第37話 激戦

 ジョエルを守るための戦いが始まる。

 エンバーは俺たちを消し去るのがあくまでも前座みたいな言い方をしていたので、恐らくまだ何か隠し玉があるのかもしれない。警戒しておかないとな。


「やれ! あいつらを丸飲みにしろ!」


 リザードマンに命じてこちらへ攻撃を仕掛ける。

 巨体な上に意外とすばしっこいという実に戦いづらい相手だが、ジョエルに近づけさせないようにラトアと連携して攻撃をかわしつつカウンターでダメージを与えていく。

 ――だが、


「ぐおおおおおおおおおおおおっ!!」


 ダメだ。 

 まったく効いていない。


「こちらの攻撃がまったく通じてないぞ!?」

「物理攻撃に対する耐性が強いんだろうな」


 冷静に分析をするラトアだが……このままじゃまずいぞ。

 なんとかしてヤツにダメージを与えなくては。


「ふん! 何をやろうが無駄だ! いずれ体力が尽き、動きが鈍ればそれで終わり……言っただろう? 無駄な足掻きだと!」


 俺たちが苦戦している様子を高みから見物しているエンバーは叫ぶ。勝ち鬨のつもりらしいが、その判断はいささか早計と言わざるを得ないな。


「この程度で俺たちがへばるとでも思っているのかよ」

「その通りだ。みくびられたものだな」


 ラトアもまだあきらめちゃいない。

 この状況をなんとか打破するための策を虎視眈々と狙っていた。

 大型リザードマンが出現してからかなりの時間が経過しているし、学園側に何か動きが合ってくれるのを願うが……それを頼みの綱とするにはあまりにも弱い。

 あくまでも俺とラトアのふたりでこの場を切り抜ける策を練らなくちゃならないのだ。


「しぶといな……さっさとあきらめればいいものを」


 最初に変化が訪れたのはエンバーであった。

 戦局としては向こうが圧倒的に有利なのだが、徐々に焦り始めている。俺たちがすぐに降参して泣きだすか、或いはリザードマンに食い殺されると踏んでいたようで、そうならなかったことにイラついているようだ。


 ――だが、ついにその時がやってきた。


「うわっ!?」


 敵の攻撃を回避している途中で、俺は木の根に足を取られて転倒してしまう。


「「ハイン!?」」


 ジョエルとラトアが同時に叫ぶ。

 俺はすぐに立ち上がって「平気だ」と答えるつもりだったが、気がつくとリザードマンの巨大な手に捕まってしまった。


「ぐあああっ!?」


 強い力で締めあげられ、全身の骨が悲鳴をあげる。

 このまま押し潰されると死を覚悟した――次の瞬間、突然解放されて空中に放りだされる。


「危ない!」


 なんとかラトアにキャッチされて事なきを得たが、どうしてリザードマンは急に力を弱めたのか。

 その答えは――ジョエルにあった。

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