第3話 あたしを食べてください

「アスラン様……あたしを食べてください」


猫耳の女の子は、ベッドに仰向けに寝ると、足を開いた。


「さあどうぞ」


大事なところが全部見えている。

俺は恥ずかしくなって、顔を背けた。

本当の俺、ランスは童貞だ。

どうぞって言われてもどうすればいいか……


「アスラン様……お気に召しませんでしたか?」

「いや、そういうわけじゃ……」


華奢な白い身体に、大きくて豊かな胸。

茶色がかった髪から、もふもふの耳が立っている。

尻尾もふさふさで、触ったら気持ち良さそうだ。

いやいや、見ちゃダメだダメだ……


俺は思い出した。

たしかアスランは、獣人の奴隷を飼っていたっけ。

名前は、ミアだ。

アスランは毎日、ミアの身体を弄ぶことになっていた。

普通のことじゃ飽き足らず、鞭で打ったり、裸で外を歩かせたり、そりゃもう最低なことばかりする。


「申し訳ございません……あたし、初めてだから何もわからなくて」

「え?そうなの?」


俺は驚いた。


「俺はいつキミを買ったんだっけ?」

「……昨日ですが」


どうやらアスランは、昨日ミアを奴隷として買ったらしい。

待てよ。昨日買ったばかりなら、まだアスランはミアに酷いことしてないんだよな。

小説だと、ミアはアスランを裏切って、「聖剣の姫騎士」にアスランの隠れ家を教える。

アスランを死ぬほど憎んでいたから、アスランが処刑された時、一番喜んだのがミアだ。


まだアスランは、ミアに嫌われてない。

なら、好かれるチャンスだ。

アスランは人から嫌われまくっていた。

もし1人でもアスランの味方になってくれる人がいれば、破滅を回避できるかもしれない。


「……服を着て。そんな格好じゃ寒いだろ」

「え?いいんですか……?」

「いいよ。あと、お腹空いてるなら一緒に朝ごはんも食べよう」


ミアは驚いて、身体が固まっていた。


「サーシャさん!この子に服を着てあげて!」


俺は部屋の外で控えているサーシャさんを呼びつけた。


「うっう……」


ミアは泣き出した。


「ごめん!俺、何かした?」

「違うんです。あたし、嬉しくて……」




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