純文学の昼下がり
少し紙臭い匂いが部屋を漂い、鼻を通って私の喉元で燻り咳き込む。
咳をしても睨まれなくなったなと思いながら、古き良き館を回る。かの有名な文豪達の遺した原稿や、白黒写真の中笑わない大先輩方を見つめる。どんな文豪でも、自分か或いは編集者によって赤ペンが堂々と入れられるのだと知ると、試行錯誤の姿がホログラムの様に目の前に浮かぶ。
彼らの遺した足跡を保管するこの館をフィルムに収められないのは、苦虫を噛み潰すほど惜しい。故に目に焼き付け後に描き起こすしかないが、私の些か頼りない記憶力では…ちょっと…。
暖かな日差しを受けるテラスを覗く。テラスで踊る文豪、テラスで星空を見上げながら酒を酌み交わす文豪、階段からテラスへ上がりリビングに駆け込む女性を想像する文豪…全ては私の勝手な妄想だが、この全てが該当しないなんてことないだろう。
ノンフィクションもフィクションも自由に想像させ、我々一端の物書きにも要素を与える館は、彼らに何かしらの影響を与えたのではなかろうか。
椅子に座り文字を綴る。
腹が減っていく気配を感じながらも、もう少し足を気張らせようか。
そして、部屋の隅にでも立って、彼等の言葉に耳を傾けよう。
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