陽気な昼下がり

ベランダに出ると、妙にポカポカとした空気に包まれる。

普段は寒い家の中も、暖房機器が要らぬ暖かさだ。

大きく息を吸うと、肺の中がポカポカとする。先ほど食べたあったか素麺で腹も温まり、体全体が春のぬるま湯に使っているような気がした。

どこからか花の香りが漂いそうで、流れてくる空気を鼻で吸う。無機質な匂い、木の匂い、太陽の匂い…そしてクッキーの焼ける匂いがする。

下の階から私を呼ぶ声が聞こえる。

クッキーに続いてハーブティーの香りが私の鼻を掠める。

小さく腹の虫が鳴る。先ほど昼食を食べたばかりだというのに、なんと卑しい腹だろうか。…だが、おやつは別腹なのだ。

焼きたてのあつあつ感を噛み締めんと、早足に階段を駆け降りる。

私の好きな、ココアクッキーの匂いに心を躍らせながら。

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