第9話

 まず僕の前に現れたのは二匹の白い体に茶色のまだら模様の猫さんたちだった。


「ねぇねぇ、お兄さん。僕は、マル。こいつはマダラ。」


「ねぇねぇ、お兄さん。僕は、マダラ。こいつはマル。」


「「よろしくね。」」


 好奇心にあふれたキラキラしたおめめで僕は見つめられていた。

 息ぴったりのこの猫さんたちは恐らく兄弟なんだろう。


「僕は、アメ、よろしくね。マルさんにマダラさん。どっちがお兄さんかな?」


「僕だよ。」


「いや、僕だよ。」


 マルか答えると、マダラが否定して答える。

 少し喧嘩をし始めたためトラさんが割って入って、落ち着かせる。


「こいつらには、あまりその話はしないでくれるかい?こいつら、母親がいねぇから、きめらんねぇんだ。同じように扱ってやると喜ぶよ。」


 トラさんは僕にこっそりと教えてくれる。


「ねぇ、お兄さんは、どこから来たの?」


「遠いところなの?」


「遠いところ?」


 二匹に質問攻めされて困っていると、トラさんがまぁまぁと間に入ってくれた。


「ちなみに、頭のところに丸っこい模様があるほうがマルで、そうじゃないほうがマダラって覚えたらわかりやすいぜ?」


 また、トラさんのやさしさが出た。

 正直、二匹とも模様や、黄色い目の色もそっくりで、見分けがつかなかったところだったために、助かった。


「まぁまぁ、二人とも、とりあえず他のやつらの紹介がまだだろ?質問はあとな。」


「「はぁ~い。」」


 二匹の息の合った返事は、とても愛らしかった。


 次に出てきたのは、他より少し痩せている鼠色の猫さんだった。濃い青色のおめめには疑いの表情を浮かべていたようだった。


「なぁ、お前さん。」


「はい、なんですか?」


「俺は、皆みたいにすんなりと騙されたりしないからな?」


「騙すですか?」


 疑って目を細めているその顔は、正直かわいい。


「あぁ。どうせ、俺たちのご飯が目当てなんだろ?俺たちの中には、比較的騙されやすいやつらが多いんだ。」


「こいつは、ドンテンっていうんだが、疑い深くてな、ちょっとでも不安だと飯すら食わねぇから、この通りよ。」


「大変ですね。」


 トラさんは、こっそりと教えてくれた。


「ドンテン、疑いすぎもよくないぜ?あのクロさんが連れてきたんだ。別に悪い人とは限らないだろ?」


「初めましてドンテンさん。僕は、アメって言います。ドンテンさんは、優しいんですね。」


「優しい?」


「だって、こんなにもここにいる猫さんのために疑うなんていい猫さんに決まってますよ。」


「あ、あぁ…。そりゃあ、一人だった俺をここにいた人たちが助けてくれたんだ。そりゃあ、家族みたいなもんだ大切に決まってる。」


 そうやって、真顔で答えるドンテンさんは僕には、とてもかっこよく見えた。


「ドンテン。こいつはこんなにもちゃんとお前の良さを分かってくれてるんだぞ?疑いすぎるとこいつにも失礼だぞ?」


「今日はこの辺にしてやるよ。でも、何か怪しいことしてみろ?俺は、お前のこと絶対許さないからな?」


「わかりました。気を付けます。」


 ドンテンさんに笑顔を見せて、悪意のなさを見せようとしたが、それが怪しかったのかもしれない。

 ドンテンさんは、ゆっくりと後ずさりすると、木の上に登って僕のことを見ていた。

 ずっと目を細めるドンテンさんの目を僕は少し心配した。


「わかってくれてるだろうが、悪い奴じゃねぇんだ。すまないね。」


「いいんです。わかってますから。」


 すかさずフォローに回るトラさんにより魅力を感じた。


「やぁ、新入り君。私はルナ。よろしくね。」


 かわいらしいその鳴き声で僕の前に現れたのは、少し小柄な黒い体にきれいな黄色いおめめをした猫さんだった。


「よろしくお願いします。ルナさん。僕はアメって言います。よろしくお願いします。」


「アメは、すんごく丁寧にお話しするんだね。」


「可笑しかったですか?」


「いいや、珍しかったから言ってみただけだよ。」


「よかったです。」


「ルナってかわいいだろぉ~?面倒見もよくて、よくマルとマダラの遊び相手にもなってくれるいい奴なんだよ。」


 トラさんが満面の笑みでそう答える。

 できることならトラさんの顔をくしゃくしゃになるくらいに撫でたい。


「もっと紹介してやりたかったが、皆眠そうだから、このくらいで勘弁してあげてくれよ。」


「わかりました。また時間があればよろしくお願いします。」


「自由に寝てくれて構わないからね。」


 そうやって、優しく教えてくれたトラさんは大きなあくびをした。かわいい。

そして、木の根のほうに向かって行って寝てしまった。


「おやすみ。」


 クロさんが後ろからヌッ表れて僕に告げる。

 ビクッと体が跳ね上がるが、振り返ると普通の猫より少しガタイがいい程度まで小さくなったクロさんがいた。


「僕は、少し女王のところに行ってから寝るから、先に寝ててくれるかい?」


 そういうと、茂みの中に消えていった。


 僕は、自分のこのふわふわの毛並みに満足しながら眠った。

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