他力本願寺

 カラメさんによって結構バズった。

 俺のチャンネルの登録者数が1万人から5万人へと跳ね上がっている。


 トップVtuberの影響力はただならぬものがあるようだ。

 あの配信からまだ1日しか経っていないというのに4万人も増えているというのはもう一周回って恐怖すら覚える。

 

 流石企業所属のVtuberだ。


 ということで今日も今日とて配信をする。


「こんちゃ~」


 コメント欄

 :きちゃ

 :きちゃ

 :こんちゃ

 :こんちゃ

 :こんちゃ

 :めっちゃバズってるな

 :初見です


「初見さんいらっしゃい。俺の配信はマジでただ淡々と雑談するだけですからね」


 コメント欄

 :ほんまか?

 :ここ最近は雑談というよりプロレスだよな

 :まあ雑談と言えなくもない

 :楽しいのでヨシ!

 :作業用として聞いてます


 まあこの配信をどう楽しもうとそれは視聴者の勝手だし、楽しんでくれるのであれば俺も本望だ。

 それより今日の同接が1000人になっている件について言及してもいいですかね。

 いやー普段の2倍とは恐れ入りますよ。確かにカラメさんは影響力があるのだろう。しかしこれほど数字が伸びるとは思わなかった。


「いやー。まさかカラメさんが見てくださっているとは思わなかったな。カラメさんから来てくれた人も良かったらチャンネル登録してね」


 折角のチャンスなのでこれを逃すわけはない。


「じゃあ質問箱でも見ていきますか」


 質問箱。それは匿名で相手に質問をすることができるサイトだ。


 ========

 彼女いますか?

 ========


「いるとお思いで?」


 コメント欄

 :あーあ

 :触れてしまったね

 :おっいないのか

 :ナカーマ

 :涙拭けよ

 :メシウマ

 :同志

 :それは禁忌よ!

 :だれだよチーズ泣かせた奴!


「この質問をした人は末代まで呪うとして、彼女はいません。欲しいです。切実に」


 今のところ彼女いない歴イコール年齢なので、そろそろ彼女が欲しいところ。

 なんかさ、身近な人の恋バナとか惚気とか聞くと俺もそんな恋愛がしたいなって思ってしまう。


「彼女がいないことは悪いことではない。しかし俺は彼女が欲しい。イチャイチャしたい」


 コメント欄

 :切実で草

 :欲してますね

 :そのうち発作起きそう

 :もし彼女ができたら許しません

 :それはそう

 :一生童貞でいろ


「あのさ、君たち俺の視聴者ならもっと応援してもいいんじゃないかな。なんでそんなに辛辣なん?」


 コメント欄

 :仕方ない

 :使命感

 :逆に優しくしてほしいんか

 :お?全肯定botをお求めで?

 :いや応援なんかするわけwww

 :そう言うのはよそに求めてもらって


「なんでこんなに当たりが強いん?可哀そうとは思わないんか」


 コメント欄

 :思わん

 :微塵も思わん

 :思わん

 :思うと?

 :メシウマ

 :逆に面白いと思うんだよなぁ

 :慈悲は無い


「酷すんぎ。まさかこれほど心ない奴らだったとは……」


【悲報】俺の視聴者人の心とかない。


 まあ求めてないのでいいですけどね。しかし1人くらい応援してくれるような人がいてもいいと思うんだけど、そこんところはどう思いますかな。


「リア友は彼女がいるというのに……しくしく」


 コメント欄

 :友達おるならええやん

 :トモ……ダチ……?

 :トラウマ抱えてる人おるって

 :闇やな

 :友達がいないのはみんな同じや

 :CHIZU友達おるんか

 :でもイチャイチャ見せられてると思うとニヤニヤが止まりません

 :↑性格最悪で好き


「いやマジで目の前でイチャイチャされることのなんとも言えなさが分かります?」


 コメント欄

 :友達も恋人もいたことないので分からないですね

 :喧嘩売ってます?

 :確実に俺を潰しに来てる

 :友達…恋人…ウッ頭が…!

 :殺意の波動に目覚めそう

 :これが、殺意!?

 :《蛇陀カラメ》キレそう


 あら、カラメさんも非リアであったか。


「カラメさん。キレないで。あなたがキレたら俺じゃ止められん。ってか配信中では!?」


 俺の記憶が正しければカラメさんは同じ時間帯に配信をしていたはずだが。


 コメント欄

 :《蛇陀カラメ》終わったので来た


「わざわざ俺のところに!?」


 見てくれるなんて嬉しい。嬉しいのだが、カラメファンのユニコーン(ガチ恋勢)にお気持ち表明されないか心配ではある。


 まあそんなこと気にしていたら疲れるだけか。


 アンチが着いたら有名になった証なのだろうか。面倒ごとは避けたい。


 一通り配信を終えた俺はPCをシャットダウンして呟いた。


「声だけの配信によくここまで人が集まるもんやなぁ」


 何となくだが、俺は配信者に向いているのかもしれないと思ったり。





 

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