第14話

ジェニカ・ウルズ(姉:長女)視点


アタシには可愛いロイズという名前の弟がいる。


ロイズは素直で賢くて料理も上手で、どんな女でも、ぜひ婿に欲しいと思うような男だ。


アタシも自分の弟でなかったら婿にしたいくらいだ。


今日はそんなロイズと週一のデートだ。最近、弟は転生者の見合い相手に選ばれ、 見合いをしたのだが、悔しいことにお互いに憎からず思っているのか断ることなく、恋人のような関係となっている。


こうなってしまったら、ロイズが他の女と歩いているところ、それも腕を組んだりしているとこを見られるとロイズが不貞を働く男扱いされてしまう。


だから、アタシは昔みたいに可愛い弟と手をつなぐことができずに、周囲にはあくまで家族で歩いているというアピールをしながら、ただ隣を歩くだけだ。


この世は、見合いをしたり、恋人、婦夫となった女男が他の異性と関係を持ったりしたら、非難されるが、男には貞淑が求められるのでどちらかというと男に非常に厳しい。女も非難されるが、偶に浮気も甲斐性の一つだ。みたいなことをいうと輩もいる。


もし、アタシの可愛いロイズが転生者に浮気されたらどうしよう?


でも、アタシもロイズとこうして隣同士で仲良く歩いているから、姉と弟という関係を知らない人からみたら恋人同士に見えるのかな?

そうしたら、あの転生者、確か、アキ・ナカムラとかいう名前の女は怒るかな?

でも、見合いをしたときに、母さんやレイチェル姉さん、アタシとは顔を会わせているから、わかると思うけど。


そんなことを考えながら歩いていると、隣を歩いているロイズが顔を青くして今にも倒れそうな状態になっていることに気づいた。


「どうしたの?顔が真っ青だけど!」

アタシは焦りながらロイズを支え腰掛けられそうな場所に連れていく。

ロイズは少し落ち着いたみたいだが、まだ顔は少し青ざめ、気分が悪そうにしている。

「ありがとう。ジェニカ姉さん。」

「どうしたの?急に体調が悪くなったの?暑かったかしら?」


ロイズは、静かに首を横に振り、理由を言いづらそうにしている。


「どうしたの?お姉ちゃんに言ってごらん。恥ずかしくないから。

そうしたらロイズが重い口を開きとんでもないないことを言い始めた。

「実は、さっき歩いているときに少し前をアキさんが歩いていたんだ。」

「そうなの?気づかなかったわ。ひょっとしてアタシと歩いているところを見られたと思ったの?アタシは姉だから大丈夫よ。」

ロイズは静かに首を振り、

「ううん。違うよ。アキさんは僕の知らない男の人と歩いていたんだ。アキさんには兄弟はいないって聞いていたから…。」


「それは本当なの?」

アタシは近くに隠れてついてきている部下たちを呼び寄せる。

そして警備員に向かって指示を出す。

「少し前を弟の見合い相手のアキ・ナカムラが男連れで歩いているらしい。浮気女の動向を調べなさい。奴は転生者だから、気をつけて、費用はいくらかかってもいいわ。」


アタシがそういうと部下たちは静かに頷く。

アタシの目にも浮かんでいるだろうが、部下たち目に怒りの炎が見える。ロイズは商会の皆に好かれているのだ。そんなロイズを虚仮にするような女は例え転生者だろうが許さない。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る