第17話 いざ、学園へ

 ジョエルの屋敷で夜を過ごし、迎えた次の日。

 いよいよ俺は学園へと向かう。


 ――が、さすがに今日からすぐに生徒となれるわけではなく、まずは諸々の手続きをクリアしなければならないらしい。ただ、俺はその辺の事情に疎いため、今回は学園の卒業生でもあるイスナーとブロードのふたりに同行してもらう予定だ。


「順調にいけば、明日から一緒に登校できるはずです」

「制服は事前に何着かサイズ違いを用意しておいたから、いろいろ試着してみてくれ」

「分かった」

「頑張ってね、ハイン」

「おう」


 授業があるジョエルは俺たちよりも先に馬車で学園へと移動。

 一方、こちらは徒歩。

 同じ王都内にあるとはいえ、かなり距離はあるんだけどなぁ。


「まあ、これも最初のうちだけですよ」

「そうそう。足腰の鍛錬だと思えよ」

「別に構わないんだけど、授業が終わったらいつも屋敷まで戻ってくるのか?」

「基本的には寮での生活になりますね。ただ、学園は五日通うと翌日が休校となるので、その時に実家へ戻られる生徒が多いようです」

「ふーん」


 前世の頃に通った小中高と同じくらいか。

 感覚的に近いのはありがたいな。


 その後、イスナーとブロードによる王都案内を楽しみつつ、学園へと到着。

 仰々しいデザインの門から中へ入ると、そこは若者だらけでまさに学び舎って感じだった。

 ちなみに、今日は今までの服ではなく、イスナーが見繕ってくれたコーディネートで挑んでいる。さすがにこれまでの格好では門前払いだったろうからな。


 俺たちは入学の手続きをするため、中央校舎へと案内された。

本来ならば厳しい入学試験を突破しなくてはいけないのだが、俺みたいに護衛目的で入学する際は護衛対象者の許可があれば大丈夫らしい。ただ、これも貴族や富裕層に限定されていたりと、貧富の差が垣間見える制度だった。


 中央校舎に入り、受付にいる学園職員の女性にイスナーが事情を説明すると、事務室のような場所へと通された。そこで対応してくれた中年の男性職員。彼がこの部署の最高責任者らしい。そんな彼に必要書類を提出して終わり――のはずだったが、


「それでは、続いて適性試験を行います」

「へっ?」


 思わず間の抜けた声が漏れてしまった。

 し、試験?

 そんなのやるなんて聞いてないぞ!?

 ただ、これはイスナーやブロードにとっても予想外だったらしい。


「そのような規定はなかったはずですが?」

「ああ、初めて聞いたぜ」

「今年度から実施されるようになったんですよ。ささ、こちらへ」


 訳が分からないまま、俺は中年の職員に腕を引っ張られる形で別室へ。

 おいおい……何がどうなっているんだ?

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