第157話 新入り強化とイノシシ仕上げ

「石躁、石の檻!」

 召喚された石躁が、オオウサギを一体、檻の中に閉じ込める。

「緑青、攻撃!」

 俺の指示に、緑青が檻の隙間から剣を突き立てる。オオウサギも緑青よりはレベルが高いからか、一撃では深くまで刺さらない。剣を引き抜いて、また何度も突き立てて、ようやくオオウサギが死んで消滅した。

 他のオオウサギは緑青以外の人形達の手によって、早々に始末されている。

(止めだけ緑青に回したいけど、そううまく行かないんだよな)

 オオウサギは曲がりなりにも下級のモンスターだから、手加減して戦うにも限度がある。かといって、オオウサギより弱くイヌよりも強い相手で、緑青のレベリングに丁度いい相手はあまりいない。ヒツジは雷撃があるし、ウシは大きすぎる。

 人形のパワーレベリングって、みんなどうやってるんだろうか。今度ネットでちょっと調べてみるか。他に人形の育て方について訊けそうな知り合いといえば、母や早渡海くんなんだけど、母はレベルが違い過ぎて参考にし辛いし、早渡海くんは下級に入ったばかりで、まだ6体目の人形は作成できていないらしい。

 早渡海くんは武道の習い事を二つもしていて中々ダンジョン攻略の時間が取れないせいか、いつのまにか俺の方が、攻略層を追い抜いていた。

(まあ、もうちょっと育てば緑青も最前線に連れていけそうだし、ここでこのまま頑張るか)




 緑青と氷毬のパワーレベリング作業の為、今日はオオウサギとの戦闘だ。その結果、午後の途中で氷毬のレベルが18になったので、ダンジョン街のスクロール屋までスクロールを買い足しに行った。

 氷毬には、氷属性の魔法を四つ買い足した。



「アイスカッター」(氷の刃を飛ばす攻撃魔法)

「アイスジャベリン」(氷の投げ槍を飛ばす攻撃魔法)

「アイスウォール」(氷の壁を作る防御魔法)

「アイスエンチャント」(氷属性を装備に付与する。武器に付与すると敵に氷ダメージを与える。防具に付与すると熱気から身を守る)




 また、緑青もレベル24になったので、「俯瞰」「魔力感知」「斬撃耐性」「風耐性」「精神力増強」「格闘術」「棍術」「槍術」「棒術」のスキルを買い足す。

 これで足りないのは、瞬発力強化と専用スキルだけになったな。俺の人形使いのレベルも1上がったので、緑青の強化を素早さ+1に振り分けた。

 その日はそのままオオウサギとの戦闘を続けて、念の為に更に次の日にもう一日、オオウサギを相手に戦った。

 緑青がレベル27、氷毬がレベル23になったところでその日は終了。その次の日からはイノシシに戻ってきた。

 緑青はまだイノシシ相手にまともに戦えるレベルじゃないけど、突進の直撃さえ食らわなければ、他の仲間と一緒に戦える程度までは育ったんじゃないかな。

 とりあえず緑青には大盾は持たせず、槍だけを装備させる。

 緑青の基本武器は青藍と同じ片手剣と盾にする予定だが、今回はイノシシが相手なので槍装備だ。これで無事にレベリングができればいいけど。

 木製の練習用も含めて、剣、盾、槍、メイスは人数分買ってある。使い分ける武器が多くなる分だけ習熟は大変になったものの、戦況に応じて適した武器に持ち替えられるのはやっぱり便利だな。



 そうしてイノシシ相手に戦ってみた結果、緑青も一応、それなりには戦えた。

 一人だけレベルが低い上にまだ硬質化スキルがないのもあって破損しやすい点はあるものの、最前線でレベル上げができれば、それだけで上等だ。

 そんな訳でイノシシ相手に数日続けて戦ってみた。その結果、7体の群れが相手でも安定して倒せるようになった。これならそろそろ次に進んでも良さそうだ。


 とはいえ、明日はもうマイナースクロール祭りの本番なので、明日は戦闘できないんだけどな。

 諸事情で祭りの準備は手伝えなかったとはいえ、ガイエンさんに差し入れくらいはしたいし、一体どんなスクロールがあるのかも気になるし、祭りには俺も行ってみるつもりだ。

 掘り出し物があるかもしれないと、ちょっとワクワクしている。


(マイナーって言われてるけど、使役専用以外では、一体どんなスクロールがマイナー扱いされてるのか、具体的には知らないもんな。せっかくだからゆっくり見て回ろう)

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