第24話 学園生活
俺は黒猫の使い魔ことリックとともに編入するクラスへ挨拶。さすがに選ばれし者たちが集う学園というだけあり、クラスメイトたちは品行方正で温かく俺を迎え入れてくれた。
当然、このクラスにはジョエルがいて、俺は隣の席に決まった。
最初は黒猫のリックを同行させても大丈夫なのかと不安だったが、クラス内には俺と同じように使い魔を連れている者も何人かいた。どうやら魔法使い志望者らしい。
そして俺が一番驚いたのが……ラトアも同じクラスだったという点。
おまけに俺とは反対隣りの席だった。
緊張しながら席に座ると、
「奇遇だな」
ラトアはそれだけボソッと呟いた。
「あれ? ふたりって知り合いだったの?」
それを聞いたジョエルに追及され、俺は入学試験の話をした。一応、昨日の夜にも話はしておいたのだが、あの時は試験の相手がラトアとまでは伝えていなかったのだ。
ということで、それを伝えると、
「えっ? ラトアに勝ったの?」
めちゃくちゃ驚かれた。
「厳密に言うと勝ちを譲ってくれたってところかな」
「いや、そういうわけじゃない」
即座にラトアが否定する。
てっきり、あの職員の無茶ぶりに腹を立てていたとばかり思っていたのだが、どうも違ったらしい。
「おまえは強い。それに……」
「それに?」
「……いや、なんでもない。ただ、俺が合格に値すると判断したからそう伝えたまでだ」
ラトアは口数少なく答える。
そういえば、原作でもこういうキャラだったな。
「お世辞でも嬉しいよ」
「いや、ラトアはそんな器用なことできないよ。あれは紛れもなく本心だって」
「えっ? そうなのか?」
「…………」
ジョエルの言葉が真実かどうか確かめようとしたが、肝心の本人はそっぽを向いてそれ以上何も答えなかった。そうこうしているうちに授業が始まってしまい、追及はできず……けど、あのリアクションを見る限り本当っぽいな。
それにしても……俺が元王子だっていうのは誰にも言ってないんだな。
休み時間はクラスメイトたちから質問攻めにあった。
こういうのはどこの世界でもお馴染みのイベントらしいが、なぜか終始ジョエルが仕切っていた。そしてクラスメイトたちの質問に答える俺をジッと見つめてくるラトア。なんだ、この状況?
慣れない事態に困惑していると、突然ラトアが静かに手を挙げる。
普段こういうことはしないタイプらしく、いきなりの行動にクラスメイトたちからざわめきが起こった。
一方、ジョエルだけはいつもの調子を維持しつつ、ラトアに尋ねる。
「ラトアもハインに質問があるの?」
「ああ……戦い方はどこで教わった?」
「えっ? た、戦い方?」
それはあの試験でのことを指しているのか。
ラトアは俺の戦いぶりを気にかけているようだが……俺からすると、あんなのは到底戦いと呼べる代物じゃなかった。ただラトアからの猛攻を必死に防いでいるだけで、こちらは何もできず。まさに防戦一方って感じだったからな。
一体あれの何がそこまで気になったか分からないが、とりあえず答えておこう。隠しておかなくちゃいけないような要素なんてひとつもないからな。
「独学だ。強いて言うなら常に実戦をしなくちゃいけない環境にあったから、自然と鍛えられたのかもな」
「なるほど……だとしたら、あの時に感じた気迫はジョエル・ログナスへの想いそのものというわけか」
「……は?」
いきなり何を言いだすんだ、この主人公は。
「正直に言えば、おまえと試験で戦った際、俺はすぐに決着がつくと思っていた。だが、おまえは次第に俺のパワーやスピードに順応していった。ずっと不思議だったんだ……どうしてあんな戦い方ができるのかって」
「いや、それは――」
「今日おまえがジョエル・ログナスの護衛騎士としてこのクラスにやってきたと聞き、すべて納得いった。おまえは主人のため、急激に力をつけていったのだ、と」
「…………」
その理屈は無理がありそうな気がしてならないが、なぜかクラスメイトたちから絶賛され、拍手まで起きている。ジョエルはジョエルで顔を真っ赤にしながら照れ笑いを浮かべているし……どうなってんだよ、これは。
その後、クラスメイトたちから「末永くお幸せに」というエール(?)をもらったところで休み時間は終了。
次の授業はまったく内容が頭に入ってこなかったよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます