第5話 駆け落ちは破産の前触れ。
その日から私はウハウハ状態となった。霜川君とセミラミスで会計を済ませる。少額の買い物であれば釣りがたんまりと手に入る。そして元手の一万円と五千円は勝手に私の元へと帰って来る。私は霜川君とセミラミスには感謝しきれない恩を感じているのだ。
私は今日も、スマホで特売情報を漁っている。先般購入した魚沼産コシヒカリを全て消費してしまい、もう少し高級な米がないか漁っていたところ、山形県産のつや姫というのを見つけた。価格は通常の倍であるが、どれだけ美味いか試してみようと思う。
出かけようとしたところ、霜川君とセミラミスの姿が見えない。二人は何処へ……彼らがいないと買い物ができないではないか。
ふとテーブルの上を見ると書き置きがあった。
『マスタートリニティ。短い間でしたがお世話になりました。僕はセミラミスさんと駆け落ちします。さようなら』
『世話になったな。我は今後、アッシリアの王国を再建すべく中東へ向かう。貴様が稼いだ金は軍資金として全て受領した。さらばじゃ』
咄嗟に財布と手提げ金庫の中身を確認した。残されていたのは数百円の小銭のみ。十数万円あったはずの紙幣は全て消えていた。
破産……という言葉が脳裏をよぎる。
もはやこれまでか。
私は玄関脇に置いてあったロープを掴んだ。
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