真っ直ぐ、龍太郎を見てる。


龍太郎:「あ。おう。大丈夫。大丈夫……。」


カレン:「もう!握手くらいで固まっちゃってぇ!

 お姉さん、困っちゃうなぁ!(笑)」


龍太郎:「何言ってんの!?違う!違う!!」


カレン:「いいの、いいの。」


龍太郎:「が!お姉さんってなんだよ!?」


カレン:「天堂くん、何月生まれ?」


龍太郎:「9月。」


カレン:「私は5月。

 ほら!やっぱり、お姉さんだ。」


龍太郎:「いや、そういうのはお姉さんとは言わん!」


カレン:「まあ、いいじゃない。

 甘えていいんだぞっ!」


龍太郎:「ぐはっ!痛恨……。」


カレン:「ははは。面白いね。天堂くんで良かったよ。

 もう、そろそろ出ようか?」


龍太郎:「ああ。そうだな。」


 そのあと、2人はネカフェの店を出て、明日の約束をして別れた。



 夢咲さん。意外と話しやすかったよな。

 こんなに人と話するの久しぶりだ。


 それにしても、あれは何だったんだよ……。

 スキルの登録って言ってたよな。


 他人のスキルを登録すると何が起こる?

 そのスキルの持ち主はどうなる?

 アイちゃんもよく知らないし……。

 何一つわからん。


 確認したいけど、夢咲さんのスキルで試すのは危険だしな。

 確かに俺のスキルの効果って線が一番怪しいと思うけど……今は様子見にしておこう。


 ◇◇◇◇◇

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