第3話 彼女の素体は自分で見つけて来い。
翌日。二日酔いで頭が痛いとグダグダな霜川に気合を入れろとばかりに、モンスターエナジーをチョビチョビとかけてやる。霜川はそれを美味そうに飲んだ。
「これ、美味しいです。凄く元気が出ます」
「今時のエナジーはモンスターなのだよ」
「はい」
「さて買い物に出かけるぞ。今日からは仲間を連れて戻って来い」
「仲間ですか?」
「そうだ。仲間だ。君が連れて来た仲間の中から飛び切りの美女を選別し命を吹き込むのだ」
「わかりました!」
二日酔いなど吹き飛ばす勢いの返事である。よほど女に憧れているのだろう。
さて、私は再び近所のスーパーへと乗り込み食料品を買い込む。今日は魚沼産コシヒカリ10キロという高級米を買ってしまった。もちろんお高いのだが、私には霜川君が付いている。彼は必ず私の元に戻ってくるのだ。
そして三日が経過した。
私は水たまりの中で溺れかけている霜川君を発見し救助した。
「大丈夫かね?」
「大丈夫です、お友達を連れて来ました」
よく見ると、もう一枚お札が溺れていた。私はそれも拾い上げ部屋へと戻った。彼を風呂に入れ、消毒用エタノールを少しだけ与える。
「はああああ。気持ちいいです」
「それはよかった」
「ところでマスター。僕が連れ帰ったあの人は……彼女にできますか?」
「アレか?」
「アレって言い方は無いと思いますけど」
「確かにそうだが。アレは百円券……板垣退助だぞ。超レアな紙幣なんだが、どこで知り合ったんだ」
「レジの中です! もう密着してべったりくっ付いて……えへへ」
霜川よ。君は髭面のオッサンと密着して嬉しかったのか。
「女性を見つけてこいと言っただろう」
「あの方は女性ではなかったのですか?」
「もういい。女性と言えば五千円の樋口一葉に決まっているだろう。さあ、もう一度買い物に行くぞ」
私はまだ酔っぱらっている霜川君を連れて近所のスーパーへと出かけた。今回は国産のサーロインステーキを購入する。普段の私であればとても手が出ない霜降り肉だが、今は必ず帰って来る霜川君がいる。下味用の塩コショウとステーキソース(和風)も忘れない。そして霜川君とレジで別れる際に念押しをしておいた。五千円札を連れてこいと。
その後、霜川君は聖徳太子と新渡戸稲造の五千円札を連れて来た。伊藤博文や夏目漱石の千円札、岩倉具視の五百円札を連れ帰った事もある。いやいや、五千円の樋口一葉を連れ帰るのがそんなに困難なのか? と疑問に思わなくもないが、それは+αの副収入となっているので私にとって非常に都合が良いのは言うまでもなかった。
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