◇第五話:甘美なる痛苦

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ボアミート

素材アイテム(等級:Ⅰ)

猪の肉。煮込み料理に最適。


所持数:108

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小さな魔石

素材アイテム(等級:Ⅰ)

魔物の体内に生成される、小型の魔力の結晶。

とげとげとした、イガグリのような見た目をしている。


所持数:8

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筋力の指輪

装備アイテム(装飾)(等級:Ⅱ)

効果:STR+5

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「ふぅ、こんなもんかな? 油断さえなければそう大したことはなかったな。大したことはなかったなー!!!」


 9回ほどIDをクリアした段階で、ゲーム内世界で日が落ち始めた。現実では夜の10時近い頃合いだろう。明日のことも考え、そろそろ切り上げるべきだ。


「最後に経験値を割り振って……と。結構伸びたなー」


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PN:シヅキ

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HP:1579/1579(189)

MP:100/100

STR:10(5)

DEX:10(5)

VIT:8(3)

INT:5

AGI:8(3)

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EXP:8/1198

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右手:冒険者の短剣

左手:(冒険者の短剣)

頭:なし

胴体:冒険者の服

手:なし

足:なし

装飾1:初心の指輪

装飾2:筋力の指輪

装飾3:なし

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武器攻撃力:19 (10+DEX*0.6+AGI*0.4)

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〈HPブースト〉〈駆け足〉

〈血の刃〉

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「……だいぶHPが増えたとはいえ、まだ1日で取り戻せる範囲。ログアウトする前に、本当に痛覚に影響がないか試しておこうかな。痛覚100%での自刃は初めてだし、宿に戻ってからにしよっと」


 コンソールから帰還コマンドを呼び出し、リスポーン地点までの転移を選択する。ベッドと収納が備え付けられた、宿の部屋の中へと移動した。



    ◇◇◇


 シヅキは部屋のベッドへと横たわり、服を胸元まで捲り上げる。


「ふー……。自傷は矜持に反するけど、これは検証目的だから……。いざゆかん! づっ!? ぐ……げ、ぁ……っ!」


 以前試したときと同じように刃を突き立て、横に滑らせるつもりが、最初に突き立てた時点で焼けるような感覚と猛烈な痛み。あまりの激痛に叫び声すら出ず、呼吸もままならない。


「はっ……あっ…………! う、ぉえぇ……」


 内臓を傷つけたのか、せりあがる不快感。腹部を損傷している状態では力を込めて堪えることもできず、白いシーツに血の混じった吐瀉物を吐き出した。


「うぅ……あ……ぎっ……! ぐ、ふぅっ……! はぁーっ…………!」


 滲む視界の中、執念でHPを確認した。歯を食いしばり、短剣を引き抜いて回復薬を使う。途端に痛みが引き、腹部の灼熱が彼方へ消えさる。


「ふーっ……ふーっ……! な、る、ほど…………これで……100ダメージか……。はぁっ…………そ、想定通り……かな……」


 激痛の中、必死に読み取ったHP表記は1472/1579。つまり、今の自傷で受けたダメージはたったの107。継続していたスリップダメージによる多少の誤差はあるだろうが、どちらにせよ全体の1割にも満たない数値だ。


 ────やはりHPの総量は痛覚になんら影響を及ぼさない・・・・・・・・・・・・・・

 そのことを理解した途端、指先ひとつ動かせない疲労感の中、脂汗にまみれながらも、シヅキの口の端は吊り上がっていく。


「あぁ、つまり……。本来であれば容易に死ぬ、それほどの苦痛を、死という終焉をも遠く、永きにわたり享受できる……! たまらないなぁ……! …………だが、それは絶対に避けるべきだ。そうだ、自ら望んでの痛苦などクソくらえだ! 抗って、抗って、抗いぬいて! 絶望から逃れんとし、それでも痛苦に足を取られ、痛みを忌避し醜く足掻く! その足掻きにこそ・・・・・・・・生命が生命たらんとする、輝かしい光が宿るんだ!!」


 恐怖に屈し、すべてを諦め生命を投げ出すなど許しがたい。そんなことはあってはならない。捻じくれ、屈折した信念はシヅキに矛盾した覚悟を抱かせる。


「ふ、ふふふ……。わたしは絶対に痛苦に屈したりなんてしないぞ……」


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Tips

『ダメージ量』

 ある程度UGRプレイヤーに慣れ親しんだプレイヤーたちの間では、「四肢をひとつ失うと400ダメージ、胴体を両断されると1000ダメージ」といったような感覚がおおよその共通認識となっている。実際の減少量は状況によってさまざまだが、これらの基準を大きく逸脱するほどのことは早々起こり得ない。

 そのため、HPが固定値で上昇する装備やスキルによってHPを500程度まで上げ、片手を捥がれた程度の怪我ならギリギリ戦闘を継続できるだけのラインにもっていくのが現在の主流ビルドになっている。

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一章はこれで終了です。この後は掲示板回と敗北if、ステータスまとめの3つが投稿されます。

二章は既に執筆済で、三章が出来上がり次第順次二章を投稿していく予定です。

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