第17話
相変わらず転生男がべらべら話しかけている。
いい加減、私が拒絶していることに気づくかないかな?
私は、我慢できずに声をかける、
「いい加減、何処かに行ってくれませんか?私は貴方には興味はありません。」
そう私が言っても相手は気にすることなく話しかけてくる。
「まぁまぁ。せっかくこうして転生者で会うことができたんだからさ。仲良くしようよ〜」
「こちらは仲良くする気はありません。」
いい加減、頭にきたので口調を強くして拒絶の意志を伝える。
「あれ?さっきまで、話してくれなかったのに話してくれるようになったね!良い声をしているね〜」
駄目だ。何を言っても聞かない男らしい。もうこの男とは話さない方が良い。
「君も転生者だろ。名前も顔も知っている。貧民出身の転生者だろ?有名だよね。あぁ、俺と1度でも話したら最後だよ。俺の能力はロケーションって言って、1度でも話したら相手の居場所がわかるようになるんだ。」
最低のストーカー能力ね。
私は絶望的になる。
心情的にはこんな男消しても問題ないが、実際に消すと殺人になるだろうし、問題になる。
それに能力は人としては最低だけど、国の機関としては、要人警護や捜索には使える可能性が高いから、気に入られているかもしれない。しかも、貴重な男性だから、国としては、いなくなるのも気にするだろうし。
いくらしつこくナンパしてきたから勝手に消すと問題になるかもしれない。
こいつが国とは無関係かどうか気になるわ。
そう考えながら、周囲を確認するとこのまま道なりに行くと歓楽街についてしまうと気付いてしまった。
しまった。この手の男に触られたくないから手を出してきたら離れたり、前を塞がれたら、早足で横道に移動していたら、この男に誘導されていた。
周囲をみると歓楽街に近いとはいえとはいえ、まだ昼間だから人はほとんどいない状況だった。このまま殺ってしまうか?
「駄目だね〜いくら俺と近づくのが嫌だからって、俺にまんまと誘導されちゃって。」
まずいな。私が殺る気になったことを気付かれた。この男のロケーション能力とかいうやつのせい?
私は転生者だが、相手も転生者だ。しかも、相手は男であり、地球基準でいえば相手の方が力も強そう。
走って逃げるしかないか…。
「おぁ!って、今更逃げても遅くない?」
男は私が走り出す前に私の手を掴み引き寄せようと力を入れてくる。
ヤバいっ、結構、力が強い。
「離せ!ナンパ男!こっちがこんなに嫌がっているって気付け!」
「良いね~!その口調、俺!昔から嫌がる女を無理矢理ってシチュエーション大好きなんだよね。」
男はニヤニヤしながら私の髪を掴む。
髪を引っ張られる痛みで私の抵抗が弱まる。
クソっ、こんなに奴に無理矢理されるくらいなら能力を使って殺してやる。
私が本気になったことを気付いた男はさらに力を入れてきた。
「なんだ!?やる気かコラ。」
男は地球上でも同様のことをやっていたのだろう。慣れた手付きで髪を引っ張り、反対の拳を振り上げ、私の顔めがけて振り降ろそうとした。
しかし、その拳が私の顔に落ちる前に、男の首に縄が巻き付いた。
男は急に息ができなくなったので、首にかかった縄を解こうと私の髪を放して首と縄の間に手を入れようとするが後ろに引き倒されそれもかなわない。
「やれやれ。浮気女に天誅と思っていて動向を探っていたが、どうやら、下手なナンパ男が、尊敬する方の大切な人に暴行にしていたので、止めさせてもらう。」
体格の良い女の人がナンパ男の首に縄を巻き付けて倒した上で、速やかに手足を縛りながら話す。
「良かったな。ロイズ様が貴女とこの男がいるところを見つけて。最初は何か話しているように見えたので浮気をしているのかと思って、後をつけていた。怪我はないか?例え、転生者とはいえ襲われたら恐怖を感じたろう。」
この女性はウルズ商会の警備員の方だろう。商会に行くと同じ服装の人が警備で立っているところを見たことがある。
「助けていただいてありがとうございます。髪を引っ張られて痛かっただけで、大きな怪我はないです。でも、私の浮気を疑っていたのですか?」
私がそういうと
「そうだ。わたしはロイズ様から貴女が男と並んで歩いていたと聞いたので捜索していた。ようやく見つけたのでしばらく、様子を見ていた訳だ。貴女は転生者で能力も不明なので近づくのは避け、離れて様子を確認していたので助けるのが遅くなってしまった。そして、疑ってすまなかった。ロイズ様とジェニカ様には貴女の浮気はなかったことを報告するよう仲間には伝言を頼んだ。そしてまもなくロイズ様とジェニカ様がこちらに来られる。」
「おい!クソデカ女!僕をこんなにしてどうなるか分かっているのか?」
「そうだ。ロイズ君やジェニカさんをこちらに連れてきては駄目よ。こいつの能力はロケーションとかいってこいつに目をつけられたら、居場所とかがわかるようになってしまうらしいわ」
「大丈夫だ。こいつはそんな大げさな能力は持っていないはずだ。転生者で男はかなり珍しく新規に判明した奴以外は大体把握されている。こいつはノイジィとか言う能力で相手に話しかけるとその声の波動で相手の不安感や焦燥感を煽ることができて相手を陥れやすくなるとか言う転生者だ。」
「クソっ何で俺の能力が発動しねえんだ!」
手足を縛られながらも男がバタバタと暴れる。
「うるさい。お前の能力は発動できないようにしている。黙って気絶しておけ。」
そういうと、警備員さんは再びナンパ男の首にかかっている縄を絞めて気絶させる。
しばらくしたら、ロイズ君とジェニカさんがこちらに走ってきた。
「アキさん!大丈夫ですか?」
ロイズ君が泣きながらこちらに向かって走ってくる。
「警備員の方から聞きました。最初はアキさんの浮気を疑ってしまってごめんなさい。アキさんがそんなことをするとは思っていなかったけど、他の男と話しながら歩いているのを見て不安に思ってしまったから。」
ジェニカさんも申し訳なさそうに話す。
「すまなかった。アタシもロイズの言葉だけを聞いて早とちりしてしまった。ロイズが君を見かけた後に部下に後をつけさせたのだが、元々、浮気を疑っていたし、歓楽街にも行くから、これはいよいよと思って、証拠集めをするために少し遠目に配置するように指示をしていた。暴行がはじまるまで助けに来られなかった。」
ロイズ君とジェニカさんは頭を下げて謝る。
「大丈夫です。殴られる前に助けられましたから。でも、ロイズ君は私の浮気を疑うなんてひどいな。いつも好きってアピールしているのに。」
「ごめんなさい。」
ロイズ君が泣きながら謝る。
私は、そんな彼を愛しく思いながら、少しからかう。
「うーん。この心の傷を癒やしてもらうにはデートが必要かな。」
私がそういうとロイズ君は笑顔を浮かべて
「はい!喜んで!」
と転生前の居酒屋の店員さんみたいに答える。
私はその笑顔を見てとても嬉しくなり、同じような満面の笑顔になる。
ロイズ君は多分、人を笑顔にする魔法が使える。私は彼の笑顔の魔法にかかっているのだろう。
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