第5話 聖剣の姫騎士

「……アスラン様。わたくしは失礼します、ごゆっくりお楽しみください」


サーシャは澄ました顔で、部屋から出ていった。


「ミアはアスラン様に、一生着いていきます。だからどうか、アスラン様のモノだいう証をください」


しゅるしゅると、ミアは下着を脱いだ。

――裸だ。一糸まとわぬ姿。


「いやいや、ダメダメだ」


俺は恥ずかしくて、顔を背ける。


「ミアを、アスラン様のモノにしてください」


ミアは俺の手をとると、むにゅうっと自分の胸に押し当てる。

うお……!すげえ柔らかい……


「さあ、アスラン様……」


ミアは赤く惚けた顔で、俺を見つめてくる。

……きっとミアはずっと奴隷だったから、俺に裸でご奉仕しないといけないと思っているんだ。

でも、そんなのは間違っている。


「ミア。本当にそんなことしなくていい。キミはもっと自分を大切にしたほうがいい」

「え?」

「キミはもう奴隷じゃない。俺はキミを、奴隷から解放する」

「もうミアは……奴隷じゃない?」


ミアは信じられないといった顔をした。


「そうだ。ミアはもう奴隷じゃない。自由だ」

「……でも、アスラン様のお側にいさせてください」

「いいの?俺みたいな醜い奴の近くにいるのは、嫌じゃないか?」

「アスラン様はミアの神様です。一生、お側にいます」


ミアは俺にぎゅうっと抱きついた。

また豊かな胸が俺に当たりまくる。

すげえ柔らかくて、あったかい。


「ずっとお側にいて、お世話しますから」


ミアの目は真剣だ。

俺もその真剣さに応えないといけない。


「ありがとう。よろしく頼むよ」

「やったあ!ありがとうございます!アスラン様、大好き♡」


嫌われ者のアスランに、まず一人だけど味方ができた。

破滅を回避するための、第一歩だ。

この調子でどんどん周囲を味方にしていこう。

まずは……痩せることだ。


◇◇◇


痩せて見た目を良くすれば、アスランへの評価も変わる。

痩せるのには、運動が一番だ。


ミアは奴隷生活の疲れきたのか、ベッドで寝てしまっていた。


――キンキンキン!


外から剣がぶつかる音がする。

俺は窓の外を見る。

あれは……「聖剣の姫騎士」だ。


小説の結末で、アスランを処刑する公爵令嬢の騎士。

名前は、エリン・クロスフォード。

腰まで伸びる真紅の髪。

大きすぎる胸を押さえつける胸甲が汗で光っている。


公爵令嬢でありながら剣の才能があり、豚暴君アスランを倒すため、革命軍を組織する。

もともとは、アスランの剣術指南役だった。

でもアスランは怠け者だから、一度もエリンの稽古を受けなかった。


一緒に稽古しているのは、アスランのひとつ下の弟、ヤマト・ヘルファイアだ。

背がすらりと高くて、顔立ちも整っている。

性格も良くて、貴族の令嬢に大人気だ。

小説では、エリンと恋に落ちて、一緒にアスランを倒す革命軍のリーダーになる。


痩せるには、剣の稽古が一番いい。

痩せる上に、強くなることもできる。

もし王都から追放されても、剣の腕があれば冒険者として生きていける。

それに……アスランの敵になる2人と仲良くなれば、破滅を回避できるかも。










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る