第15話 復活のS

 それから体調が回復したソーレは以前よりだいぶ活発になって



「リヒトが好きなハンバーグ作ったよ!」


「凄く美味しいよ!ソーレ」


「でしょ~……まずは胃袋から掴まないとね!」



 特に料理に力を入れるようになっていった



 クエストでも


「リヒト!左!」


「うおっ、ヤべッ!」


 俺の眼前に魔物が迫る


「ファイアーボール!」


「助かったよソーレありがとう」


「戦闘が終わるたびに気を抜くその癖、さっさと直してよね」



 ものすごく頼りになるようになった



 他にも――


「今日は暑くなるから塩飴を持ち歩いて」


「ありがとう」


「あと、服がはみ出てる!」


 なんかもう、ほぼ親みたいだ




 でも、そんな頼りになるソーレもやっぱりまだ子供っぽい一面はあるようで……



「リヒト、起きてる?」


 夜、寝室で横になっているとソーレが扉をたたいた


「うん」


「ちょっといいかな、」


 返事をすると何故か枕を持っているソーレが部屋に入ってくる


「何?」


「……夜が怖いの、だから……一緒に寝てほしいなって」



 もうすっかり心も体も元気になったかと思ったら


 日中が安定している反面逆に夜になってその揺れ戻しが来ていたのか


 そういう事なら俺に断る理由はない



「いいよ、ソーレの部屋からベットを持ってこよう」


「いや!運ぶのって大変だと思うし……それじゃあ……あんまり、リヒトと」



 最後のほうがよく聞き取れなかったが


 ソーレの顔が少し赤くなった


 まあ、


「ベットの一つくらいすぐに移動できるよ」


「同じベットはダメ?」


 ソーレは更に顔を赤くする


「ダメっていうか……狭いよ」


 どうして二つ持ってこれるのに一つのベットで無理やり寝ようとしたがるんだ?


 意味が分からない



「リヒトって……鈍くない?夜が怖いって言ったのは噓。私、流石にそこまで子供じゃないよ」


 急にソーレが冷静になった


 やっぱり情緒不安定なのか?


 本当は夜が怖いから一緒に寝たいんじゃなくて


 理由は別にあって


 その意図が読み取れない俺は鈍い……


 つまり


「ソーレは俺と一緒に寝たいだけなのか!」


「……正解、……詰めて」


 ソーレが再び頬を染めてベットに入ってきた


 それならそうと最初から一緒に寝たいって言えばよかったのに


「めんどくさいな」


「何か言った?」


 おお、笑っているのにソーレの顔が怖い


「いや、なんでも」


「そう……おやすみ」


「おやすみ」



 ソーレはすぐに寝息を立てて寝始めた


 逆に俺は隣で無防備に寝るソーレにドキドキして中々眠れなかった



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