第2話 朝食はあたしです

このままじゃ……俺は確実に死ぬ。


「怖がらせてごめんね。顔を上げてください」


床に額をゴリゴリすりつけていたメイドさんは、震えながら顔を上げた。


「申し訳ございませんっ!」


どうやらアスランは、このメイドさんをいつもイジメていたらしい。


「ごめん。名前を忘れちゃったから、教えてくれないかな?」

「……サーシャでございます」


サーシャ——たしか小説の中には出てこなかった。

名前も出てこない、いわゆるモブってやつだ。


「サーシャさん。今日は何年の何月何日?」

「サーシャ……さん?」


サーシャさんはひどく驚いた顔をした。


「どうしたの?」

「いえ、アスラン様が私の名前を呼んでくださるなんて、信じられなくて……」


アスランはサーシャさんの名前さえ呼ばなかったのか。

やっぱりひどい奴だ。


「すみません!つい無礼なことを言ってしまって……今日は1250年4月1日でございます」

「そうか……」


小説では、1251年4月1日にアスランはグインランドの国王に即位する。

ということは、今は国王に即位する1年前だ。

今のアスランは、まだ王子の身分だ。

あと、処刑されるのは1252年4月1日だから、今は死ぬ2年前になる。


「アスラン様……今日の朝食はどうされますか?」

「そうだなあ。いつものでいいよ」


とりあえず、腹ごしらえしてからじっくり考えよう。

俺が生き残るための方法を。


「いつものですね。かしこまりました」


サーシャは俺にお辞儀すると、部屋を出た。

どんな朝食が出るんだろう?

アスランはめっちゃくちゃ太ってるから、朝からガッツリ食べるに違いない。

かなり豪華な朝食が出るはずだ。


部屋のドアが開いた。


「お、サーシャさんありがとう——」

「アスラン様……あたしを食べてください」


部屋に入ってきたのは——

猫耳の少女。

……裸だ。



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