第166話 新しい使役系スキルを選択する 前編
「波鳥羽くん、寝ぐせと目の下の隈がすごい事になってるよ」
昼休みにみんなで集まった際に、波鳥羽くんの様子が酷い事になっていたので、ついそんな指摘をしてしまった。
彼は元々ボサボサの髪を長めに伸ばしており、後ろで一つにちょこんと結んでいる髪型をしているのだけど、今日はその髪をいつもより更にあちこちに跳ねさせており、大層に独創的な髪型になってしまっている。あと、隈がくっきりしていて、すごく眠そうな顔をしているし。
「あー。つい寝る間を惜しんで、使役系スキルをどれにするか考えちゃってさ……」
波鳥羽くんは髪をガシガシ掻きながら、決まり悪げに申告してくる。
どうやら新しい使役スキルの登場で、どれを取得するか再考中のようだ。彼だけじゃなく、シーカーをやっている多くの人は、同じように悩んでいるんじゃないだろうか。
俺も同じように、どの使役系スキルを取得するか悩んでいる最中だ。
これまでは、残っている使役スキルであるネクロマンサーと幻獣の二つが自分には合わないと思って、取得を避けてきた。だけど、新しいスキルの中には取得したいと思わせられる物があったのだ。
使役系スキルの取得が最大で四種類までという上限がはっきりしたから、既に二つを取得している俺にとって、残る枠は二つしかない。どれを取得してどれを諦めるのかの選択が非常に難しい。
「その気持ちはわかるけど、ちゃんと寝ないと体を壊しちゃうよ」
「そうだな、気を付けるわ」
……そんな話をしているうちにみんなが揃った。
この高校には食堂があるし、各部活用のクラブハウスもそれなりの数と広さがあるので、そちらで食事をする生徒も多くて、昼休みに教室に残る生徒は半分以下だ。そのおかげもあって、空いている机や椅子を借りて、友達みんなで悠々と食事をする事ができる。
各自でお弁当やサンドイッチなんかを机の上に広げて食事を始める。
「それで、みんなは新しい使役はどれにするか、もう決まった?」
ここ最近の話題はやっぱり、使役スキルについてが多い。みんなの関心がそれに集中してるから、どうしてもそうなってしまうのだ。
「俺は、人形とロボットにしようかって考え中だな。そんでその二つがある程度育ったら、精霊や妖精を増やしていく感じにしようかなって思ってるとこ」
波鳥羽くんは夜通しで散々悩んだ甲斐あってか、もう使役の種類をほぼ決定したようだ。
「俺は元々の人形に加えて、守護騎士とロボットを取る予定だ。残り一つの枠は、自衛隊に入ってから必要に応じて取得する為に空けておくつもりだ」
早渡海くんは将来の目標を見据えて、自衛隊向きと思われる使役を自主的に選んだようだ。そして更に、枠を一つ残しておく選択をしたようだ。
もしかしたらいずれまた、新しい種類の使役が突然追加されるって可能性もある。それを考えると、無理に既存の使役で枠を埋めずに枠を空けておくっていうのも一つの選択肢なのだろう。
「僕は、今すぐは特にいらないかな。ネクロマンサースキルはちゃんと役に立ってくれてるから、当面は戦力的に問題がなさそうだし。もっと先に進んで、戦力が厳しくなるようなら、またその時に何を足すか、改めて考えればいいと思ってるよ。……別に急いで決める必要はないしね」
雪乃崎くんはそう言って軽く肩を竦めた。彼は今後必要になった時に、その都度戦力を足していく方式にしたようだ。
彼は元々、使役を使うよりも自分自身の力をできるだけ高めていきたいって性分だ。それもあって、今のところは使役を急いで増やす必要はなしと判断したらしい。
まあ確かに、新しい使役が追加されたからって、それを急いで取得する必要性は特にないんだよな。
実際その通りなのだけど、冷静にそんな判断ができる人は案外少ないと思う。つい勢いで、新しい物に飛びついてしまうの人の方が多いんじゃないかな。
「俺はまだ、エルンやシシリーと相談してる最中だね。一応、エルンがロボットと精霊と妖精で、シシリーが精霊と妖精と人形使いで、俺が守護騎士と人形使いにする予定で話が進んでるけど、本決定じゃないから変更するかも? あと俺は、いつかダンジョンに移住したら、幻獣や星獣を増やすのもいいなって思ってるんだっ」
更科くんが笑顔で報告してくれる。
彼は現在、一緒に組んでいるパーティメンバーと話し合って、それぞれの使役の種類を決めている最中のようだ。彼は将来、ダンジョンに移住するのを目標にしているから、その時に幻獣や星獣を増やすつもりで、枠を二つ空けておくつもりらしい。
日本の都会で暮らしながら大型の動物を飼うのは中々難しい。だけどダンジョンに移住してからなら、充分に広い敷地を用意できそうだ。特に、開拓途中の渡辺さんの集落に移住するなら、広い土地を自分で開拓して住居にするのは歓迎されそうだ。
(……みんなそれぞれ、ある程度は指針が決まったんだ)
最後に残った俺は、未だに決まっていない自分の方針に、ちょっとだけ溜息をつきたくなった。
「実は俺はまだ、ロボットか守護騎士か妖精か、その三つのうちからどれを二つ選ぶべきなのか、迷ってる最中なんだ」
俺一人だけ、何も決まってないのが情けないけど、素直に申告し、ついでに自分一人ではいつまで経っても決められないかもしれないと、みんなに悩みを打ち明けて相談してみた。
新しい使役の情報が出揃ってから散々悩んできたのだけど、どうしても決められないのだ。
ただ星獣に関しては、俺には世話が出来ないので範囲外として、最初から外している。幻獣もそれが理由で選ばなかったんだし、契約できる数が幻獣よりも少なくなるとはいっても、動物の世話は俺には無理だ。
そんな訳で、残る三つの使役スキルからどれを選ぶかが問題なのだ。残りの枠は二つしかないのに、残る三つがどれも魅力的に思えて、それでずっと迷って悩んでいる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます