第17話

 僕は、朝の気持ちいい日差しを感じたくて木の上に上った。


 僕の体は、考えるよりもスムーズに動く。

 軽々と木の上に上った。


 そこからの景色は、思いのほか目を輝かせるものがあった。


 下を見れば、猫さんたちが思い思いのコミュニケーションをとっている。

 顔を擦りつけあったり、お互いを舐めあったりとてもかわいい。


 僕がこの木を上ったよりも軽い足音が近づいてくる。


 一瞬で僕の前に猫さんが現れた。


「やぁ、おはよう。」


「おはようございます。」


 そこにいたのは、三毛猫だった。

 ふわふわの毛並みの割に足元を見るとがっしりとしている。

 そのおめめは、柔らかく優しそうだ。


「自己紹介がまだだったね。僕は、ミケ。よろしくね。」


「僕は、アメって言います。よろしくお願いします。」


「ああ、君がアメだね。聞いてるよ。面白い人だって。」


「みんなそういうんですよね。」


「まぁ、雰囲気が僕たちとは違うからなんとなくわかるよ。」


 そう言ってミケさんは笑った。


「ああ、そうそう。トラさんほどじゃないけど、僕のことも頼ってくれると嬉しいよ。」


「ありがとうございます。」


「ここからの景色って綺麗だよね。」


「ですね。」


「僕の特等席でもあるんだ。」


「あ、ごめんなさい。」


「どうして謝るんだい?別に誰が使おうと自由だろ?」


「ですよね。」


 僕は、誤魔化すように少し笑ってみせる。


「ねぇ、今日は一緒にお出かけしない?まだ、ここにも慣れてないだろうし。」


「ありがとうございます。ご一緒させてもいます。」


「うん。ついておいでよ。」


 ミケさんは、ひらひらと舞う布のように軽々と木の上から降りて行った。


 ミケさんは、僕が下りてくるまで待つように根元で止まって見上げている。


 僕はミケさんの通った道をたどるようにトントンと下に降りる。


「アメ、君はどんなところに行きたいんだい?」


「僕の生きたいところですか?」


「うん。せっかくなら、君が行きたいところに行った方が楽しいかなって思ってね。」


「だったら……猫さんがたくさんいるところがいいです。」


「僕たちみたいなのが集まるところ?」


「はい!いろんな猫さんを見てみたいです。」


「君は本当に面白いね。いいよ。一緒に行こうか。」


 ミケさんは、高らかに笑いながらそうやって優しく答えてくれた。


 ミケさんの背中は優しいお兄さんのような頼れるオーラがある。

 僕は、ミケさんが進む後を追って目的地を目指した。


 ミケさんは、前を見続けるがトラさんとは違った優しさを感じた。


 ミケさんが先を行ってるはずなのに、迷うことはなくスムーズに追いつける。

 きっとミケさんは僕の足音に合わせて歩いているのだろう。


 決して走ったりせず、森を歩む。


 そして、薄暗い森を抜け、開けた道へ出た。

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