第40話 ブロード&イスナー

 ジョエルの護衛を務めるブロードとイスナー。

 頼れる彼らがこの場に駆けつけてくれた。


「なんとか無事だったか!」

「申し訳ありません。周囲の結界を打ち破るのに少々手間取りまして」


 学園内に入れないふたりだが、さすがに巨大リザードマンの姿を目撃したら居ても立ってもいられなくなって入って来たらしい。


「不法侵入の罰はあとでいくらでも受けてやるが……その前にまずはこいつだ」

「そうですね」

「えっ? で、でも――あっ!?」


 バラバラにされた挙句、燃やされたことで決着はついたかに思われた――が、リザードマンはまたしても復活したのだ。

 それもこれも、すべてはヤツを呼びだしたエンバーが健在だから……あれ、待てよ。


「そうだ……エンバーを倒せばリザードマンの再生も止まるはずだ!」

「やはりそれしかなさそうですね」

「よっしゃ! ここは俺とブロードに任せておまえは時計塔へ向かえ!」

「おう!」

「気をつけてね、ハイン」

「任せておけって。ジョエルはここでおとなしくていてくれよ」


 ここで魔法使いジョエルはお役御免。

 実力者であるイスナーに任せよう。

 あとはブロードの戦闘力も合わさったらかなり頼もしい。


 ふたりが時間を稼いでくれている間に、俺は召喚獣を呼びだしたエンバーを倒すために崩れ去った時計塔を目指した。


 あの近くにヤツはいる。

 直接対決なら、まだ勝機があるはずだ。


「早いところ決着をつけないと!」


 イスナーもブロードも実力は申し分ない――が、あのリザードマンは召喚したエンバーを倒さない限り何度でも復活するだろう。向こうは何度も復活するのにこちらはひたすら消耗していくだけではやがて力尽きる……そうなる前に、なんとしてもエンバーを食い止めなくてはならない。


 崩れ落ちた時計塔の近くまでたどり着くが、そこにエンバーの姿はない。

 俺が接近しているのに気づいて逃げたのか?


「くそっ! 逃げだしたな!」

「誰が逃げたって?」


 取り逃がしたことを悔しがっていたら、背後から声がした。

 振り返ると、そこには魔法の杖を手にしたエンバーの姿が。


「随分と自信過剰だな。この僕がおまえ程度の雑魚を相手に逃げだすわけがないだろう」

「へっ、怖気づいて隠れているのかと思ったぜ」

「……調子に乗るなよ、クソ雑魚が」


 試しに煽ってみたら食いつきが凄い。

 生まれてからずっとエリート街道をひたすら進み続けてきたヤツにとって、俺のような平民に悪く言われるのは我慢ならないのだろう。


 ただ、おかげでこちらは戦いやすくなった。

 なんとしてもここでエンバーを食い止めるぞ。

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