第12話 五年分の告白

 ついにジョエルとの再会を果たしたが……どうも俺が想像していたよりずっと複雑な環境で五年間を過ごしてきたようだ。

 ただ、生活水準はかなり高かったようで健康そのもの。

 そういえば、昔から体は頑丈だったっけ。


 ともかく、健康で何よりなのだが……気になっているのはどうして今になって俺を呼び寄せたのか、だ。

 その理由について、いよいよジョエルの口から直接語られる。


「僕の護衛騎士に加わってほしいんだ」


 ジョエルからの要求は実にシンプルなものであり、俺の予想通りであった。すでにイスナーとブロードという揺るぎない忠誠心を持ったふたりがいるにもかかわらず新しい護衛騎士を捜している――それはつまり、ジョエルの身に危機が迫っていることを指していた。


「分かった。昔の約束を果たせるチャンスだからな」

「昔の約束……」


 俺がその言葉を口にした途端、ジョエルの顔つきが変わる。さっきまでのにこやかな表情から一転して驚いたようにこちらを見つめている。


「ハイン……約束を覚えてくれていたの?」

「一瞬たりとも忘れたことなんてないよ。――だから、ずっと捜していたんだ」

「えっ? 僕をずっと捜してって……本当に?」

「その通りですよ、ジョエル様」

「こいつが通っていたギルドの冒険者たちが証言していました。世界中を転々とし、ジョエル様を捜していたって」


 イスナーとジョエルがそう付け加えてくれたことで、さらに信憑性が増した。

 これにより、ジョエルは信じてくれたようだ。


「そこまで思ってくれていたなんて……嬉しいよ」

「おまえを守り切れなかったことをずっと後悔していたからな。――もし、再会できたら今度こそ最後まで守るって決めていたし」


 だから俺は強くなろうと努力した。

 鍛錬を重ね、攻略が難しいと言われる難関ダンジョンにも挑戦し、そこで功績を残していった。おかげでそれなりに名前は知られるようになり、イスナーとブロードは俺を発見できたのだ。


「あの時、おまえが助けてくれなかったら俺の人生は終わっていたんだ。――いや、厳密に言えば、一度終わってまた始まった……だから、二度目の人生はおまえのために使うと決めていたんだよ」

「ありがとう、ハイン」


 俺の決意を聞いたジョエルはニッコリと微笑んでくれた。


「で、俺はまず何をやればいい?」

「それなんだけど……実はふたりじゃなくて君にしかやれないことをお願いしたいんだ。――イスナー」

「はっ」


 ジョエルはイスナーに何かを持ってくるよう命じておいたらしく、彼は部屋を出るとすぐにまた戻ってきた。その手には見慣れない服が。


「あの……それは?」

「王立魔剣学園の制服だよ」

「王立学園の……制服?」


 どういうことだと疑問をぶつける前に、ジョエルが先に話しだす。


「君には僕と一緒に王立学園に通ってもらいたいんだ」

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