第23話 使い魔
いよいよ学園に通う日がやってきた。
護衛騎士という立場ではあるが、一応授業には出席するし試験も受ける――が、成績自体はどうでもいいんだ。ジョエルをしっかり守る方を最優先に考えないと。
意外だったのは主人公ラトアの存在。
俺が国を追われる原因……とは言っても、もともとあの頃の俺はおかしかったから、ラトアと出会わなくても追放されるのは時間の問題だったかもしれないが。
ともかく、ラトアのおかげで入学できたようなものだが……あいつは俺の正体に気がついていた。かつて王位継承権を狙った兄を貶めようと画策していた、卑劣極まりないハイン第三王子であると。
それでも、まるで合格を後押しするかのように実戦形式の試験では危険を申し出て、おまけに納得がいかずに抗議した学園職員を一喝。それに屈服する形で俺の入学は認められたのだった。
改めてお礼を言いたいし、なんならもっと話をしてみたいと思った。
俺がずっと好きで読み続けてきた作品の主人公だからな。
こっちの世界に来てから続きは読めていなかったというのもある。学園編はWEB版だとほとんど最新話に近いところだから、あの後で俺の知らない動きがあったかもしれないし。
ワクワクしながら準備をしていると、俺は昨日イスナーの帰り際の言葉を思い出す。
『こちらへの連絡手段用に使い魔を送ります。明日の朝には到着すると思いますので、彼と協力してジョエル様をサポートしてください』
そうた。
使い魔が来るんだった。
一体どんな外見をしているんだろう……使い魔というくらいだから、モンスター系統だろうか。
いろいろと考えを巡らせていたら、部屋の窓を叩くような音がした。
「おっ? 来たかな?」
ついに使い魔の登場だと、俺は窓を開ける。
入ってきたのは小さな黒猫だった。
「えっ? 猫?」
「おいらに何か文句でもあるっすか?」
「そういうわけじゃ――って、喋ったぁ!?」
驚きのあまり叫んでしまう。
使い魔ってヤツを直接見たことはないのだが、まさか人間の言葉を話すとは想像もしていなかった。そのせいで思わず本気の絶叫が口から飛びだしたのだ。
「うるさい男っすねぇ。猫が喋ったくらいで取り乱して……こんな肝っ玉の小さいヤツが本当にジョエル様を守れるんすか?」
「な、何っ?」
口調からするとオスの猫みたいだ。
そういえば、イスナーは使い魔を「彼」と呼んでいたっけ。
「おまえにいちいち心配されなくても俺がジョエルを守る」
「威勢はいいっすけど、実力がともなっていなくちゃねぇ」
「そのうち証明してやるさ」
「まっ、楽しみにしてるっす。それより、そろそろ出なくていいんすか? もうじき始業の鐘が鳴る時間すよ?」
「えっ? ――うおっ!?」
使い魔の猫にかまっていたら遅刻スレスレの時間になってしまった。
これは初日から大変そうだ……。
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