路線

「Vtuberとして活動するにあたって、ゲーム配信とかした方が良かったりするかね」


 そんなことを俺は配信で視聴者に聞いてみた。

 Vtuberになるのだからなにかゲーム配信とかしてみた方が良いのではなかろうかという考えはある。


 ってか受肉しても雑談しかしないてのはどうなのかと、甚だ疑問に思ったりするわけですはい。


 イカとインクのゲームとか、大乱闘するやつとか、fpsゲームだっていいだろう。 Vtuberと言ったらこのようなゲームを配信しているイメージがある。


「雑談をしなくなるというわけじゃないんだけどね」


 もちろん、当分は今まで通り雑談配信が主となるだろう。機材そろえるまでお金を貯めないといけないし。


 コメント欄

 :いいんでね

 :なんでもええ

 :やりたいもんやったもん勝ちよ

 :それはそう

 :なんにせよ作業しながら見るので関係なし

 :定期的に雑談してくれるのなら無問題

 :しらす


 「しらすって何?」


 なんか本当に意味不明なコメントが目についたが、まあ概ね肯定的な意見だと受け取ろう。


 俺自身、色々なことをしてみたいという欲はある。


「あー個人勢のVtuberになるわけかー」


 まあ具体的に何か決まったわけではないんだけどね。れもねぇどさんからの返信もまだ来てないし、立ち絵が出来上がったらモデラ―さんにライブ2dの依頼とかしないといけないし。


 やることが盛りだくさんだ。大学の課題とかもある。思い出したくなかった。


「質問箱とか見ますか。えーっと……」


 俺は視聴者から寄せられた質問を吟味して、良いと思ったものを配信画面に乗せる。


『事務所に入ったりするんですか?』


「あーどうやろ。入るかもしれないし入らないかもしれない。まあ不確定やなー。そもそもまだ俺Vtuberじゃないし、なってから考えようかな」


 コメント欄

 :まあ時期尚早やな

 :俺は入っても入らなくてもいい

 :個人勢でいてほしいという気持ちと企業に所属して有名になってほしいという気持ちがある……

 :スタンスが変わらなければ良い


『石狩鍋美味しいですよね』


「美味しいよね。皆は事前に鮭の小骨とか抜いたりする?」


 コメント欄

 :抜く 

 :抜かない。面倒だから

 :料理しない

 :石狩鍋を食う機会がない

 :オーバーイーツで済ませる

 :オーバーイーツとか高すぎて無理

 :抜く

 :食べる時の俺に任せる

 :石狩鍋って何


「オーバーイーツ高いよね~。石狩鍋を知らない人は調べてもろて。ってか知らないことあるんか」


 南の方じゃ食べなかったりするのだろうか。

 鮭と鍋のコンボがあるから北の方限定とか?にしてもだろう。


「ハイ次」


『私が愛用していた菓子粉砕機が菓子によって粉砕されたので供養してください』


「それなんてプラごみ?」


 コメント欄

 :草

 :それあてにしちゃいけないから

 :グルメ〇パイザーはクッキーすら砕けないからね

 :コンセプト崩壊マシーン

 :悲しいなぁ…

 :悪く言うのは止めてあげなよ。泣いちゃうよ?


 視聴者の意見も辛辣である。

 供養してあげなよ。俺はちゃんと両手を合わせたよ?


「南無」

 

 ちゃんと手を合わせた後で、次の質問に移るとしましょう。


『毎日夜中に隣のJDの部屋から不気味な音が鳴るのですが、これは脈ありでしょうか』


「なんでそう思うのかは知らないけど、あなたはそのうち呪われますね。プラごみと一緒に供養してあげましょう」


 コメント欄

 :あーあ

 :怖すぎて草

 :もうめちゃくちゃだよ

 :俺だったら隣に凸ってるね

 :隣がJDとかそれなんて同人誌?

 :エッチですね

 

「あーもう視聴者が末期だよ。病院行った方がいいんじゃないかな」


 コメント欄

 :うるせぇ!

 :妄想ぐらいいいだろ!

 :こちとら彼女どころか出会いすらないんじゃ!

 :職場でごみを見るような視線を向けられる身にもなってくれ

 :婚期逃した


 なんか、読んでるだけでテンション下がって来るね。最後の婚期逃したってコメントが一番哀愁が漂ってるよ。


 まだ分かんない!婚期逃したって思いこんでるだけかもしれないよ!


「あーあー地獄だ」


 笑えるほどに欲に忠実なコメントばかりだ。爆笑するほかない。

 例えVtuberになろうがこの配信の雰囲気だけは壊さないようにしたいな。

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