第三十七話:赤き鮮烈なる死
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〈
アクティブスキル(等級:Ⅴ)
CT:1800秒 持続:永続 MP消費:200
HPとMPを除いた全てのステータスが(最大HP*0.02)Pt増加する
効果中、HPが毎秒最大HPの2%分ずつ減少する
効果中に死亡した場合、蘇生後『赤き呪縛』効果を得る
『赤き呪縛』
持続:1800秒 消去不能
最大HP-90%(最終計算後に乗算)
如何なる手段でもHPが回復しなくなる
※この効果はリスポーン地点到達で解除される
消費EXP:1600Pt
解禁条件:累計1000000Pt以上の自傷ダメージを受ける
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全身に力が漲り、五感は冴え渡っている。まるで心臓を基点として莫大な熱量が内から湧きだしてくるようだ。全身がずきずきと痛むが、今はその痛みすら心地良い。
シヅキの理性は一瞬で揮発した。
「……くぁはっ……は、ハッ────」
『
これは
そのため、蛇腹剣による牽引移動を行った方が走るよりも速く移動できるのだが、それは理性の蕩けたシヅキには分からない。
『身に宿る熱量、格段に増した身体能力を全身全霊で発揮したい』、それ以外の余計な思考は今のシヅキには存在しなかった。
「あぁ、あぁ! 楽しい、愉しいたのしい────」
笑いながら
案の定、
「んふーっ! やるじゃあん……」
「……よし、ここが切りどころか! 〈
シヅキは笑みを浮かべて全力で剣を引き寄せるが、蛇腹剣が軋むだけで
だが、シヅキの方も完全に負けてはいない。向上したVITの恩恵もあり、その場にどっしりと構え、
そこへ、麻痺から復帰したひやむぎによって特大の支援が飛んだ。
〈
シヅキの最大HPは食事バフを含めて現在9192Pt。それが1.5倍になり、それを元に
このとき、シヅキの全てのステータスは一時的に400を超えた。
「いいね最高!!よくやった!! あはははは────」
瞬間、拮抗は圧倒に変わる。シヅキの凄まじい膂力で引き寄せられた
瞬く間にゲージが減少していき、
HP一定値到達によるトリガー行動。
「遅い遅いおそぉい!! くぁは──ははははは!」
シヅキの破滅的な威力の連撃。予備動作中、隙だらけの
「これで──おしまい!!」
シヅキの一撃を食らい、
赤い残光をその場に残し、聖野生達へ向かって目にもとまらぬ速度で接近していき……。
「さあさあさあ! このまま
「……はっ? いや、流石に無理だろ! というかお前HPが……〈ハイ・ヒーリング〉!」
「あぁー……? いやぁ、そっか。この制限がある以上、今からあれを殺しに行くのはちょっと難しいかな? うーん……残念!」
目にもとまらぬ踏み込みでひやむぎ達のところまで移動し、呆気に取られて固まっていた三人の背中をぐいぐいと押し出すシヅキ。いち早く立ち直った聖野生が、常識的な推論でもってシヅキを諭す。
そうこうしている間にも、シヅキのHPは50%を切ろうとしていた。聖野生が回復を飛ばすが、それを受けたシヅキは何故か露骨にテンションが下がった。
通常、
効果時間こそ永続的だが、割合消費のスリップダメージにより事実上の稼働時間が限定されている特殊な形式。1秒ごとに2%、つまり50秒の経過でHPが尽き、死亡する計算となる。
これはHP回復によって効果時間の延長が望めるということでもあるが、
そんなリスクを背負っているからこその超性能。いわば50秒だけの無敵モードとも言えるだろう。
「……状態異常か? どうなってんだ……? 〈白詰草の──」
「あぁーもういいよ! これは回復じゃあどうにもならないからね! ……よし。────ぐ、こふっ」
目減りし続けるシヅキのHPをなんとか回復しようとする聖野生を、シヅキは手で制した。今から
多少は
大量の血が剣を伝い地面へと滴り落ち、シヅキのHPが急速に減少していく。
血の海に倒れ伏すシヅキを、巨大な白い花が覆い隠す。花が開くと、そこには無傷のシヅキの姿。〈リィンカーネーション〉による死亡時自動蘇生だ。
だが、傷こそ治っていてもその姿は完全に元通りではなかった。
ちらりとUIを確認すると、現在のシヅキのHPは771/771と表記されていた。
「……? おぉ、こうなるんだ……うわっ、HPが700ちょっとしかない……。こりゃあなんか食らったら即死だぁ」
「……あら? この状況……まさかあそこから勝ったの? 正直無理だと思ってたんだけど」
シヅキの行動を見て、聖野生は自身がやるべきことを思い出したらしい。彼女によって蘇生されたイルミネがシヅキの隣でむくりと起き上がり、呑気な発言をした。
実際のところ、イルミネが思考停止で特攻したせいでPTが壊滅しかけたはずなのだが、まぁ、シヅキですらできなかったのだから、
「やー、わたしも遂に
「えっ、嘘でしょ!? ……私が生きてるときにやりなさいよ、もう!! シヅキの弱みを握る絶好の機会だったのに…………」
イルミネが拳を握り締め、悔しそうにとぼけたことを呟いている。ボスを打倒したときにはイルミネは死亡していたため、倒した実感がないのだろうか。
「いやぁ……凄かったですよ……。これわたし居る必要あったのかな…………」
「うむ、凄まじい働きだったな!」
「あ、ひやむぎちゃん? あの
ひやむぎの
「いや、なに。助っ人に来た二人が全力を出しているのだ、私がそうしない訳にはいかなかったからね!」
「これでクエストクリアか……。結局おんぶにだっこだったな……」
「いやぁ? 多分わたし達だけだとクリアできなかったと思うけどね~。三人が居なかったらどっかでわたしが死んですぐ終わってそう」
「……ま、即席にしては中々良いPTだったんじゃない? ……そ、れ、よ、り、も! 金箱よ金箱! 多分みんな出てるでしょ? いっせーのーで開けましょうよ!」
イルミネが指し示す先にはきらきらと光輝く金色の宝箱。初回討伐時確定というのが正しければ、今回はめいでんちゃん達三人にも同じものが出現しているだろう。
五人は目を合わせ、それぞれ宝箱に歩み寄っていく。
「ふむ。楽しみだね!」
「いいもんでろー、いいもんでろー……」
「わたしここまで二連続で当たり引いてきてるし、そろそろ外れ引きそうだなぁ……」
「スキルチケットかMP系アクセが欲しいが……どうだろうな」
「さ、行くわよ? いっせーのー……で!」
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Tips
『属性とステータスの相関関係』
七つある属性と七つあるステータス、これらはそれぞれで緩く紐づけられている。
HP:聖属性 MP:闇属性
STR:火属性 DEX:雷属性
VIT:土属性 INT:氷属性
AGI:風属性
AGIを強化する武器が風属性を持っていたり、DEXを強化する装飾品が雷属性強化も併せ持っていたりと、そのような形でこれらの結びつきは表現されている。
ただ、シヅキの持つ赫血の短剣がHP特化型でありながら闇属性であるように、必ずしもこの関係通りになっているとは限らない。あくまで緩い結びつき、おおよその傾向だ。
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