第3話 迷宮③
ところでスキルってどう使うんだろう?
試しに身体強化と念じるとわずかだが体が軽くなった気がする。
これがスキル? どれくらい強くなって持続時間はあるのかどうか検証が必要だが強くなったと感じることができたのは確かである。
新たな扉もないし、またさっきゴブリンと戦った通路に行ってみることにした。
モンスターだしリポップしているかもしれない。
通路を進むとやはり魔物らしき足音が聞こえる。
しかも今度はさっきと違い複数の足音だ。
ゴブリンかな? ゴブリン2体だといいな‥‥
暗闇から聞こえるこの嫌な声はゴブリンの鳴き声だ。
案の定、姿を現したのはゴブリン2体だった。
今度はゴブリンから飛びかかってきた。
体躯は小さいが意外に素早くジャンプ力もある。
だが僕は冷静にゴブリンを躱し胴体を両断した。
あと一体。
もう一体も秒殺して戦闘が終わった。
身体強化のおかげかゴブリンが2体出ても問題なく倒せた。
ゴブリン数体なら囲まれでもしない限りやられることは少ないだろう。
目的もはたしたし女神像のある部屋まで戻ろう。
石を拾い部屋まで戻り、スマホを女神像の左手にセットすると再び電子音が部屋に鳴り響きレベルアップした。
レベルも2に上がりスキルポイントも2ポイント手に入った。
今度はどのスキルを手に入れよう。
身体強化をもう一段階上げるには2ポイント必要みたいだった。
身体強化にするべきか剣術か気配察知か、良くわからないのが精神強化だった。
あと打撃術と弓術も選択肢に追加されていた。
うう~ん。もうこれは直感で剣術と精神強化にした。
スキルを選んだ瞬間、剣の使い方から構えなど初歩的な知識が頭に思い浮かび、もう一つ頭に思い浮かぶ不思議な力があるがやっぱり良くわからない。
これが剣術スキルの恩恵かな? 確かに強くなった気がする。
精神強化は‥‥ひょっとしてやらかした? ハズレスキルなの?
まあ最初だし様子見かな? 今後役に立つかもだし。
次のミッションは、食材を手に入れて料理しようだった。
‥‥‥‥いきなり難易度が上がった。
普通の高校生の僕は自慢ではないが家庭科の授業や野外教室以外で料理などしたことがない。マジか‥‥ どうしよう‥‥‥
ゴゴゴゴゴ 壁が動きそこに現れたのは新たな扉だった。
扉を開けるとそこは土間だった。
簡易的だが
‥‥‥‥おいおい! 薪で火を起こす竈なんて余計に難易度高いわ!
いったい、いつの時代設定だよ! 家電ぐらい用意しとけよ。
はあはあ‥‥誰もいないところで愚痴ってもしょうがない。
とりあえず、土間の先にある扉を開けてみることにした。
「わおっ!」
そこには幻想的な森が広がっており、狭く陰湿な暗い迷宮とは思えない開放的で明るい空間が広がっていた。
例えるなら温室、扉を開けると植物園の温室のような空間。側面に壁はあるがそれ以外は木が生い茂っている森が続いている不思議な空間だった。
‥‥もう深く考えることはよそう。
んでどれが食材なの?
辺りに生えている草木を見てもさっぱりわからん。
キノコは怖いし、果物の木でもないかなぁ‥‥
あまり奥に進むと迷子になりかねないため扉の周辺を探してみることにした。
竹藪はあるけど残念ながら竹の子はなさそうだった。
ガサガサガサ 奥に進むと茂みが揺れている。
ゴブリン? いや違う‥‥あれはウサギ? 巨大な兎だ。
兎といえば兎肉。立派なジビエ食材である。
問題はその巨大なサイズ。中型犬ほどの兎とか怖いわ‼
うわあぁぁ‥‥あの眼‥‥全然僕の知っている兎さんじゃない。
ヒクヒクと動く鼻もめっちゃ怖い‥‥飛びかかってきたらどうしよう。
とりあえず様子見るべきか? 迷宮の兎さんって‥‥某有名ゲームの兎みたいな首切り兎じゃないよね?
身体強化のスキルを使い様子を見ながらじりじりと回り込もうとするも、巨大兎も僕を警戒していて埒が明かない。どうしたもんか‥‥
均衡を破ったのは巨大兎だった。
猪のように突然突進してきたのだ。その動きは巨体のくせに素早く、身を躱そうとしたものの腹にもろに体当たりをくらってしまった。
「痛っ! やったなこの兎野郎!」
突進してきた兎の腹に剣を突き刺すと兎は苦しそうによろけた。
ゴブリンなら一撃なのに、この兎強いぞ!
兎がまた体当たりをするべく突進してきた。
だが、同じ攻撃をくらうほど馬鹿ではない。
僕は突進してくる兎の脳天に向け剣を突き刺した。
兎の突進力と身体強化が合わさり、強烈な一撃が放たれたおかげで兎は絶滅した。
「兎ヤバい! 死ぬかと思ったし‥‥」
巨大兎が粒子となって消えたあとには兎肉と黒い石がドロップした。
「なんでやねん!」とひとりでツッコミたくなるのは、その兎肉が毛皮を剥いだ状態の生肉だったからだ。
いや、楽で良いんだけどね‥‥なんか生肉って生々しいな。当たり前だけど。
さてと、兎の生肉も手に入ったことだし帰るとするか。体当たりをくらった腹も痛いしって痣になってるじゃん。もう最悪な気分だな。
兎肉を持って帰ってきたけど‥‥これどうやって調理するの?
とりあえず焼けばいいのかな? うん、そうしよう。
簡単そうだし、というよりそれ以外できないが正しい。
‥‥‥竈はあれどマッチもライターもない状態で火をどうやって起こせばいいの?
TVで原始的だが、棒を両手でクルクル回転させて火種を作るきりもみ式火起こしを見たことがある。
まさかアレをやれというのか? マジで? 冗談でしょ?
ないわ~ マジでないわ~ アレそう簡単にできるもんじゃないよ。
良くて数十分、最悪だと数時間かけても火が起こせない可能性もある。
喉も乾いたし泉の水でも飲むかと思い、土間から女神像のある部屋まで移動したときだった。
「きゃああぁぁぁぁぁ! 誰か助けて!」
遠くから聞こえてきたのは女性の悲鳴だ。こんな迷宮に誰かいるのか?
声はゴブリンのいた回廊の方角から聞こえてきたと思う。
もし人ならば助けないといけない。
女性ならなおさらだ。可愛い女の子が良いな。
可愛い女の子だったら助けることによって仲良くできるかもしれない。
ひょっとしたらそれ以上も‥‥
モンスターの罠かも知れないけど、僕は女性を助けるべく悲鳴が聞こえる扉を開け走り出した。
通路の先に僕とは別の灯りが見えた。
あれはゴブリンと女の子?
どう見てもゴブリンに襲われている女の子だよな。
黒髪の女の子は泣き叫びながら逃げようとしているが、ゴブリンに足を掴まれ動きを封じられている。そしてもう一体のゴブリンが女の子を組み敷こうとしていた。
女の子のピンチだ。このままではゴブリンの餌食になってしまう。
ゴブリンは女の子を襲うことに夢中になって僕に気が付いていない。
奇襲攻撃を仕掛けるべくゴブリンに斬りかかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます