第2話
「これでよし。」
そう独り言を言って僕は夜勤でするべき仕事を終えた。この組合の夜勤には、鮮度の関係で早急にしなければならない納品や緊急時のための受付と、日中の契約書の取りまとめや明日の準備などの仕事があり、契約書の取りまとめなんかは日中には終わっているし、元々男である僕には契約書を扱うような重要な仕事はそうそう回ってこなので、明日の準備や掃除などですぐに終わってしまう。
夜の受付なんかも、下心満載の口が上手い商人に騙されて連れて行かれる!なんて言われているのでしたこともない。
「あら。ロイズ君は仕事終わったの。」
アキ組合長が僕に話しかける。
この組合では、男の僕が働いているので、周りの職員は気を使って、基本的には男の僕と複数人の女性で仕事にあたるが、夜勤などの人が少ない状況では、独りで仕事をできるように配慮されている。そのため夜勤では、大体が独りでいるので、こうして組合長が話しかけてくれるのは嬉しい。
「ロイズ君はちゃんと仕事ができから、もう少し重要な仕事に当てられてもいいのよね。」
確かに僕の仕事は比較的簡単で軽微な仕事が多い。これは昔、男の僕がいると、女性が色めき立つことがあって、基本的には独りでできる仕事が当てられて、複数の目で確認のいる契約などの重要な職務に当てられていないのだ。決して能力がないわけではないと思いたい。
「大丈夫ですよ。組合長、男の僕を雇ってくれているだけでも嬉しいです。基本、女は仕事、男は家にてっいうのがこの世界ですからね。」
アキ組合長はむーっと謎の言葉を言いながら頬をふくらませる。
「じゃあ、私の秘書なんかしてみない?べっ別に秘書が必要なわけではないけど、君の有能なところを周りに見せるには良いと思うのだけど…。…どうかな?」
うーん。そうきたか。少し前からこの秘書案が出てきたのは知っていたが、ローズ副組合長で留めてもらっていたんだよね。僕の副業には今の状況が一番良いんだけど。
「僕が秘書をやると他の優秀な方の意欲を削いでしまうかもしれませんし、秘書になると朝早くから夜遅くまで仕事するようになると思いますので、家族とも相談してから決めさせてください。」
そう言ってやんわりと今は拒否の態度を取る。あまり高圧的には反発するのはやめておいたほうが無難だろうな。
「そう!良く考えておいてね。できれば、前向きな回答がほしいな。ところで、家族って言っていたけど、ロイズ君はまだ独身だよね?」
拒否の態度だったが、アキ組合長は少しも怒らず家族の確認をしてくる。
「はい。まだ独身ですよ。良い相手がいなくて困っています。」
「あぁ。ごめんね。私がいた前の世界では、部下にこんな質問したら、嫌がらせってとらえられることもあるのよ。今度からは気をつけるね。」
そう言って、アキ組合長は一職員の僕に頭を下げる。
「大丈夫ですよ。気にしないでください。僕はアキ組合長は人に嫌がらせをするような人ではないと思っていますので。」
そう言って僕が笑顔を向けると
「そう。ありがとう。」
彼女はそう言って嬉しそうに微笑んだ。
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