第26話 謎の男子生徒
翌朝。
俺は昨日の夕食後すぐに使い魔のリックを通じて学園の外にいるイスナーとコンタクトを取った。
目的は――昨日、学生食堂で目撃した男子生徒の素性を確認するため。
名前すら分からないので詳細な情報こそおくれなかったが、俺にはある予感があり、それを確認するためにリックを送ったのだ。
できれば学園へ向かう前に答えを聞いておきたかったが……さすがに間に合わないか。
あきらめかけたその時、ついにリックが姿を見せる。
「はあ、やっと帰って来れたっす……使い魔づかいの荒い人っすね」
「使い魔なんだから使われてなんぼだろう?」
「それは暴言っすよ!」
「どうでもいいから早くイスナーの返事を」
「分かったっすよ。ほら、背中に巻きつけてある紙がお待ちかねの返答っす」
俺は急いで紙をリックの体が放すと、中身を確認する。
そこにはある人物の似顔絵が描かれていた。
魔法を使って描かれているらしく、めちゃくちゃそっくりだ――俺が昨日食堂で見かけた男子生徒と。
「やっぱり……こいつがジョエルの義理の兄弟だったか」
名前はエンバー・ログナス。
ジョエルよりひとつ年下か。
てことは、義理の弟って立場になる。
「エンバー様がどうかしたんすか?」
「……もし、ジョエルの命を狙っているヤツがいるとすれば、エンバーである可能性が高い」
「ま、まあ、グラチェル様との関係性を考えれば、その線もまったくないわけではないと思うっすけど……でも、さすがに学園でことを起こすとは思えないっす」
「俺もそう考えている――けど、昨日の学生で俺たちを見るあの眼差しは尋常じゃなかった」
憎悪とでも言えばいいのか。
とにかくまともそうには見えなかったな。
グラチェルの息子の存在については、学園への入学って話が出た時から一番危惧してはいたんだ。権力とのつながりが深い母親ばかりに目がいきがちだが、もっとも距離が近いのは同じ学び舎で暮らすエンバーじゃないかって。
だが、エンバー自身は優等生で通っているらしく、そんな彼が表立って騒ぎを起こすようなマネはしないんじゃないかってイスナーは分析していた。幼少期に剣術の稽古をつけたことがあるというブロードも、真面目で明るい子だってむしろ褒めるくらいだった。
しかし、ジョエルのことをよく思っていないというのもまた事実。
どのみち警戒をしておく必要はありそうだ。
新たにエンバーの情報を頭に叩き込んでから、ジョエルを迎えに行く。
リックには「念のため、外からエンバーの動きを監視してほしい」と伝えるよう頼む。どうにもヤツが怪しく見えて仕方ないんだよなぁ……とはいえ、俺だけでは少し不安がある。
「――そうだ。あいつに頼んでみるか」
ふと思いついた妙案。
この世界で俺がその性格を深く知るとある人物――ヤツに協力を依頼しよう。
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