第22話 入学準備

 何者かの策略によって仕掛けられた入学試験。

 学園内でジョエルの近くに俺がいてもらっては困るという輩が用意した罠なのだろうが、そこをなんとか突破して無事入学の許可を得た。


 これについては俺だけの力ではなく、原作主人公であるラトアの後押しが大きい。

 たぶん、試験の結果だけなら落ちていただろうからな。

 あいつが職員を一喝してくれたおかげだよ。

 今度改めて礼をしないとな。


 ただ、ラトアのひと言で入学が正式に認められたということは、ヤツの学園内での地位は相当なものになる。

 学園に在籍しているということはもう五章に入っているわけだから……すでにかなりの功績をあげているはず。正直、学園に入る理由なんてなさそうだが、それはきっとこれから加わる新ヒロインのための下準備ってところか。

 あっちはこれからラブコメが始まるだろうから、こちらに構っている暇なんてなさそうだな。

 まあ、俺は俺のやるべきことをきっちりやり遂げるまでだ。



 入学手続きを済ませると、その日のうちに寮へと案内される。

 寮は貴族と平民で分かれており、そこからさらに男女別となるため、全部で四つ存在している。俺はジョエルの護衛騎士という立場になるため、貴族側の部屋を利用することに。


「へぇ、結構広いんだな」

「そりゃ一応貴族側の寮だからな」

「制服一式はここへ置いておきますよ」


 ブロードとイスナーのふたりと一緒に部屋に荷物を運び込んでいく。

 しばらくすると、


「やあ、無事に入学できたみたいだね」


 授業を終えたジョエルがやってきた。

 こちら側の部屋に入るのは初めてなようで、興味深げにいろいろ見て回っている。

 そんなに珍しい造りじゃないはずだが、なぜかジョエルはとても楽しそう――というか、浮かれているようだった。


「随分と嬉しそうだけど、学園で何かあったのか?」

「うーん……今まさにそれが起きている最中かな」

「? どういうことだ?」

「僕ずっと夢だったんだよ――ハインと一緒に学園に通うの」


 満面の笑みを浮かべながらそう言われ、俺は返事に困る。

 こういう場合は……なんて答えるのが正解なんだ?

 いろんなセリフが脳内に浮かんでは消えを繰り返す中、俺は小細工を止め、本能のままに思いついた言葉を口にする。


「俺も嬉しいよ、ジョエル」

「ハイン……」


 どうやら、ジョエルは喜んでくれたようだ。

 ――が、


「おーい、俺たちのことを忘れていませんかー?」

「まあ、仲が良いのは素晴らしいことですが」

「っ!?」


 しまった。

 この場には俺たち以外にブロードとイスナーがいたんだった。それをすっかり忘れてふたりだけの空気に浸って……これは後々盛大にいじられそうだ。



 思わぬトラブルがあったものの、俺の学園入りは無事に成功。

 明日からは学園の生徒として授業に参加しつつ、ジョエルの護衛を務める。

 ……何事もないままでは終わらないだろう。

 必ず何かを仕掛けてくるはずだ。


 それを防ぎつつ、なんとか黒幕の尻尾を掴まないとな。

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