第3話 ローグ・ネイション
陰鬱で最悪な日々。
王国騎士ではなくなった時から生きた心地がせず虚ろにコスモは過ごしていた。
だが時間は彼女を慰めてはくれず無機質に刻々と日を進めていく。
やがては一ヶ月が到達し、コスモにとっては願ってない不本意な運命の日が訪れる。
「最ッ……悪」
技術発達によって誕生したフィラード国内を走るステラ学園へと続く高級蒸気列車。
貴重な材質で作られた席で窓越しに空を見つめながらコスモは悪態をついた。
彼女は生徒の証である可憐な黒を基調とした制服を纏い、ベレー帽を深く被っている。
自身の特徴であったポニーテールを下ろし背中まであるロングヘアーを揺らす。
ここまでの身支度の時間は地獄以外の何物でもない屈辱であった。
制服のサイズ合わせも入学手続きも一つ一つが王国騎士から脱落したという事実を裏付け彼女の心火が燃えていく。
何度も「クソが」と吐きながらも、それが今の仕事、王国騎士にまた戻れる唯一の道だと自分に言い聞かせ今に至る。
「『魔法創造科』の調査……ね」
コスモは与えられた極秘任務の詳細が記されている書類に目を向ける。
ステラ学園に入学し、生徒として新設された『魔法創造科』に所属しながら正当性を調査し報告するという仕事。
歴史ある学園には既に幾つも学科があり
総合的に学んでいく『魔法科』。
魔法の技術を重点に磨く『魔法技術科』。
戦いを重点においた『魔法武道科』。
科学と結んでいく『魔法科学科』。
と、由緒ある学科の中に数百年ぶりに新設されたのが『魔法創造科』であった。
久しぶりの改革に学園内は良くも悪くも話題沸騰だとコスモは耳にしている。
(なんなのこの任務は……学生って)
内容を噛み砕いて言えば「平和的に学園生活を送れ」ということ。
危険と隣り合わせだった王国騎士とはまるで違うぬるま湯の内容にコスモは呆れ返る。
年齢と性別さえ合致していれば誰であろうと出来そうな簡単な任務。
「くだらない」
誰にも聞こえないほどにポツリと呟き、コスモは再び視線を窓に向ける。
窓から覗かせるのは広大な敷地を誇るフィラード内王都の街並み。
高層のビル群と蒸気機関は先人達の腰を抜かせる程の技術革命が起きた象徴である。
中央に聳えているのは巨大で優雅かつ前衛的な建造物の影。
あれこそがこれから自らが通うことになる国内トップクラスのステラ学園。
本来なら新たな学園生活に胸を躍らせる事が当然だが史上最悪の経緯で学生となった彼女はとてもじゃないが喜べるはずがない。
「こんな瞳じゃなきゃ……私の人生は」
列車内は客が疎らだが全員が上流階級を思わせる衣服を身に着けている。
優雅さと晴天な空とは裏腹にコスモの心には深い靄がかかっていく。
何日経とうと王国騎士という立場への未練が消えることはなく余計に感情は増幅する。
深く傷つけられたプライドを簡単に立て直せる程、心は鋼ではない。
どうしようもない運命から逃げるように瞼を閉じようする、その刹那だった。
(何……?)
突然、本能的に悪寒が背を走る。
同時に列車には車輪の揺れとは違うやや大きな衝撃が響き渡った。
何事かと思いコスモは慌てて立ち上がり周囲を確認する。
だが次の瞬間。
「ッ!?」
突如として列車の天井の一部が派手に破壊され続々と黒いローブに身を包んだ者達が乗り込んでいく。
「な、何だ!?」
「キャァァァァァ!!」
車内は瞬く間に混乱が伝染し、阿鼻叫喚の声が四方八方から飛び交う。
襲撃者達は慣れた動きで全車両へと迅速にばらつき制圧を実行していく。
「シャラァァップ! 静かにしろ」
黒装束を纏った一人の男がドスの効いた大声で叫び、乗客達は一斉に硬直する。
襲撃者全員の手には短剣のような翠色の武具が握られており居合わせた乗客へと刃を向けていた。
不穏な静寂が流れる中、先程声を荒らげたリーダー格と思わしき男が口を開く。
「ごきげんよう上流階級の皆様、我々は『黒の閃光』。我々がここに来た理由は君達から軍資金を調達するためだ」
淡々と、だが何処か傲慢さが醸し出しているような声色。
まるでミュージカルのようなわざとらしい動きで乗客達を威圧していく。
「おっと抵抗するなんて無謀なことはするなよ? この短剣は貴重な金属で作られた物、そこらの魔法では絶対に折れない代物だ」
触れるだけでも鮮血が流れそうなほど鋭利な刃を乗客達へと向ける。
(『黒の閃光』……チッ、またそこらのテロ組織気取りの新興盗賊団か)
コスモは至って冷静であった。
王国騎士の端くれである彼女は直ぐに相手が二流の盗賊団であることを洞察する。
このように下らない名前で活動する盗賊団と過去に武力衝突することはあったが大体は烏合の衆に過ぎない。
だがそれでも犯罪者に代わりはなく油断出来る相手ではなかった。
逃げ場のない列車内という最悪のタイミングでのハプニングに内心舌打ちしながらコスモは周囲を見渡す。
他の乗客は恐怖で身を固めており、中には泣き出す子供も存在した。
このままでは相手の思う壺となり犯罪者達に活動資金を与えることになる。
(そんな事は……許されない)
社会のクズが場を支配している状況に段々と怒りが湧いていき、殺意が宿り始めた。
王国騎士としてのプライドを原動力にコスモは即座に行動に移ろうとする。
(乗り込んできた数は十八人、この車両にいるのはリーダー格合わせて三人。全車両が六両と考慮すると一車両に三人という計算か)
冷静に敵の人数と配置を瞬時に把握するとコスモは意識を集中させていく。
動揺はしつつもしっかりと相手の人数を自身の記憶へと彼女は焼き付けていた。
「オラッさっさと金を出せ成金共ッ! テメェ等みてぇな金持ちが一番腹立つんだよ!」
荒々しく盗賊団達は乗客へと掴みかかり金銭を奪取していた。
凄惨な光景に暴れ狂いそうな怒りを殺しながらコスモはゆっくりと歩いていく。
「……あっ? おいお前!」
彼女の気配に気付いた盗賊団の一人は威圧の声を上げコスモへと近づく。
「このガキ、大人しく席に座って」
刹那、男の言葉は途切れた。
代わりに空中へと身体が宙を舞い男は激しく地面へと叩きつけられる。
「がはっ!?」
一瞬の出来事。
コスモは無言のまま男の顎を砕くほどの掌底を打ち込んだのだ。
不意の攻撃に受け身が取れず男は激痛に悶え苦しむ。
「お……お前ェ!!」
激昂した男は襲いかかろうとするも手を伸ばすも彼女に軽く交わされる。
同時にコスモは魔法陣を生成し、ゼロ距離から中級程の魔法を放つ。
「氷弾・乱」
腹部に目掛けて球体サイズの氷の塊が無数に放たれ男の腹部を抉っていく。
鈍い乱打音が響き渡り、軽々しく巨体を吹き飛ばす。
声を出す暇もなく壁へと激しく衝突した男は膝から崩れ落ち意識を手放した。
「何だ貴様ッ!?」
突然の反撃に何事かと一斉に振り向く『黒の閃光』の一員達。
可憐なるコスモの姿を認識した瞬間、冷や汗をかき顔を歪めた。
「おいリーダーあいつ元王国騎士の……!」
「王国騎士だと!? 何でこの列車に乗っているんだッ!」
コスモの正体を知るなり動揺が伝播していき『黒の閃光』の面々に焦燥が生まれる。
腐っても彼女は王国騎士出身、卓越したエリート集団であり治安維持の要。
その顔は当然知られており、無意識に嫌悪の顔を浮かべる彼女から後退っていく。
「こんな早朝から随分と大胆なこと。命知らずとはこのことね」
「クソっ何で王国騎士出身の奴がッ!?」
心がないような冷たい声にリーダーの男は予想外の出来事に畏怖の感情を抱く。
当然の反応、まさか国の犬が学園の制服を着て乗車してるなんて思ってもいなかった。
「アンタ達みたいなクズがいるから善良な市民が恐怖に苛まれる。ママのおっぱい吸う赤ん坊からやり直しなさいよ」
「クソっ……だが元だろ? こんな小娘一人ねじ伏せられらァァァ!!」
「おい待てッ!」
リーダーの制止を無視し、部下の一人は勢い任せに短剣を構えながら突撃を行う。
自身よりも大きい図体の相手だがコスモは臆することなく即座に右手をかざす。
「雷弾・轟」
電流を帯びる球が一直線に発射され短剣を持つ手が痺れ、全身に電気が駆け巡った。
直後、電流を帯びた雷撃が男へと襲い掛かり盛大に吹き飛ばす。
「がっ……あぁぁッ……!」
地上に上げられた魚のように身体が痙攣し、口からは盛大に泡を吹き出す。
戦闘不能だと言うことは素人から見ても察せるほどの醜い姿だった。
苦しみ悶える部下を見てコスモは冷徹な瞳で見下し、リーダーへと着目する。
「ヒッ!?」
圧倒的とも言える実力差を前にリーダーの男は完全に戦意を喪失していた。
だが必死に視線を動かし辺りを見回すと、何かが目に入ったのか悪どい笑みを見せる。
素早く身体を動かすと男は付近にいた小さな少女を引きずり首筋に刃先を当てた。
「動くなッ! 動きゃこいつの命はねぇぞ」
少女は「きゃっ!?」と甲高い悲鳴を上げ恐怖から涙を浮かべている。
隣には親らしき人物が必死の形相で少女の名前を呼んでいるが男は声を荒げ一蹴する。
人質を取り抵抗出来なくする、実に古典的で使い古された手段。
しかし効果的であることには変わりない。
「ゲスが……!」
コスモは苦虫を噛み潰したように表情を歪め怯える少女を凝視する。
王国騎士のプライドとして一般市民を死なせるのはあってはならないこと。
即座にリーダーの男に向けて魔法陣を生み出し少女の救出を図ろうと画策。
だが次の一言で強気であり冷静であったコスモの心情は一気に崩れた。
「オイオイいいのか? 片目だけでこいつを避けて俺だけを攻撃出来るのか? 元王国騎士さんよォ!」
「何っ?」
「聞いたぜ、風の噂では隻眼が原因で王国騎士を追放させられたなんて話だったよなァ! 俺だけに魔法を当てられんのか?」
「それは……ッ!」
コスモは言葉を詰まらせ、歯軋りをする。
男の発言は的を得ており事実として彼女は隻眼というハンデに苦しめられ現在に至っているという明確な事実。
自身の瞳に一種のトラウマを抱いているコスモにとって最も有効的な口撃であった。
魔法陣を出現させた手は震え始め、呼吸も荒くなり、冷や汗をかく。
普段の技術であれば頭一つ分等身の違う男のみを攻撃することなど造作もない。
だがもし片目のせいで少女を傷つけてしまったら……余計な最悪のビジョンが脳内を過り必要以上に理性を奪っていた。
「ハハッ図星みてぇだなァ。なら大人しくして貰おうかァ!」
怯える少女の首に刃物が食い込み血が流れていく。
零れ落ちる鮮血を目にした瞬間、完全に思考停止し、コスモの思考は歪み始める。
(また私は……隻眼のせいで……ッ!)
やるせない虚しさが流れていく。
またもや生まれつきの弊害が彼女から理不尽にも希望を奪う。
緊迫した空気の中、コスモの心に深刻な亀裂が生じ始める。
暗闇に染まっていく視界。
荒くなる呼吸。
嘔吐しそうなほどに歪んだ精神。
やるせない絶望に満たされた時だった。
場違い過ぎるハイテンションな声がコスモの耳を抉ったのは。
「ふぅ出た出た、いやぁ高級列車の蒸気トイレは清潔でいいねぇ!」
「えっ?」
「はっ?」
幻聴にしてははっきりし過ぎな声にコスモは愚か、リーダーの男も困惑する。
状況が理解できぬまま、次に聞こえたのは排泄物が流される水の音と蒸気音。
高級列車に設けられたトイレの扉が開かれ満面の笑みで登場したのは一人の美少女。
(誰……?)
紫髪のサイドテールに血のような赤き瞳。
耳につけられた洒落ているピアス。
黒の制服を着崩し、アクセサリーを分断に付けながら一回りも大きい白いジャンバーを肩出しで羽織っている。
エキセントリックな人物の出現にコスモは目を丸くして凝視するしかなかった。
「しかしウォシュレットが強いのは減点だね。お尻が弱い人は痔になっちゃう。これは会社にお問い合わせか」
周りの目を気にせず美少女は大声を出しながらコキコキと首を鳴らしている。
(ステラの制服?)
コスモは即座に美少女が中に来ている衣服がステラの物だと判断した。
由緒正しく、エリート揃いのステラには見合わない彼女の雰囲気に更に啞然とする。
唖然に包まれる空間。
しかし紫髪の少女は『黒の閃光』に見向きもせず最新式の蒸気トイレを評論家気取りで勝手に採点していく。
「それに座高も高いな〜小柄な私だと足が浮いちゃう。まっ八十点くらいかな」
「……おい」
「いや八十点はつけすぎか? こういうのって六十点くらいにした方が開発者もしっかり反省するのかな」
「おい」
「いやでもそれは厳しすぎるか、ちょっとだけ上げて七十点、よしこれ完璧!」
「おいッ!」
一人だけ別世界にいるような飄々とした態度にリーダーの男は痺れを切らす。
少女を人質に取りながら視線を向け直し怒号を浴びせる。
「ん? 何?」
「何だお前……ステラの生徒か」
「そうだけど、って何その粗雑な格好。仮装するんだったらもっと綺麗にやんないと子供に笑われちゃうよ?」
「はっ?」
一切怯むこともなく美少女は男に対して「粗雑」と盛大に馬鹿にしていく。
恐れ知らずにも程がある態度にコスモは心からの困惑を顔に浮かべた。
「というか何、テロリストごっこでもやってんの? 玩具にしてはよく出来た短剣だね。てかそんな面白いことやってんなら早く言ってよ〜私も最初からやりたかったのに! この電車はワタシがジャックしたってさッ!」
のべつ幕無しに繰り広げられる言葉。
余りにも場違い過ぎる態度を取り続ける彼女に怒ったリーダーの男は短剣を付近の椅子へと突き刺した。
ザシュッという音と共に鋭利な刃物は椅子を軽々と貫通する。
「いい加減にしろッ! 今すぐそのふざけた態度を慎まねぇと喉元掻っ切るぞ!」
一連の流れを見てひょうきんだった彼女も顔色を少しだけ変えた。
派手に装飾された指を弄りながら襲撃者へと瞳を合わせる。
「ワォ、まさか本当の短剣とは。つまりマジもんってこと? いやだ怖いね〜」
「何なんだよコイツ……分かったなら俺の言うことを」
「ふ〜んそっかそっか……じゃあ、殴られる覚悟ってあるよね?」
「はっ?」
スッと笑顔が消えた刹那、美少女の艶やかな右手からは雪のように純白な魔法陣が出現する。
「ハード・ターン・ソフト」
聞き慣れない長い詠唱とともに指を鳴らすと男が所持していた短剣は熊のぬいぐるみへと変化した。
「えっ?」
先程まで短剣だった物は綿が分断に詰め込まれた幼稚な遊び道具へと変化する。
「ぬいぐるみ!? なっ、何だコレは」
動揺に満たされている最中。
全てを言い切る前に美少女は直ぐに間合いを詰め、顔面に拳をアッパーのように振り上げると男の顎骨を粉砕した。
追撃のように顔面を鷲掴み、空中へと投げると強烈な蹴撃を放ち車窓へと叩きつける。
「がふぁ!?」
時間にして僅か数秒。
ガラスが盛大に飛び散り、激しく角に強打した男は情けない格好で意識を手放した。
「いけないな、こんな馬鹿なことせずにちゃんと生きなよ。卑怯者に女神は微笑まない」
顔にかかる窓ガラスの破片を払い落としながら美少女は遅すぎる説教を述べる。
「なっ……えっ」
コスモは突然生まれたこのカオスな状況を受け止めきれない。
悪い夢ではないかと頬を叩くが確かな痛みを感じ現実ということを裏付けてしまう。
だが一拍おいて我に返ると即座に人質に取られていた少女の元へと近付いた。
「君大丈夫!?」
「うぅ……お姉ちゃん……!」
泣きながら抱きつく少女を抱き締め返すと優しく頭を撫でる。
首についた傷を治癒魔法で治すと少女を親の元へと返す。
無事だった事に安堵感を抱きつつもコスモは高鳴る心臓を抑え、襲撃者を鎮圧した美少女へと近付いていく。
しかし当の本人は視線も向けず自分の世界に入ったように独り言を呟いていた。
「それにしても学園生活前からこんな物騒とはね〜いやぁ過激だな、バイオレンス!」
「ち、ちょっと」
「まぁでもこれも青春なのかな〜いいねぇテロから始まる青春! イエスッ!」
「ちょっとッ!」
「うぉっビックリした!?」
いても経ってもいられず声を荒らげたコスモに少女は年相応に驚く。
その享楽的な顔は明るくありつつも何処か不気味さを纏っていた。
「急に大きい声出さないでよ!? 心臓に悪いじゃないか! あぁビビった」
テンションの高さに押されつつもコスモは深呼吸すると言葉を紡いでいく。
「よく分かんないけど……助けてくれたことは感謝する。でも貴方一体なんなの?」
奇抜な格好にエキセントリックな雰囲気。
珍獣を見たような視線で足先から脳天までをコスモは凝視する。
「君……ステラ学園の制服よね? というかその顔どこかで見たことが……あっ!」
質問に答えず自分のペースで驚いたような顔を浮かべると美少女はコスモをビシッと指差した。
「王国騎士団にいた気がする! えっなんで制服なんか着てんの!? ていうかめっちゃクソ美人だな〜まっワタシの美少女ぶりには負けるけど、ウハハハハハッ!!」
小動物のようにコスモの周りをうざったく駆け回ると興味津々の声を上げる。
自由奔放ぶりを見せると美少女はコスモにいきなり抱きついた。
「イッ!?」
甘い匂いが神経を伝いコスモは思わず身体を震え上がらせる。
悪い意味での鳥肌が一斉に広がり情けない声を反射的に発してしまう。
「お〜騎士っていう割には意外と柔らかい身体なんだね、抱き心地も悪くない」
「ちょ、ちょっと離しなさいよド変態!?」
常人とはまるで違う距離感の詰め方にコスモは美少女を突き放す。
助けてくれた恩人だが突然の奇行に感謝よりも恐怖が彼女の心を染め上げた。
「アンタは何なの、誰なの……?」
「ワタシ? そんなに知りたいかい?」
自尊心の塊のような笑みを向けると彼女は小柄に見合わない豊満なボディを動かし自らの名を明かす。
「私の名はバタフライ、バタフライ・オリジナルッ! 史上最高で最強の天才とはワタシのことだ。よろしくね子猫ちゃん?」
バタフライと名乗る少女は瞳孔が開いた歪んだ笑みでコスモへと言葉を紡いだ。
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