第3話
組合長の名前はアキ ナカムラという彼女の生まれ育った国では貴族や騎士、有力な商人でもないのに家名を名乗ることができるらしい。
転生者は貴重だが、世界に1人だけというわけではない。
転生者は大体、10年に1人ぐらいの割合で名乗り出てくるのだ。もちろん名乗り出た全員が本当に転生者だとは限らない。
転生者はある時、自分で転生者だと気付くらしい。そして転生者は前世の記憶が戻り、名乗り出た時点で真偽判定を受け、正しいと判定されたら、転生者と認められ、それまでの経歴に加えて前世の経歴を付け加えることができる。名前も変えることが可能だ。
もちろん、前世のことを捨てて、現世の経歴だけで生きていくことも可能だ。
前世の記憶が戻った時点で名乗り出ず、神様から与えられた能力を発現させ、巷で天才と評される人の中には名乗り出ていない転生者も何人かいるとの噂だ。
面倒かつ厳正な真偽判定を受けるために、わざわざ今までの人生のアラ探しをされることよりも転生したことを隠して生きていく人もいるらしい。
過去の転生者の話をまとめると、もといた世界で非業の死を遂げると転生できるようになるらしい。
例えば、トラックという魔物に殺されるとか、自分に惚れている人に殺されるなどという結末を迎えると、神様から転生を勧められるらしい。
そのときに、その死の代償として素晴らしい能力を与えられて別の世界に転生するとのことだ。
転生者の多くが、この世界の人には発揮できないような能力を持つので大事にされ、前の世界の経歴や神様から与えられた能力を考慮し、重要な役職に就く者がほとんどなのだ。
現に僕の目の前にいるアキ組合長も前の世界では経理や経営を生業にしていたとのことなので、名だたる有力商人を差し置いて、この商業組合の組合長に抜擢されている。
最初は不満だらけだった商業組合の人たちや有力な商人も、彼女の能力や知識には脱帽するしかなく、今は能力だけでなく、その人柄にも心酔していているのだ。
もちろん、例外はどこにでもいるのだが…。
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