第161話 魔物素材ダンジョン1の3層、雷角ニュウギュウ

 マイナースクロール祭りも無事に終わったので、今日からはまたダンジョン攻略だ。イノシシはもう問題ないので、次の1の3層へと進む事にする。





 3、雷属性・雷角ニュウギュウ(魔物素材ドロップ:毛皮、角、肉各種、牛乳、チーズ、ヨーグルト)

 フィールド:草原フィールド

 推奨スキルもしくは魔法:雷耐性

 ドロップ:コアクリスタル、下級ポーション(体力回復薬、経口タイプ)、白砂糖(袋入り)、銅の塊(中)、スクロール




 ドロップアイテムを見ると、ニュウギュウが相手だからなのか、乳製品が落ちるようだ。

 牛乳やチーズ、ヨーグルトなら、加工しなくてもそのまま消費できるから、俺が食べる分は売らずに取っておいても良さそうだ。あと、白砂糖も少し取っておこうかな。


「次の層のモンスターは角に雷を纏うニュウギュウだ。二体から四体くらいの群れで行動してるそうだ。基本は9層のウシと同じ対処でいいと思う。角の雷も、俺以外はあまり効かないだろうしな。あとはフィールドの罠に気を付けつつ、実際に戦ってみながら対応していこう」

 いつのもように、人形達にネットで調べた注意点を伝える。

 雷を纏う角は普通なら要注意なのだけど、人形達は雷に強い。そして俺は後衛だ。俺に魔法が直撃する心配が少ない分だけ、他のモンスターよりも戦いやすいんじゃないかと思う。……でもまあ、油断はしないようにしないとな。


 ゲートを潜ると一面に草原が広がっていた。早速黒檀が付近の罠の有無を確かめ始める。

 ところどころに生えている木にはプラムが生っていた。プラムは別に嫌いじゃないけどそんなに好きでもないので、気が向いたら少し収穫するくらいかな。

 下級に入って、食材に効果が付与されるようになった影響で、家族へのお土産を収穫できなくなったから、自分の好みを元にそう考える。


 黒檀が見つけた罠は、穴の中に杭が設置してある落とし穴や、草で輪っかを作った罠の他に、草に紛れて地面に小さいボタンが設置してあって、踏むと何かあるらしき罠があった。

 このボタンの罠は初見となる。

「これ、どんな罠なのか、一度踏んで確かめてみるべきかな?」

 踏まないように気を付けるのは勿論そうなんだけど、これは他の罠と違って撤去できないんだよな。戦闘中にうっかり踏んでしまった時の為に、先にどういう罠なのか確かめておくべきか。それとも罠周辺の草を刈って、ボタンを踏まないように注意すべきか。

「……どういう罠なのかは気になるけど。まあ、自分から危険に飛び込む必要もないか」

 少し迷ったけど、結局は周囲の草を刈って見晴らしを良くして近くに印をつけて、ボタンを踏まないように気を付ける事にした。

 ボタンを踏んだ途端、大量のモンスターが一斉に襲ってくるとか、ボタンを踏んだ者だけがどこかに飛ばされる転移罠とか、考えれば考える程可能性がありすぎて、安易に試す気にはなれなくなったのだ。

「罠は極力作動させない方向で行くとして。まずはこの層のモンスターと戦ってみて、手応えを試そうか」

 ボタンの罠が近くにない場所を探して、他の罠を潰して戦闘しやすい領域を作る。

 その後、黒檀にモンスターを誘導してきてもらう事にする。


「ここのモンスターはイノシシよりも大柄だろうから、武器は引き続き長柄の物で。槍か斧な。それと、緑青と黒檀以外は大盾を構えて準備してくれ」

 インベントリから大盾を出して人形達に渡していく。新入りの緑青はまだ一人で突進を受け止められないだろうから、身軽な遊撃として配置する。

 他の人形は大丈夫だろうか。イノシシの突進は止められたけど、9層のウシの時は二人がかりで止めていたんだよな。

 もし今回、一人で突進を止めるのが難しいようなら二人に戻すのも検討するけど、みんなレベルも上がっているのだし、きっと一人で止められると信じよう。


 気配察知に、黒檀が遠方から誘導してきたモンスターの気配が引っかかった。敵は二体のようだ。

「二体来るぞ!」

 みんなに声を掛けて、俺もクロスボウを構えつつも、いざという時の為に精霊召喚にも備える。

 黒檀が戻ってくる。その後を追って二体のモンスターが現れた。ウシ型で、品種はホルスタインだと思う。白黒のあの独特の柄だし。

 大きさは初心者ダンジョンの9層のウシと変わらないくらいか。ただ、あちらとは違ってこちらは群れで行動しているので、そこは注意が必要だ。

 そして前情報通り、頭の角にはバチバチと黄色い雷光を纏っている。

「グモオオ!」

 重低音の唸り声と共に、ニュウギュウが突進してくる。

 ガツン、と衝撃音と共に人形の構えた大盾にニュウギュウが突撃する。同時に、ニュウギュウの角に纏っていた雷が、バチバチと派手な音を立てて大盾の一部を焦がした。

「っ! ヒツジが纏っていた雷より威力が強いな」

 あれじゃあ盾を構えていたのが人間だった場合は、盾を通して雷が伝ってしまい、痺れて動けなくなりそうだ。

 幸い人形達は雷に強いので、すぐに大盾の裏から飛び出して攻撃を仕掛けている。

(一人でも突進を止められているし、角の雷でも動きが止まらなかったし、問題なさそうだ。やっぱり人形は雷属性の敵と相性がいいな)


 このくらいの大型のモンスターの相手ならもう慣れている。みんな槍や斧で果敢に攻め立て、着実に相手に傷を負わせている。

 俺もクロスボウで矢を射って、ニュウギュウへの攻撃に加わった。

 ……そして、さほど時を置かずに二体のニュウギュウをきっちりと倒し切った。俺は勿論、人形達にも破損一つない。完勝だ。

(精霊を召喚する必要もなかったな)

 今回は敵の数が少なかったのもあってか、随分あっさりと倒せた。苦戦はしないだろうと予想していたけど、実際はそれ以上だ。

 ドロップアイテムを拾ってから、次の誘導を黒檀に頼む。

 そうして戦闘を続けた結果、三体の群れも余裕で狩れた。四体の群れも同じように、かなりの余裕を持って狩る事が出来た。

(……ニュウギュウは二体から四体の群れなんだよな。初日で最大数を余裕で狩れるなら、ここで留まる意味もないか。さっさと階段を探して次に進んだ方がいいな)

 俺はそう決断し、早々に戦闘から探索へと意識を切り替える事にした。

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