第13話 遭遇①
詩穂さんがレベルアップした。
これで詩穂さんもLV3になった。
そして、スキルは火魔術LV2を選択した。
これがどうなったかというと‥‥
威力は低そうだが炎を飛ばせることに成功した。
戦闘に使えるかは要検証だが後方支援として考えればまずまずかな?
今日の目的地は昨日見つけた廃墟の東側。
ここからなら東の竹藪の先だ。
「お弁当も持ったし行こっか」
「よし、行こう!」
天に向かってまっすぐ伸びる竹の清々しさを感じながら竹林を進むと、小さな小川が流れていた。
軽く跨げるほどの小さな渓流にそって歩いて行くと何かの気配を川上に感じる。
警戒しながら進むと小さな人影‥‥ゴブリンと遭遇した。
ゴブリンは短めの錆びた槍を構え襲ってきた。
いくら槍を持っていようとゴブリンは動きが読みやすい。
これは魔法を試すいいチャンスだった。
盾でゴブリンの槍を受け、詩穂さんがすかさす火魔術LV2を放った。
炎が勢い良く飛ぶ姿はさしずめ炎の矢といったところか。
その炎の矢がゴブリンの胸に直撃し反動で倒れるものの、一撃では消滅させるほどの威力はないようだ。
だが、ゴブリンは虫の息だった。
そのゴブリンを止めの炎が襲い粒子になって消えると、その後には一振りの槍がドロップした。
ゴブリンの持っていた槍よりは長いが槍としては短い。
いわゆるショートスピアといわれる槍で、鉄製の穂先に棒を付けただけのシンプルな作りで全長は約1.5mほどの短い槍である。
狭い迷宮で使うことを考えればこれぐらいでちょうどいいかもしれない。
この槍は詩穂さんに使ってもらうことにした。
火魔術と組み合わせることで後衛からでも攻撃できる利点は大きい。
さらに奥へと進むと迷宮の壁が見えてきた。
「壁だね」
「壁ね。このエリアを四角形だと仮定し、私たちの扉があった壁を横軸と考えるとあの壁は縦軸ということになるわね」
「その仮定でいくとやっぱり結構広いね」
「ええ。ここまで約2時間、歩きにくい森の中だと考慮しても広いわね」
まじか~ 壁を伝っていけば1周することも可能ではあるが何時間かかることやら‥‥だが神殿の手掛かりが一切ない状況ではどうしようもない。
「とりあえず、壁を目指しましょう」
「OK」
壁沿いにさらに奥へと進むと少し開けた所に扉を発見した。
神殿へ続く扉かもしれない。森の中でようやく見つけた手掛かりに歩み寄ろうとした刹那、僕の視界が暗転した。
「いたたたたた‥‥」
一瞬の出来事だった。僕は深い地面の中で倒れていた。
「涼真君大丈夫?」
上を見上げると、そこには心配そうな詩穂さんの顔があった。
これは落とし穴? 深さ的には3m以上はありそうな深い縦穴にどうやら僕は落ちたようだ。
幸いなことに落ちた際に打った腰以外は痛いところがない。
もし悪質な罠が穴に仕掛けられていたら命が危なかったかもしれない。
まさかこんな罠が仕掛けられているとは思いもしなかった。
扉を見つけたことで注意がそちらに向かい、足元が疎かになっていたのは事実であり迂闊だった。不幸中の幸いだったのは落ちたのが僕だということ。
詩穂さんが落ちなくて良かった。
普通なら一度落ちたら抜け出せれない縦穴も、身体強化を使ってなんとか脱出することができた。
もしやと思い周囲を調べると同じような罠が複数仕掛けられているのがわかった。
注意深く足元を見ていれば、不自然に並べられた木の枝と落ち葉でカモフラージュされ落とし穴だとすぐに気づくレベルのチープな罠。
それに僕はまんまと引っ掛かってしまったのだ。ああ恥ずかしい。
それなのに詩穂さんは笑わずに本気に心配してくれるのだ。
ああ、詩穂さんマジ天使です。
ともあれ新しい扉だ。
「あれ? この扉あかない!」
扉に罠が仕掛けられているかもしれないと思い慎重に扉を開けようとしたが、扉は開きそうもない。
これはあれだ。現状では開けれないやつだ。
「どうする? なにか条件があるかもしれないし、もう少し調べてみよう」
今までの扉とは装飾が少し違う。
叩いたり押しても引いてもピクリともしない扉。
―――そのとき。
ガチャっと扉が開き、サルが現れた。
「誰だお前?」
ええええっ!! サルがしゃべった!
「びっくりした。まさかこんな所で人に会えるとは思わなくて。私は
人? あっ、よく見たら人だ。特徴的なアーチ状の眉毛にM字型の前髪の生え際、鼻のが長く濃い顎鬚。サルそっくりな人間だ。
顔が特徴的すぎて気がつかなかったがこの制服‥‥農高生か‥‥
現れたサルもといサル顔の男に詩穂さんは冷静に自己紹介した。
「三郷に泰阜か。お前たち二人だけか?」
「えっ? そうだけど他に誰かいるの?」
「すまない。ちょっと前に襲われたので慎重になっていた。俺は古橋、
仲間? 仲間もいるのか‥‥それに気になるワードがあった。
ちょっと前に襲われた? モンスターに襲われたのか? あいつのレベルはそんなに低いのか? それともモンスターがやたら強かったのか? それであんな罠を仕掛けたのか? あの深さの罠をいくつも掘ったのか‥‥まじ? 重機もなくあんな縦穴掘れるものなのか?
古橋君が去った扉は開けられたままだが、不思議なことに透明の壁でもあるのか扉の先に進むことができなかった。
「泰阜だって?」
耳障りの良い声が聞こえてきた。
「「あっ!」」
軽やかな足音とともに現れたのは僕も知る人物だった。
「泰阜! お前かよ」
「篠木さん」
そこに現れたのはクラスメイトである篠木さん。
まるでギャルのように制服を着崩した篠木さんの姿は実に刺激的だ。
少し茶色の混じったミディアムヘア、少しつり目がちな目に長いまつ毛、スクールカーストの上位者でクラスの中心的人物で女王様のように振る舞っている女子だ。
底辺の僕とは接点もなく、しゃべったことは数回しかない。
その彼女が僕の名前を憶えているのは意外だった。
「知り合い?」
その後ろから声をかけてきたのは、目つきの悪い男子生徒だった。
「ああ、こいつはあーしのクラスメイトで泰阜。そっちの女子は知らんけど」
「私は
最初に名乗ったのは詩穂さんだった。
「あーしは
「のクラスメイトの
「俺もいちおう自己紹介。古橋和憲 農高の3年」
「俺は・・
「3人もこのゲームみたいな世界に?」
「ああ、目が覚めたらこの世界にいた。お前たちは二人だけか?」
「そうだけど。他にも誰かこの世界にいるの?」
「さっき襲われたって言ったろ。工業の
久能と江連‥‥名前は聞いたことがある。半グレ集団とも繋がりがあると言われているヤバい奴らの名がそれだった。
「俺たちは奴らに襲われ魔石を奪われた。奴らにこの世界はどう映っているのか知らんが協調性はないと思った方がいい」
「あんたらはどうなの? どこまで知ってる? ミッションは? スキルは?」
「ミッションは神殿を探せってところまで。そっちは?」
「あーしたちも同じよ。神殿ってのがどこなのかわかんないし・・・マジさいあくー。なんであーしがこんな目にあわなきゃいけないのよ」
「それで泰阜君。君たちのユニークスキルは?」
「はっ? ユニークスキル? そんなの持ってないよ。僕の持っているスキルは身体強化と剣術、水魔術、気配察知と精神強化の5つだ」
「えっ!? 何それ? そんなスキルいっぱいあるの?」
んんん? 3人が僕のスキル構成に驚いている。
そんなおかしなスキルか? それともユニークスキルってなに?
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