第13話 ハイン、王立学園に通う

 イスナーとブロードの話を聞く限り、俺の役目は彼らとともにジョエルを護衛するんだとばかり思っていた。

 ……まあ、ある意味では護衛でまちがってはいなかったんだけど、問題はその場所だ。


「が、学園……?」


 王立学園。

 名前くらいは耳にしたことがある。基本的には貴族や名のある商人とか、とにかく金に余裕のある富裕層の子どもたちが通っている学び舎。それ以外にも才能を有した若者たちを特待生という形で入学させているらしい。

 

 学ぶ内容は剣術や魔法などがメインで、座学もやるという。

 卒業後の進路も約束されており、ここに入学すれば退学処分を食らわらない限り一生仕事には困らないとさえ言われている。


 貴族になったジョエルがその学園に通っているのは至極当然の流れと言える。

 ――だが、俺みたいなのがそもそも入れるものなのか?

 一応は元王族という立場で似たような教育機関に身を置いていたけど……今じゃそれも遠い過去の話だし。


「俺なんかが学園に入れるのか?」

「貴族であれば、同年齢の若者を従者として学園内に招き入れることが可能です。実際、身の回りの世話や護衛に年の近い者を側近として連れている貴族が圧倒的に多いんですよ」

「つまり、俺やイスナーでは学園の中までついていけない。そこで、学生になっても問題ない同い年のおまえにやってもらおうって話になったのさ」

「…………」


 なんか、いろいろと聞きたいことがあるんだけど……まあ、順を追って尋ねていくか。


「他に適任者はいなかったのか?」

「僕はいろいろと要求できる立場じゃないからね」


 冗談っぽく言っているが……迂闊だった。

 ジョエルがここへ来た経緯を思い出してみれば、学園であいつを世話する従者なんて用意できるはずもない。むしろイスナーとブロードのふたりはどういう理由でジョエルのもとにいるのか気になる。


 それはひとまず置いておくとして、今は俺の学園生活についてだ。


「俺に学園生活が送れるとは思えないが……」

「習うより慣れろって言うだろ? 何事もまずは飛び込んでみることが大事だって」


 そう簡単な話じゃないと思うけどなぁ。


「ブロードが言うほど軽く考えるのはちょっと危ういですが、あまり重く考えすぎるのもそれはそれで控えた方がいいかなと」

「む、難しいな……」

「とにかく一度学園に来てみなよ」


 悩む俺を尻目に、ジョエルはちょっと浮かれ気味。

 学園、か。

 まさかここで再び通うことになるなんて夢にも思っていなかったな。

 とはいえ、ジョエルがそれを望んでいるというならやるしかない。

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