第34話

 僕は、猫さんのこの体が少しだけ嫌になった。


 僕は、クロさんを呼ぶ。


「クロさん?」


「なんだい?」


「ありがとう。」


「何もしてないよ。アメの力だろ?」


「僕の…。」


 僕は何を言っているのか、なんとなくわかる気がした。


 僕は、窓に向かって歩き出した。


 外はもう暗い。

 夜空には星が浮かび、少し丸みを帯びた月が浮かんでいた。


 僕は、開かれた窓から外に出る。


 あまりにも希望を奪いそうなくらいに暗闇を引っ搔くかのように前足を伸ばす。


 僕は、森へと向かった。


 流れる星のように軽やかに、僕は歩みを止めない。

 僕のおめめは、どの星よりも綺麗な輝きをしている。

 クロさんは、まるで僕の影かのように静かに闇に溶け込む。


 僕の足音は、軽やかに闇に音を奪われた。


 あれほど、時間をかけて向かった道も、風と共に流れる。


 月は、最後のピースを埋めようとしていた。


 空は優しく僕を見つめていた。


 目の中の雫は、風が拾ってくれた。


 僕は、ずっと前を向く。


 後ろの闇に追いつかれないように。

 前に広がる何かをつかみ取るように。


 僕は、まるで雲になったように自然な歩みを見せた。


 クロさんは、誇らしげに僕を見つめている気がした。


 僕は、あの神社の鳥居をくぐり、森の茂みに潜る。


 落ち葉を踏む音を置き去りにする。


 息切れはするが止まらない。


 僕は、あの岩のところに向かった。



 女王さんは、そこで帰りを待っていた。

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