第4話 見知らぬ騎士と魔法使い

 騎士団所属と思われる大柄の男は、まるで品定めでもするかのごとく俺をジロジロを見回している。


「銀髪に気の強そうな目……あの方の情報にピタリと合うな」

「ですね。まあ、それだけの特徴ですと該当する者は少なくはないですが。現にこれまで五十八人もいましたからね」

「おまけにそのすべてがハズレときている。もうとっくに死んでるんじゃないのか?」

「だとしても、信憑性のある証言がない限りあの方は信じませんよ」

「まあ、そうだろうけどよぉ」

「とりあえず、名前を聞いてみましょう」


 俺を目の前にしてふたりの男たちが何やら話し合っている。

 内容から察するに、どうも彼らはある人物の依頼で人捜しをしているらしく、その捜している人の特徴に俺が合致するようだ。

 しかし、メガネの男が言ったように、「銀髪で気の強そうな目」という曖昧な情報では無理がありそうだけど。

 ただ、名前は把握しているようなので大柄な男の方が見下ろしながら尋ねてきた。


「おい、少年、名前は?」

「ハ、ハインだけど?」

「「っ!?」」


 名乗った途端、ふたりの顔色が一瞬にして変化した。


「おまえ……いつから冒険者に?」

「えっ? い、いつからって、五年前からだけど?」

「その時にパートナーの子がいませんでしたか?」


 今度はメガネの男が怖い目つきで聞いてきた。

 もしかして……ジョエルの関係者なのか?

 淡い期待を抱きつつ、俺はその名を口にした。


「ジョエルって友だちがいたけど……」

「「なっ!?」」


 男たちは顔を見合わせる。

 そんな反応を見せられてしまうと不安になるな……でも、もしジョエルという名前に心当たりがあるとするなら、俺にとっても大きな手掛かりになるかもしれない。


「あんたたちはジョエルを知っているのか?」

「知っているも何も、俺たちにおまえを捜すよう命じたのはそのジョエル様だよ」

「えっ?」


 ジョエルが俺を捜している?

 ……というか、この大男は今なんて言った?

ジョエル「様」?

 なんで「様」なんてつけて呼ぶんだ?

 あいつは俺と同じ――貧民街で生まれ育った平民だ。それがまるで貴族みたいな扱いじゃないか。

もしかして、ゼノスが売り渡した相手っていうのは貴族だった?

 いや、だとしてもジョエルに対してそこまで丁寧な物腰というのは合点がいかない。


 一体、今ジョエルはどういう立場になっているんだ?

 気になることが多すぎるのとあまりにも突然の事態に軽くパニック状態となった俺は、気がつくと俺は大男の胸ぐらを掴んで迫っていた。


「教えてくれ! ジョエルは今どこで何をしているんだ! どうして俺を捜しているんだ!」

「お、落ち着けって」

「事情を一から語るには少々時間がかかりますので、場所を移しましょう」

「……分かった」

 

 ふたりになだめられた俺は事情とやらを聞くため、場所移動に賛成する。

 それから軽く自己紹介もした。


「俺はブロード。ソルヴァニア王国騎士団に所属する騎士だ」

「私はイスナーと言います。私は同じソルヴァニア王国の魔法兵団の所属です」

「じゃあ、次は――」

「おまえさんの名前はもうジョエル様から何度も聞いているんで十分だよ」

「ですね」


 男たち――いや、ブロードとイスナーは苦笑いを浮かべながら言う。

 よほどしつこく聞かされていたみたいだけど……一体何がどうなっているんだ?

 冷静になった今もうまく整理できていない。


 俺と別れてから、ジョエルに何があったのか。

 それを包み隠さずすべて語ってもらうとしよう。





※次は18時に投稿予定!

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