十二話
「出てくるわ」
夕方、シモンさんはそう言って玄関へ向かった。
「どこ行くの? 仕事終わったんじゃないの?」
事務を終えて一服してたリベカさんが聞く。
「ああ、ちょっと野暮用にな」
シモンさんが扉を開けると、途端にざーざーとうるさい雨音が聞こえた。今日は朝から暗い曇り空だったけど、昼を過ぎた頃から降り出して、今は本降りになってる。
「こんな雨の中? 風邪ひかないようにね」
リベカさんは深く聞くことはなく、出て行くシモンさんを見送る。あたしはそれを見てそわそわしてた。公園で話を聞いてから一日が経ってる。決行は明日か明後日と言ってた。そして仕事を終えたシモンさんはまたどこかへ出かけて行った――間違いない。追ってた人のところへ向かったんだ。ちょうどあたしも事務所の掃除を終えたところだ。あとは夕食まで何もすることはない。シモンさんの後を追うには絶好の瞬間だ。邪魔をするなって言われてるけど、でもやっぱり気になってしまう。リベカさんをひどい目に遭わせた相手、その人をシモンさんはどうするのか。連れて来るのか、拳で追い出すのか……。
「ミリアム? どうかしたの?」
不意に呼ばれてあたしは我に返った。
「え? な、何がですか?」
「出てったシモンのこと、ずっと見てたから……用事でもあったの?」
「用事――」
リベカさん、ごめんなさい。それ、使わせてもらいます。
「……はい。急ぎの用事があったんです。追えば間に合うんで、ちょっと行って来ますね」
こっそり、邪魔しないようにこっそりと見届けるだけ。それだけなら――あたしは小走りで玄関に向かった。
「用事って何なの? ちょっと、ミリアム、外は雨だけど」
「大丈夫です。行って来ます」
急いで追わないと見失っちゃう。
「ミリアム! 傘を――」
玄関を飛び出して、あたしは雨の中を見渡した――シモンさん、もういない。走って行っちゃったのかもしれない。でも目的地はわかってる。入り組んだ路地の奥の十字路の先、そこに向かったはずだ。あたしは昨日の記憶をたどって通りを駆け抜けた。
街路樹の下や建物の軒下を通って雨を避けながら、シモンさんがいないかと捜しつつ進んでた時、その姿をようやく前方に見つけた。雨のせいか、いつもよりも早い足取りで、昨日通った路地を奥へ向かってる。見つかれば絶対に追い返されるから、見失わない距離で静かに追わないと。この路地は奥へ進むにつれて足下がどんどんぬかるみ、水溜まりも多くなってく。そんな泥の地面にはシモンさんの足跡がくっきりと残って先へ連なってる。これを追えば見失わないけど、こっちの足音は出来るだけ立てないよう、慎重に進んで行かないと。
「……十字路だ」
昨日はここまで来たけど、あたしはこの先を見てない。シモンさんは確か右の道をのぞいてたはず――壁に身を隠しながら顔をのぞかせてみると、少し行った先の民家の前にシモンさんは立ってた。あそこがリベカさんの元彼の家らしい。
「おい、客だ。開けろよ」
シモンさんは扉を叩きながら抑えた声で呼びかけてる。ドンドンという音が雨音に紛れて鳴り続ける。……中から出て来る様子はない。居留守だろうか。
「無視とは失礼な野郎だな……じゃこっちも失礼するぞ!」
直後、シモンさんは片足を上げて、扉を思い切り蹴り飛ばした。その衝撃に鍵は壊れて、扉は勢いよく開いた。そこをシモンさんは平然と入って行く。……こういうことはやっぱり、何の躊躇もないな。
「ここからじゃ見えない……」
十字路から少し距離がある上、道に面した家の中はまったく見えない。これじゃ来た意味がない。……近付いて見るしかなさそうだ。
あたしは小走りで家の軒下まで行って、蹴り開けられた玄関の横にぴったりと背を付けた。
「――の鍵壊しやがって、弁償してくれるんだろうな」
そっと中をのぞくと、ぼさぼさ頭の痩せた男性が酒瓶片手にシモンさんに怒鳴ってた。あれが、リベカさんに傷を負わせた人……酒に溺れたっていうけど、物が散らかった部屋や、だらしない服装を見ると、今もかなり荒れた生活を送ってるみたいだ。
「てめえがさっさと開けねえのが悪いんだろ。酔っ払いが」
シモンさんは男性に詰め寄る。
「何なんだよ、お前は。強盗か?」
「はっ。てめえから盗むもんなんかねえよ、メイヤー」
メイヤー……それがあの人の名前……。
「何で、俺の名前知ってる」
「どうだっていいだろ。それより重要なのは、てめえが過去、リベカにしたことだ。覚えてるか? それとも、酒に浸かった頭じゃわかんねえか?」
メイヤーは思い出せないのか、眉間にしわを寄せて考えてたけど、次には何か閃いたように目を見開いた。
「……ああ、リベカ……あの生意気な女か。お前、あいつの知り合いか」
「知り合いじゃねえ。恋人だ」
シモンさんは堂々と言った。それにメイヤーは一瞬驚くも、くつくつと笑い出した。
「なるほど……あの女の復讐に今さら付き合わされてるってわけか」
「リベカは復讐なんか考えてねえよ。これは俺の考えだ」
「へえ。恋人として、かっこいいところ見せようって魂胆か? ははっ、くだらねえな。あの女にそこまで尽くしてやる価値なんかねえってのに」
「当時の記憶は、鮮明みたいだな」
声は抑えてるけど、その静かな口調からシモンさんの怒りが伝わってくる。それをわかってるのかどうか、メイヤーは酒瓶を飲み干してそれを放り捨てると、口角を引き上げて嫌らしい笑みを浮かべた。
「しっかり覚えてるぜ。あいつの胸くそ悪い顔と態度をな……。まだ小娘だったあいつを俺は拾って可愛がってやったんだ。なのに俺が組織から弾かれた途端、その恩も忘れやがって、まるでケダモノでも見るような目で俺を避け始め、挙句の果てには別れたいとかぬかしやがった」
「ふっ、自分がケダモノだってわかってたんじゃねえか」
「どっちが本当のケダモノだ。俺が組織での地位を失ったら、あいつは俺を捨てようとしやがったんだぞ。ずっと大人しくしてたのは、結局俺の地位と金が目的だったんだよ。それがなくなれば、もう用なしってことだ。あの女、好きだ何だと言って俺を騙してたんだ……!」
「おい、やっぱ記憶があいまいみてえだな。リベカはてめえの暴力のせいで別れを決めたんだ。終わらせたのはてめえ自身なんだよ」
「俺はあいつに尽くしたんだ! なのに捨てようとしやがった! 恩を仇で返そうとしてきたんだぞ! お前はそんな仕打ち許せるか? 俺は許せなかったよ。別れるってんならこっちの気を済ませてからじゃねえとな。だからあの女を徹底的に殴ってやった。やめて、ごめんなさいって命乞いされても無視してやった。血流して、体中真っ赤になってくのを見るといい気味だったぜ。これが俺にしたことの報いだってな!」
メイヤーは笑い混じりに語ってる。自然と顔をしかめるほど、気分が悪くなる話だ……。
「そうか……ってことは、てめえはリベカに暴力振るったことを認めんだな」
「ああ。思う存分殴ってやったよ。爽快だったぜ。雌狐を叩きのめすのは。くくっ……」
喉の奥で笑うメイヤーを、シモンさんは冷静に見つめてる。でもあたしは気付いてた。さっきからシモンさんが奥歯を強く噛み締めてることを。多分、懸命に感情を抑えてるんだ。爆発しないように。
「なら、それ相応の謝罪をしてもらおうか」
「謝罪? ……ははあ、そっちが本当の目的か。金に目がねえあの女のために、俺から分捕るつもりか」
「誰がてめえの金を欲しがるかよ。俺が求めるのはリベカへの謝罪、ただそれだけだ」
「本気で言ってんのか? 俺にあの女に謝れって?」
「リベカはてめえに受けた暴力で夢を壊された。その傷は今もあいつを苦しめ続けてる。てめえが頭下げたぐらいで、それがチャラにはなんねえが、一歩進むきっかけにはなるはずだ。だから――」
「くはははっ……」
メイヤーは突然お腹を押さえて笑い出した。
「驚いたな。どんな夢だが知らねえが、俺がその夢を壊してたとは……ざまあねえぜ。それこそ報いだ」
この男は、本当に最低な人だ。リベカさんがどれほど苦しまされ、悲しみに落とされたか想像も出来ないんだ。考えるのは自分のことばっかり……。
「言っとくけどな、俺は何も悪くねえ。悪いのは俺を騙したあの女のほうだ! 謝罪させるならあいつに言えよ。ここに連れて来て、悪かったと言わせろ。そうしたら褒める代わりに、また俺が叩きのめしてやるよ。生意気な性根を直してやる」
「……わかってたことだが、謝罪する気は微塵もねえか」
「謝る理由がねえのに謝れるかよ。……復讐はこれで終わりか? だったら鍵の修理代置いて――」
その瞬間、シモンさんは右腕を伸ばしてメイヤーの胸ぐらをつかんだ。怒りのこもった眼差しは最低な男を睨み据える。
「復讐は、これからだよ」
「お……俺を脅したって、謝りはしな――」
「謝罪はもういい。それが出来ないなら、今すぐこの街から出て行け」
「お前の言うことなんか、聞けるかよ。……うぐうっ!」
シモンさんは両手でメイヤーの首を絞めるようにつかんだ。
「てめえが同じ街にいると思うだけで、リベカも、俺も不愉快なんだよ。どこかで偶然見かけでもしたら、俺はその瞬間、てめえを殺しに行きたくなっちまう」
「う、くくっ……殺したきゃ、殺せよ。恋人が殺人犯なんて、あの女にお似合いだ」
メイヤーは薄ら笑いを浮かべてる。……挑発してるの?
「どうせ俺の人生はもう終わってる。気にかけて心配してくれるやつなんかどこにもいねえんだ。あとは酒あおって、体壊して死ぬだけだ。そうわかってる人生に意味なんかねえ。お前がここに来たのは最後の余興だ。死ぬなら楽しく死なせろよ」
「……下手な挑発だな」
「その挑発に手を震えさせてるやつは誰だよ。……殺すかどうか迷ってるなら、教えてやろうか? 小娘だった頃のあいつが俺にどんなことして甘えてきたか」
「うるせえよ」
「あいつは俺の言うことは何でも聞いてくれた。恥ずかしいことだろうと何だろうと、俺のために――」
「黙れ、ゲス野郎が!」
大声を上げたシモンさんは振り上げた拳をメイヤーの顔に叩き落とした。その衝撃でメイヤーの首がねじれるように傾く――駄目だ! 挑発に乗ったらシモンさん、本当に殺しかねない! ここは止めに入るべきだろうか。でもあたしなんかで止められるかどうか自信が――
「ミリアムはここにいて」
突然かけられた声に振り返って、あたしは心臓を大きく跳ねさせた。そこにいたのは、なぜかリベカさんだった。いるはずもなく、いてはいけない人を見て、あたしは頭が真っ白なまま見つめるしかなかった。そんなリベカさんは無表情で、自分が差してた傘をあたしに渡すと、静かに二人のいる家の中へ入って行ってしまった。……この状況、あたしはもう見てることしか出来そうにない。
「シモン、手を放して」
その声に振り向いたシモンさんも、あたしと同じように驚きを見せた。
「んなっ……リベカ! 何で……」
「あんたをつけてたミリアムの後を追って来たの。あの娘の尾行に気付かないなんて、鈍ったんじゃないの?」
そう言ってリベカさんは玄関にいるあたしを指で示した。それを見てシモンさんはまた驚いて目を丸くした。……そうか。あたしもリベカさんにつけられてたのか。
「……リベカ? へへっ、久しぶりじゃねえか。お前も老けたな」
胸ぐらをつかまれた状態で、メイヤーはリベカさんに目を向けた。それに気付いてシモンさんはすぐにつかむ手を離す。ばたりと床に倒れたメイヤーは、側の椅子につかまりながらゆっくり立ち上がると、再びリベカさんに不敵な笑みを向けた。
「こいつを甘やかしすぎなんじゃねえか? 恋人ならしつけぐらいしとけよ」
シモンさんが何か言おうとしたのをリベカさんは肩に触れて止める。そしてメイヤーに歩み寄ると、殴られて腫れた顔を見据えた。
「そうね。確かにしつけはなってないかもしれないけど、あんたよりは数倍まともな人よ」
「はっ、もう少しで俺を殺そうとしたやつが、まともとはな」
「何言ってんの? シモンがあんたなんか殺すはずないでしょ。そんな価値、あんたにはないんだから。ただ不愉快で、どっか行ってほしいだけよ」
リベカさんはシモンさんを見る。
「……早く帰るわよ。こんなやつと話したって時間の無駄だし」
シモンさんの腕をつかんで、リベカさんは踵を返そうとした。
「恩知らずが」
唸るようなメイヤーの声にリベカさんは振り返った。
「お前が食うのも困ってる時に、目をかけてやったのは誰だと思ってる」
「それには感謝してるわ。あんたのおかげで一時は救われた。でも私はあんたの奴隷じゃない。機嫌取ったり、気分次第で殴られたり、もうたくさんだった」
「嘘つくな! 俺の金が目的だったんだろ! それが期待出来ないとわかったら冷たくしやがって……初めから俺を騙すつもりだったんだろ!」
「あんたがずっとまともでいてくれたら、私は今もあんたと一緒にいたかもね」
「お、おい……」
困惑の顔を浮かべたシモンさんに、リベカさんはにこりと笑いかけた。
「でも、それはもうあり得ない。あんたは変わったし、私には大事な人が出来た。お金なんて、はなからどうでもいいことよ」
「善人気取ってんじゃねえ! 俺の金で助かっておいて、金はどうでもいいだあ? ふざけんじゃねえ!」
「お金に執着する思考から離れらんないあんたに、これ以上言うことなんかないわ」
「へっ、笑えるぜ。どんなに取り繕ったって、お前は金の亡者なんだよ。そいつから聞いたが、夢を壊されたんだってな。ははっ、自業自得だ! 俺のせいにして自分の愚かさから目そらしたって結局は――」
パンッと大きな音が響いて、あたしは息を呑んだ。リベカさんは怒りに満ちた表情でメイヤーを思い切り平手打ちした。
「やっぱり、話すだけ無駄だった。あんたの顔なんて一生、死んだって見たくない」
リベカさんが向きを変えてメイヤーから離れようとした時だった。
「俺を引っ叩いておいて、ただで帰れると思ってるのか!」
背を向けたリベカさんにメイヤーが手を伸ばした。危ない――と思った瞬間、横から割って入ったシモンさんがその手をつかみ、メイヤーの体を押さえ込んで素早くねじり上げた。
「ぐっ……は、放せ!」
「聞いただろ。リベカも俺も、てめえの顔は二度と見たくねえんだよ。この街から出て行け」
「どこにいようと、俺の勝手だ――うああ!」
シモンさんがねじり上げた手を引っ張ると、グキ、と鈍い音が聞こえた。
「おっと、間接外しちまったか? てめえがぎゃあぎゃあ騒ぐから手元が狂った。また騒げば、次は骨が折れちまうかもな。……何度も言わねえぞ。街から出て行け」
「………」
無言のメイヤーに、シモンさんのつかむ手に力が入る。
「ひっ、やややめろ! 出て行けばいいんだろ!」
「口だけじゃなく、ちゃんと実行しろ。明日確認に来た時、もしいれば――」
「わかってる! 今日中に出る……」
シモンさんはメイヤーを解放して見下ろす。
「もう街をうろつくんじゃねえぞ。ここにてめえの居場所はもうねえんだ」
脂汗を滲ませて肩を押さえるメイヤーをいちべつして、シモンさんはリベカさんを見た。二人はほんの数秒、お互いを見つめ合ってから、揃って家を出て来た。
「……お待たせ、ミリアム」
そう声をかけてきたリベカさんの表情は、もう普段通りの笑顔になってた。
「あ、あの、あたし……」
ここまで勝手に追って来てしまったあたしは、シモンさんを見ることが出来なかった。どうやって謝ればいいのか……。
すると、シモンさんは大きな手であたしの頭をぽんっと叩いた。
「俺に気付かれずに尾行するとは、やるじゃねえか」
「え……?」
「なかなかの仕事ぶりだ」
あたしはきょとんとするしかなかった。てっきり怒られるものと思ったのに。仕事ぶりって、あたしは迷惑なことしかしてないけど――その意味の答えを求めて、あたしはリベカさんを見た。
「ミリアムが傘を差さずに出たおかげで、私はあいつに一発食らわすことが出来た。まあ、最初はシモンに余計なことをって思ったけど、これでちょっと吹っ切れたかな」
……あたしの行動が、予想外にいい結果を生んだってこと?
「やつは街から消える。リベカ、これで進めるか?」
「進めるってどこへ?」
「いや、だから、どこってわけじゃなくて、気持ち的に……」
これにリベカさんはくすりと笑う。
「わかってる。冗談だって。……シモン、ありがとう。私の長い痛みに気付いてくれてたんだね」
「気付けなきゃ、恋人として失格だ」
「うん。でも、隠し事するのも失格だと思うけど」
リベカさんはシモンさんをじろりと見やった。……あれ? いい雰囲気だったのに。
「私にもろに関わることなのに、何で黙ってこんなことしたのよ」
「お前が心配だったんだよ。それに、言えばやめろって言われるのわかってたし」
ここはあたしも助けたほうがいいかな――
「シモンさんは、本当にリベカさんを心配してたんです。過去のことで苦しんで泣いてるのを、どうにか助けたいっていう気持ちで……だから怒らないであげてください」
リベカさんの視線が、今度はあたしに向いた。
「ふうん、それってつまり、ミリアムもこのこと、知ってて黙ってたってこと?」
はっと気付いてあたしは固まった。一緒に怒られるしかなさそうだ……。
「……いいわ。ここは今回の結果に免じて許してあげる」
あたしの安堵の吐息以上に、シモンさんは大きな息を吐いた。
「ミリアムのおかげで説教は免れたか」
「勘違いしないでよ。許したのはミリアムだけだから」
「は? 何でだよ。俺と同じように黙ってたんだぞ」
「どうせあんたが口止めしてたんでしょ。……さ、ミリアム帰ろう」
そう言ってリベカさんはあたしが持つ傘の中に身を寄せて入った。
「おい、待てって。俺だけに厳しくないか?」
「当然じゃない。あんたが考えて実行したんだから。罰として、ここから一人で濡れて帰りなさい」
「罰って……それだけでいいのか?」
「今回だけは、ね」
にこりと笑みを残したリベカさんに、シモンさんは呆れたように笑った。
「ったく、素直じゃねえな……」
あたしも同感だ。リベカさんは許さないと言いながら、本当は許してるんだ。その証拠に並んで歩く横顔は、どこか嬉しそうで幸せそうに見えた。メイヤーを引っ叩いて吹っ切れたこともあるだろう。でも何より、シモンさんが行動で見せた率直な愛が、怒るに怒れない気持ちにさせてくれたに違いない。リベカさんは大きな傷を負ったけど、それを癒せる大きな愛に出会えた。過去に区切りを付けた今、リベカさんは間違いなく前に進めたんだと思う。その先にはもう、痛みも苦しみもないはずだ。
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