第6話 剣の修行①
「おーい。俺も稽古したい!」
俺は窓の外から、エリンとヤマトに声をかける。
2人は上を見上げた。
すごく驚いた顔をしている。
「アスラン様……では、剣をお持ちになってこちらへ来てください」
エリンが嫌そうに俺に返事をした。
やっぱり、エリンには嫌われているようだ。
俺は剣を持って下に降りた。
脂肪ばかりで筋肉のない身体には、鉄の剣は重すぎる。
きっとまともに振れない。
ちなみに、鎧も着ていこうとしたが、太り過ぎて身体が入らなかった。
「兄さん!やっとやる気になったんだね!ぼくは嬉しいよ!」
弟のヤマトが笑顔で迎えてくれる。
ヤマトは本当にいい弟だ。
アスランみたいなダメな兄貴のことも気にかけてくれる。
後にアスランの敵になるが、最後までアスランを心配していた。
ただ……ヤマトはいい弟なんだけど、アスランを歪ませたのも、実はヤマトだった。
アスランは子どもの頃から完璧すぎる弟と比べられて、いじけてしまった。
そう考えると、アスランも少しかわいそうな奴だ。
イケメンで性格も良くて頭も良い……そんな超人的な弟を持てば、誰でも引け目に感じるだろう。
「ありがとう。俺も王族として、強くならないといけないからな」
「兄さんからまともな発言が聞けるなんて……ぼくは信じられないよ」
普段のアスランは、ヤバいことばかり口走っていたらしい。
「……アスラン様。剣を抜いてください」
エリンが冷たい声で言った。
居抜くような、鋭い目で俺を見ている。
瞳の奥に、激しい怒りが感じられた。
「やっと王族としての自覚に目覚めたようですね。しかしあまりに遅すぎます。特権を持つ者には、相応の責任というものがあります。今日はそれを、弛んだ身体に叩き込んで差し上げましょう」
エリンは剣を構えた。
俺も剣を構えるが……剣が重すぎて手がプルプル震えている。
これで打ち合うのは無理だ。
「ごめん。まずは剣の振り方を教えて——」
「せいやー!」
エリンが勢いよく打ち込んできた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます