蛇陀カラメコラボpart3
「では第3問!『メドゥーサはゴルゴーン三姉妹の末っ子です。では、長女の名はなんでしょう?』」
「はぁ?」
分かるか。俺は神話には詳しくないんじゃよ。
つい「はぁ?」なんて純粋な怒りが出てしまったが、これは俺の気持ちも分かるだろう。メドゥーサに対して深い知見があるわけでもないのに、その姉妹の名前など分かるはずがない。
これがまだ七福神の誰かとかだったらまだ分かった。
毘沙門天とか弁財天とか寿老人とか恵比寿とか。日本神話ならいざ知らず、ギリシャ神話に対して俺は知識を持っていない。
「あれあれ~知識の伝道者なんじゃないの~?」
ここぞとばかりに煽ってくるカラメさん。
ここで俺のVtuberとしての設定が裏目に出てしまったようだ。れもねぇどママが雑談にはある程度の教養なんてバカなこと言ってくれたおかげでその設定が足かせとなっている。
補足しておくがママは何も悪くない。俺の八つ当たりである。
悪いのは、たかが爬虫類を頭に乗っけているだけの矮小な生物である。
「異世界の図書館司書なんでね。地球の神話に関しては門外漢もいいところなんスわ」
我ながら中々鋭い反論が飛び出たものだ。
これにはカラメさんも何も言い返せない様子。ふっ……勝ったな。
コメント欄
:しかめっ面が分かりやすいなぁ
:完全に言い負かされていますね
:口論でもよわよわなのかよ
:おい!年下の男の子に分からされているということでおけ?
:おけ
:天才
:誰か薄い本出して
「じゃあ異世界の神話なら何でも答えられんの?」
「ええ、例えばアラナイ聖典2.11におけるバラニマス論の解釈を巡った教会内部の話とかします?」
「なぁにそれぇ……?」
即興で設定を作ってみたのだが、なんかそれっぽくない?
コメント欄
:非公式wikiが更新されそうやな
:もう更新されてたで
:仕事早すぎて草
:誰が運営してるんですかねぇ
:というか個人Vtuberに非公式wikiがあることに驚き
:個人勢だろうがwikiはあるでな
:バラニマス論ってなんやろ
:異端審問官とかおるんやろなぁ
「ちょっと話が意味わからない方向にシフトしてきたので、ちゃんとクイズの答えを考えて下さーい」
「ステンノ」
「え……?」
分からないと言ったな。あれは嘘だ。
と言うのもまた嘘で、ぶっちゃけてしまえば今思い出したのだ。俺は某ゲームでマスターやってるから分かったんだよね。
まあそれはさておき、急に俺が答えを言い当てたことに対してカラメさんは呆然としている。俺はまだ酒は飲めないが、飲めたのならこれは酒の肴となるような表情なのではいだろうか。
カラメさんのアバター(現実の彼女とは似つかない長身の美女。髪の毛は今は人間のもの)が固まってしまっている。
口をOの字に開いて、目をこれでもかとかっ開いているその姿はなんとも愛らしいがそれと同時に滑稽でもある。
「ぶわははははは!」
なんだか我慢ならずに下品な笑い声が俺の口から飛び出してしまった。
人を小ばかにしたような笑い方だったので癪に障ったのか、カラメさんは自我を取り戻した。
「笑うなぁ!ってかなんで分かったんだよぉ!完全に勝ったと思ったのにぃ!」
「残念でしたー俺は思い出したのですよ。時間稼ぎご苦労!」
「き、貴様ァ……次は絶対に答えられないような問題を出してやる。こうなったら台本を完全に無視してでも……」
コメント欄
:台本あったんや
:根は真面目ちゃんやからな
:配信上は逸般人化するけど、同期の話聞いてたらプライベートはまともみたいだし、台本があっても不思議ではない
:んなことよりCHIZUに完全に負かされてるカラメ良き
:分かるわ。ボクッ子メスガキ分からせとかてんこ盛り過ぎて
:興奮しちゃうじゃないか♡
:可哀そうは可愛い
:これで涙目とかだったら尚良かった
「リスナー!!ボクで性癖を満たすなぁ!今じゃないでしょうが!」
「あ、なんかいじられてるんですね」
俺はコメント欄を見てはいけないことになっているので分からないが、カラメさんがリスナーに何か言われていることは確かなようだ。
この様子だと全くもってまともなことではないことは分かる。いつの世もリスナーとはそう言うものだ。
「あああもう第4問!」
「強行しますね」
「うるさい!」
カラメさんは俺に対して叫ぶと、ふぅー。と息を吐いて呼吸を整えた。
「『ボクの好きな食べ物は何でしょう?』これでどうだ!」
「はぁ!?いや、メドゥーサに関連する問題だって言ってたじゃないですか!これは違うでしょう!?」
「いいや。ボクはメドゥーサだから、ボクに関係することは実質メドゥーサに関係することなんだよ!」
「してやったり」という表情のカラメさん。
そうかもしれないが、些かそれは屁理屈と言うか、面白くなくない?完全に俺を負かしに来てるじゃん。
コメント欄
:凄いこと言い出してて草
:うんまあ間違ってはないな
:そう言われてみればそうやな
:うーんこの
:そこまでして勝ちたいか
:ステンノが納得いかんかったんやろなー
:ドヤドヤしてたところに正解ぶつけられりゃやけにもなるわな
「えーっと、ウニですよね」
「…………」
コメント欄
:ファッ!?
:いやなんで分かるねん
:流石にキショイ
:これにはカラメもドン引き
:ええ……
まあ俺だって一端のVtuberファンとして界隈のビッグであるカラメさんのことは多少知っているわけで。切り抜き動画とか昔から見てたし、なんか記憶にあるのだから答えられたのだよ。
「なあぁぁぁぁぁんで知ってるんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます