自転車の昼下がり

春の陽気の中を自転車で駆け抜ける。

下り坂では程よい涼しさの風が私の腕を撫で、白いシャツを揺らす。

少し走っていると、色落ちしたシャツのような八重桜を見かけた。なんとも寂しい雰囲気を持っているが、古さを感じさせる渋みに心が踊り、そっと目に焼き付ける。

昼までここまで暖かければ、夜はきっと寒いだろう。

私の肌を凍てつかせ、ぶるぶると震える指先でハンドルを掴み、帰路につく姿を想像する。

だが、そんな面も春なのだと思い、春爛漫を噛み締める。

あ、遅刻しそう…

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