第11話 再会

 ついにたどり着いたログナス家の屋敷。

 だが、詳しく聞くとここは別宅のようで、本宅はまた違う場所にあるらしい。おまけにそっちの方がさらにデカいというのだから驚きだ。

 ともかく、これでハッキリしたのはジョエルが家族と離れて暮らしているという点。

 家族とはいえ、あいつはいわば妾の子……まあ、父親的にはそのメイドさんが本命らしいので愛情の注ぎ具合は違うんだろうけど。イスナーの話では本妻やその子どもたちとうまくいってなかったらしいし。


 さまざまな事情が複雑に絡み合う中、俺はとうとう屋敷の中へと足を踏み入れる。

 高い天井に数え切れないほどの部屋。

 掃除の行き届いた床には赤いカーペットが敷かれており、あちらこちらに素人目でも高価と分かる調度品の数々が並んでいた。

 

 追いだされる前は王子としてこれに匹敵する部屋で暮らしていたが、もうすっかり最近の安宿屋の感覚が染みついているので別世界に感じるよ。


「どうよ? 大層なお屋敷だろう?」

「あ、ああ、そうだな。あまりの豪華さに開いた口がふさがらなくなりそうだ」

「ジョエル様はすでに応接室でお待ちのようです。行きましょう」


 メイドからそう伝えられたイスナーの案内で、ジョエルが待つという応接室へ。

 扉を開けて中へ入ると、そこには綺麗な服に身を包んだひとりの少年が――


「ジョエル!」


 思わず叫んでいた。

 後ろ姿だけで分かる。

 俺がずっと捜し続けていた恩人であり、大切な相棒。

 そのジョエルと、俺はついに再会を果たした。


 振り返り、正面からその顔を拝む。

 ――やっぱりな。

 俺の想像した通りだ。 

 昔のジョエルの顔がそのまま大人になっている。


「ハイン……ハイン!」


 ジョエルも俺がかつての相棒ハインだとひと目で分かったらしく、満面の笑みを浮かべたまま物凄い勢いで抱き着いてきた。


「会いたかったよ、ハイン!」

「それはこっちのセリフだ。勝手にいなくなりやがって」


 しばらく互いに抱き合って、喜びを分かち合っていた――が、この場には俺を連れてきたイスナーとブロードのふたりがいると思い出し、急に恥ずかしくなってきて「ジョエル、そろそろ」と告げてから離れる。


 コホン、とわざとらしい咳払いをしてから、改めて再会の挨拶をした。


「本当に久しぶりだな、ジョエル」

「うん。ここまで来てくれたことに感謝するよ、ハイン」


 今度は軽く握手をし、それからいよいよ本題へと移る。


「急に驚いたでしょ?」

「まあな――っと、今のおまえは貴族だからもう少し丁寧な口調で話した方がいいか?」

「必要ないよ。僕と君の仲じゃないか」


 それを聞いてひと安心。 

 正直、ジョエルに敬語で接するのはなんだか調子が狂うからな。


「さて、それじゃあ早速――君が一番気になっているであろう内容について話そうかな」


 ジョエルはそう言うと、俺にソファへ座るよう促す。

 なら、語ってもらおうか……俺と別れてから一体何があったのかを。






※明日からしばらくは12時と18時の2話投稿予定

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