第163話 魔物素材ダンジョン2の3層、暴れスイギュウ

 3、水属性・暴れスイギュウ(魔物素材ドロップ:毛皮、角、肉各部位、牛乳、チーズ、ヨーグルト)

 フィールド:岩場フィールド

 推奨スキルもしくは魔法:水耐性

 ドロップ:コアクリスタル、下級ポーション(傷跡消滅薬、経口タイプ)、ココナッツオイル(瓶入り)、銅の塊(大)、スクロール




「次のモンスターはスイギュウだ。三体から六体の群れで行動してるそうだ。身体強化と体力増強スキルを持っていて、突撃の威力が凄いらしい。あと、水属性の魔法のアクアボールを使ってくる。それとフィールドは岩場フィールドだ。これも初めてのフィールドになるな」


 ネットでの情報を人形達に共有する。前回から牛続きだけど、ニュウギュウとは大分違うタイプだという。

 大盾などの装備の補修も済ませたし、準備は万端だ。

「それじゃあ行こうか」


 ゲートから出ると、そこは岩場だった。傾斜と凸凹のある岩ばかりで構成されていて、たまに短い草が岩の割れ目から生えている程度。ほぼ緑がない状態だ。

 これじゃ、食べ物がないんじゃないかと辺りを見回してみるけど、やっぱり木も生えてないし、山菜らしきものも見当たらない。採取できる植物がまったくなかった。

 なのでこのフィールドでは採取はなしなのかと思っていたが、少し歩いたら岩に混じって、半透明の岩塩らしきものが地面に無造作に落ちていた。どうやらこのフィールドでは岩塩を拾えるようだ。

 そして黒檀が調べたところ、落とし穴、落石、石の弓、崩落の罠があった。

 試しに人に当たらないよう気を付けて石の弓の罠を起動してみたところ、かなりの速さと威力で矢が飛んでいった。崩落の罠も起動してみたところ、足場の一部がボロボロと崩れたし、落石の罠は人が簡単に潰れそうな程の大岩が、勢いよく斜面を転がっていった。

「やっぱり、罠も段々凶悪になってくな……」

 この先は更に、罠発見と罠解除の技能が重要になっていくようだ。




 気配察知で数が少ない群れを選んで、黒檀に誘導してきてもらう。

(う、デカいな。ニュウギュウより三割以上は大きく見える)

 黒檀の後ろを駆けてくるスイギュウの大きさに、少しだけ怯んでしまう。

 それに角がすごく長くて大きかった。Cの形に歪曲している。あの角も凶器と言っていいだろう。

 一部の毛もかなり長かった。体色は黒だ。

 骨格そのものも、他の牛とは違う感じがする。より筋肉質で強そうだ。

(そういえば、このスイギュウからのドロップアイテムの皮で、俺の装備は作られているんだっけ)

 俺の鎧に使われている革はかなり丈夫だ。つまりこのスイギュウもかなり皮が硬くて頑丈な可能性がある。

 ドロップアイテムは出現モンスターと一致するとは限らないのだが、魔物素材ダンジョンのドロップアイテムの素材の多くは、その魔物の素材がドロップするのだ。

「三体来るぞっ」


 警戒しつつ待ち構えて迎撃したところ、大盾を構えた人形一人では、スイギュウの突撃を止めきれなかった。足元が岩で、地面に杭を深く刺せなかったのも原因かもしれない。とにかく、突進を受け止めた人形達は、大盾ごと一メートル近くは後退させられた。

 ただそれでも、吹き飛ばされはしなかった。それに突撃の対象から外れた人形達が、素早く攻撃に転じている。俺もクロスボウを射たが、その刺さりが浅かった。やはり、皮や筋肉がニュウギュウよりずっと硬いようだ。

「炎珠召喚! ファイヤージャベリン!」

 クロスボウではろくなダメージを与えられないので、俺は攻撃方法を召喚魔法での援護に切り替えた。人形達の武器は、黒檀以外は槍か斧だ。それなりに攻撃力がある武器なので、ダメージもそこそこ与えられている。

 残念ながら黒檀の投げナイフでは、牽制程度にしかなっていないようだ。それでも、スイギュウの放つアクアボールと相殺させたりと、要所要所で役に立っている。


「ブオオ!!」

 激しく頭を振って暴れるスイギュウ。もしその角に体を引っ掛かけられれば、とんでもないダメージになりそうだ。

「身体強化と体力増強スキルを持ってるだけあって、暴れようが他のウシとは違うな!」

 体がぶつかる時の音も迫力が違うし、純粋な力だけなら、これまでのどのモンスターよりも強そうだ。

 それでも、こちらの方が人数が多いのもあって、徐々にダメージを与えられている。脚を重点的に狙って機動力を削いでいったおかげもあって、こちらの方が有利に立てている。

「よし、このまま押し込むぞ!」

 巨体と素早さを併せ持つスイギュウも、周りを囲まれ、斧や槍で幾度も攻撃されれば流石に耐えきれなかったようだ。姿が溶けるように消えていく。



「やったな、みんな怪我はないか?」

 俺は上がった息を整えて、人形達に声を掛ける。みんなは頷いて大丈夫だとアピールしてから、ドロップアイテムを拾い始めた。

 今回は群れの最小数である三体が相手であっても、かなり怖い相手だった。

 もしその突撃を一撃でも受けてしまえば、重症か、下手したら致命傷を負いかねない。

 後衛の立ち位置から見ていても恐ろしく感じたのだから、前衛であればもっと恐ろしかったみ違いない。

 これはニュウギュウの時とは違って、すぐに次へ抜けられそうな感じがしない。しばらくはここでレベル上げをしつつ、戦いを続ける事になりそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る