第13話 ひとつ屋根の下

 黒木パパが準備してくださった部屋は、家だった……いや、本当なんだ。昔、使用人さんたちに住まわせていた家があって、崩す予定だったそうなんだけど、これを機にリフォームすることにしたんだって。


「とんでもない話で、未だに気が引けるんだけど」

「柊クンに、気兼ね無く暮らしてほしいって、先日パパが言ってた。それに、ほら、柊クンも協力するって」

「あぁ、リフォームのこと? それなら心配しないで。バイトで3軒だったかな?経験済みだったからさ。材料費は流石に無理だけど、人件費諸々差っ引いたら、かなり違うはずだよ。こんな家に住まわせてもらえるんだ、協力するに決まってるよ」

「リフォームできる高校生は、そうそう居ないと思う。DIYとは次元が違う」

「結構延長線なんだけどなぁ、DIYの。家屋の柱とか梁が健在なら、ほとんど変わらないよ?僕程度の腕でもどうにかなる」

「うん、柊クンの感覚はおかしい。コロッケ作るみたいに気軽に言うことじゃないと思う」

「……なぜにコロッケ?」


 古さは目立つけど、清掃会社を入れてくれたらしい古民家。ソファーに背を預けると、祖父母の実家のような安心感があった。


「うん、この雰囲気を残したリフォーム……いいかも」

「匠みたいなことを言い出した。どうしよう、柊クンがサッパリ分からないけど、カッコいい!」

「うわぁっ!」


 ソファーに埋もれている僕に、黒木さんが飛び乗ってきた。黒木さん、スタイルがいいから、すんごい困る。


「あの……黒木さんは、部屋に戻らないの?」

「なに言ってる?」

「えっ?」

「うん?」


 会話が噛み合ってない。


「ほら、もういい時間だから、戻らないと」

「戻る? 私も、今夜から柊クンと、こっち」

「婚約(仮)って、なんだったのかな!? これは最早同棲でしょ!?」

「ルームメイトだと思えばいい」

「ちなみに、部屋は別だよね?」

「今のところ、この家にはダブルベッドひとつしかないよ?」

「確信犯かよ!? それルームメイト言わないから!」





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