第7話

僕の名前はロイズ、ウルズ商会長の子供だけど、上に姉2人がいて、しかも男だから、商会長の座を相続する可能性はほとんどない。


まぁ、男で大きな商会の資産を相続したら、とんでもなく苦労すると思うからいらないけどね。


そう、この世界では男性の肩身は狭いとしかいいようがない、ほとんどの男性が、満足な教育を受けず(まぁ、小さな村とか町だと女性も満足な教育を受けないけどね。)、

働かせてはもらえず、家の中で花婿修行という名の家政夫としての仕事を与えられて適齢期になれば領主や有力商人の子供だと政略結婚のために婿に出される。


庶民の子供だと奉公と称して領主や、有力商人などに売りに出されて、子種が欲しい女性に一定期間貸し出されて、子供を作るために生きることになるのが、ほとんどだ。


そう、この世界は男に厳しい世界だ。


大抵の男性は一人で街を歩くこともできない。男性が街を一人で歩いていると、すぐに女性に声をかけられてしまう。それを無視したり、誘いを断ったりすると、

無理矢理連れて行かれそうになったり、女を誘っているくせに無視するなと怒鳴られたりするんだ。


だから、僕は小さい頃は女の子の格好をして歩いていたのだけど、流石に成人になったら女性の格好をしても、バレそうになったりしたので、今は、浮浪者の女の格好をしている。浮浪者女をジロジロと見る人はいない。



僕はこの格好をして初めて自由を得た気がした。


ついでに言えば、僕は人には言えない職業に就いている。簡単に言えば殺し屋だ。この格好のおかげですごくやりやすい。


僕は殺しを実行する人間だから、目立たない、顔を見られないっていうことに気をつけている。そんな点でもこの格好は気にいっている。


僕の殺しのシステムは殺し屋も依頼人も捕まらず裏切られないために考えだされたシステムだ。


僕と依頼人の間には最低2人の仲介者がいる。1人は依頼人と交渉する仲介者、もう1人は僕と情報共有する仲介者だ。依頼が重要だと仲介者同士をつなぐ仲介者もいるときもある。


これは依頼人が裏切っても依頼人側の仲介者は僕に直接会っていないので僕の情報が漏れる心配はない。

逆に、僕や仲介者が依頼人を殺そうとしても、僕や殺し屋側の仲介者は依頼人を知らないので依頼人も安心して依頼ができる。仲介者はお互いに接触する相手の情報を与えることはしないと規定を結んでいる。


僕の依頼料は金貨24枚だ。これは、この街で女性と子供2人(女の子)の平均的な3人家族(男性が極端に少ないので、基本的には男性は1人の女性と生活はしない。)の年間の生活費だ。


僕は依頼人には、3人家族の年間生活費を出してでも殺したいという強い気持ちを持っていないと安易に人を殺してはならないという自戒の念を持ってもらいたいのでこの金額にしているのだが、ほとんどがこの金額でも依頼してくる。


僕の依頼料が安いのか依頼人の恨みが強いのかわからないのだが、僕には関係ないので、特に支障がなければ受けている。


今回の依頼はボルツマン商会の会長なのだが、詳しい事情は知らない。だが、商人組合の組合長の座を得ようとして無理な工作を重ねた結果、近々、この街を出る計画を得たので僕は3日前に仲介者を通じて依頼人に、実行可能と伝えたら先日、半金が渡されたので、ボルツマン商会長の動向を探っていたわけだ。


さて、僕の公算ではそろそろボルツマン商会長が抜け穴を通って街の外に出ようとするはずだな。


ちょうど、夜空には月も出ていない。人が抜け出すにはちょうど良い夜だね。

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