第16話



私はウルズ商会に勤める警備員だ。今日は、ロイズ様とジェニカ様の買い物デートに陰ながら付き添い守っている。


ロイズ様は私にも気さくに声をかけてくれる素晴らしい男性だ。


普通の男性は知り合いの女性は以外には声もかけたがらない人が多い。特に権力を持つ男性は使用人などに気さくに声をかけることなどしない。


これは、男性が気難しいわけではなく、女が1人でいる男性をみたら声をかけたり、酷いときには攫ったりしたことが過去にはあったからで、自衛のために不必要に話さないのだ。


私もウルズ商会に勤めて何回かロイズ様の警護としては動いているが、ロイズ様が一人になると不埒な女がよってきては声をかけてくることが何回かあった。

そんな輩には痛い目にあってもらって退場してもらったが、その時、ロイズ様の感謝の声と笑顔には癒やしをもらえた。


今日はジェニカ様に横にいるので、ロイズ様には、声をかけてくる輩はいない。

私は愛しいロイズ様の横顔を見ながら周囲を警戒していると、不意にロイズ様の顔が青ざめ始めて、ジェニカ様に支えられながら、道端に座り込んでしまった。


私は、周囲を警戒しつつ、お二人に近づき、それとなく周囲に潜んでいる仲間を呼び寄せる。

ロイズ様とジェニ様が何かを話すと私に近づくよう指示があり、私は無言で近づき指示を仰ぐ。


「少し前を弟の見合い相手のアキ・ナカムラが男連れで歩いているらしい。浮気女の動向を調べなさい。奴は転生者だから、気をつけて、費用はいくらかかってもいいわ。」


その言葉を聞き愛しいロイズ様を虚仮にしたアキ・ナカムラに憎悪にも近い感情を抱く。


私が触れることも許されない愛しい人を簡単に捨てる女には容赦ない罰を与えるべきである。

そう決意を抱き後を追いかけようとすると、

「万が一のときはこれを使いなさい。」

ジェニカ様がこちらにギャレットを渡してくる。

「それは単なるギャレット(絞首縄)ではないわ。転生者と付き合ことになった本人か家族だけが王族の承認を得て購入できるものなの。このギャレットで首や身体の一部でも絞めると、短時間だけど転生者の能力を封じられるの。

転生者がこちらに危害を加えようとしてきた場合の自衛手段として購入を許されるものよ。奴が逆上して襲ってきたら使ってもかまわないわ。」


ジェニカ様の目には殺意すら感じられる。

「転生者相手に近づくのは難しいかもしれないけど、貴女たちならできるわ。動向を探って。」


私は、静かに頷くと、仲間を促し、人混みに紛れる。護衛に警備員を1人を残して、各自で別れてアキ・ナカムラとその浮気相手を捜索にかかる。





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