第4話 とりあえず、痩せよう

「わあ!すっごくきれい!」 


サーシャさんにドレスを着せてもらったミアは、大喜びで飛び回った。


「あ!ごめんなさいっ!アスラン様の前ではしたないことを……」

「いいよ。ミアが喜んでくれて嬉しい。とってもきれいだよ」

「え?あたしがきれい……?」


ミアは顔を真っ赤にした。


「ううっ……」


また泣き出した。 


「ごめん。変なこと言っちゃったかな?」

「違うんです。あたし、きれいだなんて言われたことなくて……アスラン様ってお優しいんですね」

「いやいや、そんなことないよ」

「あたしの神様です!」


さすがに「神様」は大げさすぎるのでは。

俺はただの田舎の下級貴族、しかも20歳なのにまだ童貞だ。女の子と付き合ったことさえない。


「アスラン様はもっと怖い方だと聞いていました。でもとっても優しくて……アスラン様がご主人様ならあたし幸せです」

「ありがとう」


そこまで言われると、やっぱり照れてしまう。

アスランは評判が最悪だから、怖かったんだな。


「一緒に朝飯を食べよう」

「でも、アスラン様とあたしが同じ食事だなんて」

「1人じゃ食べきれないから」


テーブルには、豪華な食事が所狭しと並んでいる。

朝から肉やらケーキやら、山盛りの料理だ。

こんなに朝から食べたらそりゃデブになる。 


「おいしいいいいいいいいですぅぅ!」


ミアはローストビーフを食べて、めっちゃくちゃ喜んで叫んだ。


「うん。うまいね」


さすが王族の食事だ。

田舎の貧乏貴族の俺も、食べたことがない。


「お肉。生まれて初めて食べました。こんなにおいしいんですね」


ミアはガリガリだ。

腕はホウキみたいに細い。

ずっと奴隷だったから、まともに食べさせてもらえなかったんだろう。

細すぎるミアに比べて、アスランの身体はブヨブヨだ。

椅子からケツがはみ出ている。


「もっと食べなよ」

「アスラン様は食べないんですか」

「俺は痩せないといけないから」


「アスラン様が、痩せる……?」


後ろに控えていたサーシャさんが驚いている。


サーシャさんが腰を抜かすほど、アスラン=デブというイメージが強いんだろう。

痩せて見た目が良くなれば、アスランの印象も少しは良くなるはずだ。


「……アスラン様。あたしは一生アスラン様にお仕えします」

「え?」

「あたしを人として扱ってくれたのはアスラン様が初めてです。獣人は恩を絶対に忘れません」

「いやいや、そんな一生なんて」

「ですから……あたしに、証をください」


ミアは立ち上がって——

ドレスを脱いだ。



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