第13話 豚は疑われる
「オークはCランクの魔物です!レベル3のヘルファイア様が倒せるわけが……」
「いや、よくわからんが倒してしまって」
リーリエさんは訝しげな目で俺を見た。
どうやら疑われているようだ。
「……不正はいけません。たとえ王族の方であっても、実力のない方をギルドに登録させるわけにはいきません。ギルドの信用に関わります」
「そうか……」
国民の評判が最悪のアスランだ。
悪どいことをすると疑われても、全然不思議じゃない。
おそらくリーリエさんは、俺が予め大きな魔石を用意し、魔物と戦わずして登録試験に合格しようとしていると思っているようだ。
たしかに昔のアスランなら、目的のためなら不正も辞さないだろう。
ただ、オークを俺が倒したのはまぎれもない事実だ。
しかし俺は、どうして自分がオークを倒せたのか説明できない。だから釈明の仕様がない。
……このギルドは諦めて、別のギルドに登録するしかないか。
「私、見てました!」
後ろから女の子の声がした。
「この人は確かに、オークを剣で倒しました!私を助けてくれたんです!」
俺がオークから助けたエルフの女の子——フレイアだ。
オークを倒した後、別れたはずだが。
「助けてくれた時、ちゃんとお礼を言えなかったから、ギルドまで来てしまいました。……改めてお礼を言わせてください。助けてくれてありがとうございました」
深々と、フレイアは俺に頭を下げた。
栗色の長い髪がかすかに揺れてすごく綺麗だ。
「お礼なんて別にいいよ。俺は王族として国民を守るのは当然の義務だから。フレイアさんが無事でよかったよ」
「ありがとうございます!ヘルファイア様は本当に優しい王様なんですね」
まだ国王にはなっていないのだが……
細かいことはともかく、人に感謝されるのは素直に嬉しい。
俺とフレイアのやりとりを見て、周りの冒険者たちがざわつている。
豚暴君のアスランが人助けをしたのだ。驚くのも無理ない。
「ヘルファイア様、失礼しました。証人がいるのなら認めざる得ません。非礼をお詫びします」
リーリエさんは頭を下げた。
今日はなぜか人に頭をよく下げられる。
「気にしないでくれ。今までの俺の行いを考えれば、疑うのは当たり前だ」
「あ、ありがとうございます……ご寛大な国王陛下!」
だから、俺はまだ国王じゃないのだが……
めんどくさいからわざわざ訂正しないけど。
「それにしても……どうしてレベル3の俺がオークを倒せたんだろう?」
普通、Cランクのオークを相手にする場合、適正レベルは30ぐらいだ。
その10分の1しか強くない俺が、倒せるのはあり得ない。
「それは……ヘルファイア様には、王族専用スキルがあるからです」
フレイアさんがおそるおそる口を開いた。
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