第19話

 ミケさんは、校門の前に立ち止まると空を見上げた。


 僕は、それに沿って隣りに座ってみた。


「ミケさん、何してるんですか?」


「ん?待ってるんだよ。」


「何を待ってるんですか?」


「優しい人だよ。」


 ミケさんは優しく答える。


「いいですね。」


「うん。優しく僕のことを撫でてくれて、いつも急いで走っていくんだ。」


 そうこうしていると、生徒たちが登校し始めた。


 やはりここは、僕の良く通う学校のようだ。


 僕たちの目の前を通る生徒たちは、僕やなつが良く着る服を身に着けていた。


 しばらくして、ミケさんが話し始める。


「今日は来ないみたいだね。」


「そうなんですか。」


 この時間帯に来る人物に、ある程度の予測がついた。


 遠くからなつがやってくる。


 いつもは、もう少し早くについているはずなのに、慌てていた。


 僕がいなかったことをぼやいているようだ。


 彼女は慌てて走って教室に向かった。


 チャイムはそろそろ授業が始まることを知らせる。


「もう来ないみたいだね。」


「どんな人なんですか?」


「意外と大きい人の中でも中くらいで、いつもいろんな仲間たちの匂いを付けていたんだ。そんでもって、優しくなでてくれるんだよ。」


 やはりだ。


 恐らく僕のことだろう。


「残念ですね。」


「ほんとだよ。僕の幸せを分けてやりたかったのに。」


「ありがとうございます。お気持ちだけ受け取っておきますね。」


「うん…。じゃあ、他の仲間たちのところに行こうか。」


 少し残念そうにしてるミケさんは、可愛い。


 僕はミケさんの後ろについて行った。


 やはりこの道を行くと、あの猫さんの集会場所にたどり道だ。


 途中、用務員さんに呼び止められ、ミケさんとともに撫でられた。


 ミケさんは、慣れているように素直に頭を差していた。


 ともに撫でられた僕は嫌な気がしなかった。


 彼の手は少し力強かったが、優しさを感じた。

 おばあさんと比べるとまた違うが、また違った良さがあった。


「ミケ今日は新しい友達を連れてきたのか。」


「そうだよ。アメって言って、いい子なんだよ。」


 ミケさんは、ニャーと鳴いて答えている。


 彼には聞こえないが、何とか伝えようとしている姿が一番可愛い。


「すまんが、俺も仕事があるから、またな。」


「ありがと~。」


 そう言って僕たちは彼と別れた。


 僕たちは、そして目的地に着いた。


 そこには、すでに多くの猫たちがくつろいでいた。


 この場所は、丁度よく日差しが当たるため、気持ちのいい場所なのだろう。


 大きな木が数本並んでいるため、木陰で休むことができ、猫さんたちにとっては居心地がいいはずだ。


「ついたよ。ここがアメの言ってた僕たちがよく集まるとことだよ。」


「ありがとうございます。うれしいです。」


 僕はとても上機嫌にそう答えて見せた。

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