受肉の選択肢
「お前最近一気に伸びたよな」
そう言うのは俺の友人である
こいつは俺が配信活動をしていることを知っている数少ない友人の1人であり、俺がCHIZUという名前で活動するきっかけとなった人物でもある。
大学内の休憩スペースで俺たち2人は暇を潰していた。
「せやな。まあカラメさんのおかげよ」
「いやすげぇよな。カラメが見てるなんてさ」
「それは俺が一番驚いている」
「だろうな」
ただの雑談配信者の枠にあれだけ有名なVtuberが降臨なさったらそりゃ騒ぎにもなる。
「でも俺としては見に来る人はお前の配信見に来ると思ってたわ」
「なんで?」
「いやそりゃサムネも配信画面も真っ黒の背景に白文字の明朝体で、デカデカと『雑談中』なんて書いてあったら気になる人は気になるだろ」
「そうかな?俺としては分かりやすさを重視したんだが」
見れば一目で『あ、この人雑談してんだなぁ~』って思えるサムネイルにした。確かに面白みも意識はしたが、そんなに重視してはいない。
というかぶっちゃけてしまえばサムネ作るのが面倒くさい。あれ一個作りさえすれば後は使い回しができるから便利なんだよ。
「まあそのことはいいとしてだな。お前、Vtuberになったりしないの?」
「はぁ~?」
俺がVtuber?
馬鹿も休み休み言うんだな。普通にアリかもしれん。
待って欲しい。俺が地盤を掘削できそうなほどの掌返しをしたのには理由がある。
視聴者視点からすればアバターが2次元とはいえあった方が見やすいだろう。それに俺自身興味もあった。
まあ真っ黒の背景にアバターがいるっていう中々シュールな画面になりそうな気はするけれど。
「お前もVtuberにならないか?」
「鬼の方ですか?……まあいいかもな。でもお金がかかりそう」
「それはお前が判断する問題だしな。俺は何も言わん」
「まあなってみるか」
「金はあんの?」
「最近使ってなかったしあるだろ」
「ちゃんと依頼しようとしたら2桁万円とかかかるんじゃないか?」
「だろうな。まあ予算は絵師の方に事前に伝えるわ。あとモデラ―さんにも」
時給1000円換算で大丈夫だろうか。
配信で得た収益を使うことになるだろうな。
「今度配信で視聴者にも聞いてみるわ」
「それが良い」
▼
「と、言うことがあったんですわ」
コメント欄
:ほーん。いいんでね
:俺はCHIZUにVになってもらいたい
:どっちでもよさげ
:Vになった後の雑談配信とか見てみたいわ
:この黒背景にポツンとアバターがいるの想像したら草
:虚しそう
:孤独感ヤバそう。
思い立ったが吉日と言わんばかりに俺は帰宅後すぐに配信を開始して視聴者に意見を求めていた。
コメントの反応は上々だ。俺がVになってもギャアギャア騒ぐような古参勢もいないようで何より。
「受肉するか~?古参の方々とかどう思うよ」
コメント欄
:いいんじゃん?
:俺は賛成
:いいと思うよ
:Vになっても雑談が聞けるのならそれで良い
:これに尽きる
:俺もそうやな
俺が古参勢に意見を求めてみると、俺の活動黎明期から見てくれていた人の名前がコメント欄に流れ始める。
「おおー久しぶりに名前を見る人がいるー」
コメント欄
:おひさ
:おひさ
:新規やけどここの配信あったけぇ
:それはそう
「雑談しかしてないからね。よくコメントくれる人とか古参勢は覚えてたりする」
なにせ同時接続者数が2桁とかの時にコメントしてくれた人だ、嬉しかったし印象に残っている。
それにしても、俺がVになることに賛成の人がほとんど、というか反対意見が見受けられない。蛇陀カラメさんの視聴者が流れ込んできている影響もあるのだろう。視聴者層が案外被っていたりしているのか。
「受肉しますか。反応も上々ですしお寿司。じゃあ俺の受肉事情は後日配信やらSNSで連絡することにするわ」
コメント欄
:おけ
:楽しみ!
:楽しみが増えたね
:首を長くして待ってます
:気長に待つ
:全裸待機してるわ
「全裸待機はマジで変態なのでやめてもらっていいっすか」
コメント欄
:草
:草
:草
:草
:変態ニキもよう見とる
:犯罪者予備軍もよう見とる
:地獄で草
:終わってるw
俺の視聴者が特殊すぎて辛い。え?こんなもんだって?インターネットって怖いね。
「みんなもネットリテラシーは身に着けよう!」
コメント欄
:正論なんだが急にどうした
:脈絡が終わってて草
:変態ニキへの注意喚起かな?
:言われてるぞ変態ニキ!
:¥10000 許して
「え!?あ、赤スパだーー!許す!」
変態ニキから赤スパを投げられたので許す。
いやー赤スパなんて投げられたら許すしかないですよね。
コメント欄
:ナイスパ
:ナイスパ!
:草
:現金には勝てない
:っぱ世の中金よ
:金は強し
:つまり俺らも金を投げればCHIZUを好きにできる…?
:天才
:天才
:天才
この後俺は視聴者からスーパーチャットを投げられまくった。
そして俺は視聴者の言いなりになってしまった。
イケボで『好き』って言ってください。
なんてスパチャが来たので調子に乗って言ってしまったのでこのアーカイブは残しはするがよほどのことがない限り俺が自分で見ることはない(断言)。
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